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2009-05-19 07:59

世論の政権交代志向が復活した 

杉浦正章  政治評論家
 19日で全国紙全ての世論調査が出そろったが、結果は衝撃的な内容となっている。あれだけ「小沢院政」と叩かれたにもかかわらず、政党支持では民主党がリードし、なって欲しい首相候補では代表・鳩山由起夫が首相・麻生太郎に圧勝の形だ。いかに国民の政権交代志向が強いかを物語るものだろう。小沢一郎の公設秘書逮捕以来の民主党批判の潮流は、小沢辞任と代表選挙で明らかにリセットされた形だ。これが総選挙に影響しないことはない。民主党は自民党に対して互角かそれ以上の戦いが展開できる流れだ。もともと世論調査に関する限り「小沢問題」発生以前は、総選挙での民主党圧勝を予想し得る傾向があった。鳩山が小沢との間だけの秘密にしていた1月の民主党独自の選挙情勢調査でも、270から80議席もあった。それが第一秘書逮捕で小沢批判のうねりが生じ、最新の読売の調査では「続投納得できない」が71%に達していた。

これが小沢辞任と代表選挙を経ると、政党支持率では民主党が朝日、毎日、読売、産経、日経の全てでリード。なって欲しい首相候補も、朝日が鳩山40%,麻生37%,読売が鳩山42%,麻生32%、毎日が鳩山34%、麻生21%、日経が鳩山29%、麻生16%、産経が鳩山37.7%、麻生33.1%と、麻生対小沢と比較して逆転したのである。毎日に至っては、総選挙で勝って欲しい政党は民主56%に対して自民は29%と民主が倍だ。この数字が意味するものは何だろうか。自民党幹事長の細田博之は「代表選出のご祝儀相場ではないか」と述べているが、いささか甘すぎるのではないか。世論調査の流れを分析すれば、奇妙なことに、第一秘書逮捕以来の民主党の「魔の2か月間」も比例選での投票先を聞くと、読売が自民27%、民主30%、時事通信が自民25.2%、民主28.9%と、民主党がリードしていたのである。

 明らかに国民は、消えた年金、後期高齢者医療制度から一連の「麻生問題」、官房副長官の「女性問題」に至るまでの政府・与党の失政・不祥事を背景に、政権交代志向が継続していたのである。その意識の根底には、小沢を除去して刷新された民主党なら支持したい、との期待がみなぎっていたのであろう。自民党の菅選対副委員長の「一過性ではないか」との読みも、ここに破たんする。加えて無党派層が結果を大きく左右した。産経の調査では「全体の約3分の1を占める無党派層のうち、民主党に投票するとの答えは、前回は27・8%だったが、今回は41・1%と13・3ポイントも膨れ上がった」という。「小沢問題」で逃げた無党派層が戻ったのだ。 一度民主党に変えなければ、政治はよくならないというチェンジの流れが、小沢問題でしぼんで、また復活したとしか言いようがない。

 麻生と選対委員長の古賀誠らは18日の夜、「鳩山由紀夫、岡田克也、小沢一郎の3人とも旧田中派の流れをくむ人間だ。今度の総選挙は古い自民党と、新しい自民党を模索してきた今の自民党の戦いになる」との認識で一致したというが、これもピントが大きく外れている。民主党幹部を「古い自民党」とそれこそほこりのついた古証文を引っ張り出して批判しても、誰も納得しまい。まるで麻生と古賀が「古い自民党」の発想そのままだ。小沢の「院政」批判は好材料には違いないが、世論調査を見る限り、国民は代表交代劇に「院政」より「リセット」を感じている。問題は1月段階のの民主党270から80議席と言う数字の歩留まりが、小沢問題のマイナスと新体制発足のプラスで、どの程度になったかである。完全回復なら言うまでもなく民主党単独政権だが、麻生内閣の支持率も回復傾向が止まったものの30%前後となっており、とても1月段階の議席数が出るとは考えられまい。総選挙は互角の勝負になってきたと言えるだろう。
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