国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-06-12 07:41

総選挙後の連立パターンをシュミレーションする

杉浦正章  政治評論家
 総選挙後の連立政権のパターンはどうなるか。6月11日に社民党が次期衆院選後に民主党との連立政権樹立に向けた協議に入る方針を決めたことにより、民主党が勝てば「民主・社民・国民新」の3党連立の流れは現実のものとなるだろう。しかし「自民・公明」連立が維持できるのか、大連立の可能性はどうなのか、「民主・公明」の連立はないのかなど、選挙結果で動くから展開は複雑だ。これに政党分裂による政界再編もからみ得る。なんでもありの状況を展望してみる。まず、選挙のカギを握る投票率について、首相・麻生太郎が11日「高いほうがいい」と述べたが、これは間違いだ。自民党にとっては選挙対策委員長・古賀誠の「投票率はあまり高くないほうがいい」が本音だ。

 今回の選挙の勝敗は、やはり浮動票が左右する。まず投票率は高ければ高いほど自民、民主両党に得票が集中し、両党決戦の様相が強く浮き出る。固定票に頼る公明、共産は沈むのが流れだ。しかしその場合でも、浮動票の流れは、自民党には向かわないだろう。浮動票の浮動票たるゆえんは、現状否定にあるからだ。かって首相・森喜朗が「無党派層は寝てしまってくれればいい」と発言して、物議をかもしたが、その通りだ。そこで480議席の過半数241議席を各政党がいかに達成するかだが、問題が生じないのが民主党単独での過半数達成である。この場合は参院での議席不足を社民党が補わなければならないから「民主・社民・国民新」のパターンが成立して、衆参のねじれが解消する。民主党圧勝の場合は、安全保障をめぐる食い違いがある社民党が閣外協力となる可能性もないわけではない。自民・民主がいずれも過半数を取れずに、比較第一党が民主党の場合も、やはり「民主・社民・国民新」のパターンとなるだろう。

 自民党が比較第一党の場合は、「自民・公明」連立が維持されよう。比較第一党を取れなくても、自民党が210議席取って、公明党が現有議席の31を確保すれば、過半数は維持できる。次に、中曽根康弘が11日表明した「自民党と民主党のいずれが勝つにしても、議席数は接近した結果になり、大連立の可能性が出てくる」との読みは、まず的外れになるだろう。自民、民主両党とも他党との連立で政権が樹立できれば、その方向に向かうのであって、わざわざ大連立を組む必要がない。それに今回の選挙は政権交代を賭けた選挙であり、大連立は有権者の意思に反する。

 中曽根は「公明党がどちらにつくのかという問題も出てくる」と述べ、公明党が民主党との連立に加わることへの懸念を示した。しかしこれもまずない。公明嫌いの小沢一郎がネックだ。代表・大田昭宏の選挙区に自分が立つ可能性をいまだに残していて、大田を激怒させている。「民主・公明」のパターンも的外れだろう。大勲位・中曽根は近ごろ衰え始めたのであろうか。「自民・公明・共産」の“国共合作”は話として面白いが、まず無理だろう。こう見てくると大きな流れは「民主・社民・国民新」か「自民・公明」かの選択となってくるだろう。しかし自民党が大敗した場合には、同党が分裂して政界再編に向かう可能性もありうる。民主党から加藤紘一らへの働きかけがなお続いているといわれ、選挙後は百鬼夜行となるだろう。
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム