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2009-04-28 23:02

(連載)中曽根外相の「核軍縮」演説を聴いて(1)

角田 勝彦  団体役員・元大使
 4月27日夜、中曽根外相は、都内で「ゼロへの条件:世界的核軍縮のための『11の指標』」と題する約30分の演説を行い、核軍縮(及び最終的には廃絶)に関する我が国の包括的方針を発表した。筆者も拝聴したが、オバマ大統領が5日のプラハ演説で表明した「核兵器のない平和で安全な世界」を追求する戦略に呼応し、かつ世界で唯一の被爆国として「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則を堅持している日本の視点を付け加えた方針を提示したもので、我が国の道義に基づく外交の中核として、世界、とくに中国へ伝達する価値がある。

 同日の豚インフルエンザ警戒水準引き上げのニュースに席巻され、マスコミであまり報道されていないのは残念である。すなわち、4月13日付拙稿「北朝鮮のミサイル発射とオバマ外交」で分析したように、 オバマは「米国は核兵器を使用した唯一の核保有国として、核廃絶に向けて行動する道義的責任がある」と宣言し、その外交の主軸の1つとして(1)核保有国の軍縮(2)核不拡散(3)核テロ防止を取り上げた。我が国は当初より支持を表明し、麻生首相は24日オバマとの電話会談で、これを強く支持する旨直接伝えている。

 ところで、今回発表された中曽根構想は、3本柱として、(1)すべての核保有国による核軍縮措置(11の指標のうち、米ロの協調と指導力、中国及びその他の核保有国による核軍縮、核軍縮の透明性、不可逆的な核軍縮、将来の検証に関する研究)、(2)国際社会全体による多国間措置(指標のうち、核実験の禁止、兵器用核分裂物質の生産禁止、弾道ミサイルの規制)、(3)原子力の平和利用を志す国のための措置(指標のうち、民生用原子力のための国際協力、IAEA保障措置、核テロリズム防止)をあげている。

 中曽根外相も「現実の安全保障環境を踏まえる必要」があること、「我が国にとっては、日米安全保障体制の下における核抑止力を含む拡大抑止が重要である」ことを明言しており、核ゼロはもちろん軍縮・不拡散実現には多くの困難が予見されるが、核テロの可能性ひとつを考えてみても、せっかく高まった気運を活用し、本構想を我が国外交の重点とするべきである。(つづく)
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