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2009-04-13 09:20

(連載)韓国における弾道ミサイル能力拡大の動き(2)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 韓国は、短距離弾道ミサイル「玄武」の発射実験を、最大射程の300キロで行わず、わざわざ100キロに落として試射を実施(成功)した。その理由は、北朝鮮向けというよりも、日本への配慮と思ったことを覚えている。日本も、射程が約100キロを越える長射程ミサイルを自主規制し、韓国を刺激しないように配慮しているからだ。海自の対艦ミサイル・ハプーンの射程は、100キロ程度である。

 もし韓国が「米韓ミサイル指針」を見直し、韓国南部から北朝鮮北部を射程に収める射程500キロ程度の弾道ミサイルを開発・配備すれば、日本の九州や阪神地方がその射程に入ることになる。それでは日韓の軍事バランスから、日本でも射程が500キロ程度の巡航ミサイルを開発・配備する必要に迫られる。しかし、日本の弾道ミサイルの開発・配備には、強い制限が課せられてる。

 日本の場合は、九州から巡航ミサイルを発射して、南西諸島の防衛力を高めるためと説明されることになる。さらに朝鮮半島が統一され、「玄武」が朝鮮半島の北部に配備されれば、日本も巡航ミサイルを大型化して射程を伸ばし、朝鮮半島全域を射程に収めるものを配備することになろう。そうなれば、日韓の軍拡競争が始まることになる。このように、韓国が北朝鮮への対抗意識から弾道ミサイルの能力を向上させれば、それは日本の安全保障にも大きな影響を与えることになる。ここは韓国に対して、「熱くならず、冷静に対処して欲しい」と願う。

 同じことは、日本についても言える。単純に北朝鮮のテポドンへの対抗意識から、核武装や敵地攻撃能力の向上を主張すれば、韓国など日本の周辺国を刺激し、不要な軍拡競争を誘発する可能性が極めて高くなるからだ。「軍事力には軍事力」、「兵器には兵器」の論理で日本の安全保障を考えるべきではない。特に北朝鮮のような特異な国を相手する場合には、北朝鮮の挑発に乗って「瀬戸際外交」に引き込まれる様な愚を避けるべきだ。大事なことは、北朝鮮のカモにならないで、国際関係を通じて日本の安定(安全)と繁栄を築き上げるということである。(おわり)
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