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2009-04-25 13:35

(連載)日本は“Under-achiever”から脱却せよ(2)

矢野 卓也  日本国際フォーラム研究員
 それにしても、"Under-achievers"に日本が含まれていることは、意味深長である。ウォルトは国力とは独立した変数によって、ある国が国際的影響力を行使しえたり、行使しえなかったりする可能性を示唆しているだけであり、それゆえ"Under-achiever"も"Over-achiever"も、没価値的な状態に過ぎない。"Under-achiever"が劣っていて、"Over-achiever"が優れているということでは決してない。むしろ「困った国」に"Over-achiever"になられてしまうことは、迷惑千万な話である。

 また、"Under-achiever"や"Over-achiever"という状態は、国際社会に対する影響力で判断されるものであるから、その判断に異議申し立てすることは虚しいし、また、やみくもにそこから脱却を図ろうとしても、うまくはいかないだろう。とはいえ、私の考えでは、今の日本が "Under-achiever"からの脱却をめざすことは、それ自体咎められることではない。我が国は過去久しく努めて"Under-achiever"であろうとした経緯があり、国際社会もそれを是とした時期もあったのは、確かである。

 "Under-achiever"自体が没価値である以上、「よい」"Under-achiever"と「悪い」"Under-achiever"がありうる。日本は過去の一時期においては「よい」"Under-achiever"であったかもそれないが、いま、「悪い」"Under-achiever"になりつつあるのだ。現実は着実に進化している。今の日本が"Under-achiever"に留まることは、それはとりもなおさず、「悪い」"Under-achiever"とならざるをえないのではないか。

 むろん"Under-achiever"からの脱却は、今の日本にとっては大仕事である。そして、何を "achieve"するかが問われる。そこにこそ我が国の知恵と力量が試されているのだ。すくなくとも、それは「軍事大国」や「経済大国」といったわかりやすい言葉で形容できるものではないはずである。(おわり)
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