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2009-05-14 07:59

世論に逆行する民主党代表選挙

杉浦正章  政治評論家
 民主党代表選挙は明らかに世論と逆行した形で展開している。全国紙の社説はほとんど、代表・小沢一郎主導の選挙日程を批判、朝日新聞に至っては「小沢院政では駄目だ」と言い切っている。世論調査も岡田克也が鳩山由紀夫を倍近くリード、同党県連へのアンケートでは圧倒的に岡田支持が多い。しかし党内的には小沢の「短期決戦」戦略が奏功して、「小沢院政」が可能な鳩山が優位に立ち、岡田がこれを追う構図が強まっている。もし世論と逆の結果が出た場合、出直し代表選挙の意義は薄れ、肝心の総選挙での民主党ブームなどとてもおぼつかないだろう。小沢院政を完全否定した朝日の社説の見出しは、とりもなおさず「鳩山代表」も完全否定したことになる。

 この編集方針の背後には深い“読み”があると考えられる。政権交代をなにが何でも達成したい同紙にとって見れば、小沢院政の鳩山では政権交代がおぼつかないと判断したのだ。「鳩山代表」で自民党を喜ばしてしまっては、何にもならないというわけだ。ここはなにがなんでも「岡田代表」を実現したいところなのだろう。まさに朝日の「本音」を物語る見出しだ。もっとも全国紙の社説が一致して否定しているのは、小沢の「短期決戦」戦略だ。朝日は「気になるのは、この日程を主導したのが小沢氏だったことだ。ここまで二人三脚で党を率い、自らの意向を通じさせやすい鳩山氏を後任に据える狙いではないのか――。党内にそんな疑心暗鬼が広がっている」と指摘、「鳩山代表」イコール「小沢院政」を浮き彫りにしている。

 毎日も「党首の辞任表明からわずか5日後の後継決定で、党の立て直しに向けた議論を果たして国民に示せるだろうか。若手議員らに疑問や批判が出ているのも無理はない」。産経は「選挙期間がない。次期首相を目指す候補者が基本政策をめぐり論戦を行うこともできないのはおかしい。政策論争を封じ込めるようでは信頼は回復されない」と小沢主導での選挙日程決定に疑念を投げかけている。読売は小沢路線の特質について「政局至上主義にある」と批判するとともに、「鳩山幹事長は、最後まで小沢代表を支え続けたが、無論、小沢代表と同じ政治手法を貫くことはできないだろう」とけん制している。毎日新聞の世論調査では後任の代表にふさわしいのは岡田との回答が最多の25%で、鳩山の13%を上回った。

 民主党の都道府県連幹部を対象に実施したアンケート調査では、読売が「岡田克也副代表を挙げたのは13都県で、鳩山幹事長の4県を大きく上回った」と、また共同通信社が「岡田克也副代表を挙げたのが三重など9県でトップ、鳩山由紀夫幹事長が熊本など3県だった」と報じている。世論の動向が旧態依然の小沢政治から決別し、「新生民主党」にふさわしい代表選出にあることは確定的となっている。問題は、明らかに恩師・田中角栄の天才的な“素早さ”を真似た小沢の速戦即決作戦が効を奏しつつあることだ。敵が動く前に裏で決着し、浮上したときは勝負がついているという戦略だ。このままいけば、世論とかい離した代表選挙となる流れであり、「小沢続投」と変わらない、とメディアは受け止める可能性がある。世論の動向を見て若手・中堅議員らが大きなうねりを見せるかどうかにかかっている。
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