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2009-04-20 14:04

(連載)最強レーダーの使用を認めず(2)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 今回、北朝鮮のテポドン2発射には、イージス艦9隻(韓1,日3,米5隻)が日本海と太平洋に展開していた。他に、米海軍のミサイル追跡船「オプザベーション・アイランド」も。イージス艦搭載のSPY高性能レーダーはビーム幅を絞って運用すれば、約1000キロ先のミサイルを探知できる能力がある。イージス艦が海上からミサイル発射基地のムスダン里に合わせてレーダー波を照射すれば、容易にテポドン2の航跡を探知・追跡できる。ちなみにムスダン里から岩手県までの距離は約1200キロしかない。さらに岩手県から東に約1000キロの海上には、海自のイージス艦「きりしま」が待機してミサイルの航跡を太平洋上空で追った。同時に横須賀配備の米海軍イージス艦も太平洋に待機していた。

 さらにである。青森県の空自・車力基地の米軍Xバンド・レーダーは、オベリング前ミサイル防衛局長が言うように、SBXの1/3~1/4程度の探知範囲なら、最大で1500キロ前後の探知範囲と推測される。ちなみにXバンド・レーダーとは、波長が8~9ギガ・ヘルツの電波を使った合成開口レーダーのことで、アメリカの軍事偵察衛星が搭載しているXバンド・レーダーは、夜間や雨天など光学カメラが使用できない時に地上十数センチのものを探知できる能力があるという。これだけ日米韓が緻密にテポドン2の航跡を追跡する体制をとれば、わざわざアラスカからSBXを呼ぶ必要はないと思う。もしアメリカがSBXを稼働させれば、6カ国協議再開の妨げになるからというのは、北朝鮮へのリップサービスである。アメリカは北朝鮮に気を使ってやったという意味が込められている。

 また、SBXにはアメリカの核戦略システムとして、ロシアや中国からの核ミサイル攻撃・探知という重要な任務があることを忘れてはいけない。またこの『ワシントン・タイムス』紙の記事で重要なことは、かなり早い段階でオバマ政権では、北朝鮮のミサイル発射は人工衛星打ち上げと認識していた点である。北方軍も発射前から人工衛星の打ち上げを確信(明確になったと)してSBXの使用要請を取り下げていることだ。

 この次ぎは、米紙あたりから報じられるテポドン2の関連情報は、アメリカ政府当局はテポドン2が発射される直前から「470メガ・ヘルツ」の電波(金日成・金正日将軍を称える歌)をムスダン里から受信しており、ミサイル発射とともに日本海上空を横切り、太平洋上でこの電波の発信が止まるまで受信したということである。要は、間違いなく人工衛星の打ち上げだったとアメリカが公認してやるのだ。(しかし打ち上げは失敗)。日本のメディアもテポドン2発射ではあれほど熱くなったのだから、その後の関連情報のあと取材も手を抜くことなく行って欲しい。記者が自分のミスや掘り下げの浅さを隠すために、なおざりな総括記事が見受けられる。虚しいことである。(おわり)
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