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2009-04-08 17:50

第5回「アジア経済フォーラム」に参加して

若林 秀樹  日本国際フォーラム常勤参与
 カンボジア王国の首都プノンペンで、4月5~7日に開催されたカンボジア大学主催の第5回「アジア経済フォーラム」(AEF)に出席しましたので、その感想を皆様にお伝えしたいと思います。6年振りに訪れたプノンペンの街は、この金融・経済危機の中にもかかわらず、活気に満ち、人々が明るく、たくましく生きているのは、印象的でした。カンボジアは1991年のパリ平和協定を経て内戦が終結し、1993年に国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の下で「カンボジア王国」として再出発しましたが、4回の総選挙を経て、今ではフン・セン首相を首班とする安定的な政治体制が築かれつつあります。経済的にも最初の総選挙時は、1人あたりのGDPは100ドル程度でしたが、今では約600ドル程度に増え、着実な国作りが進んでいます。

 カンボジアはアジアでは最貧国の一つですが、その国がAEFという民間ベースの国際会議を主催し、しかもそれが本年で5回目を迎えているというのは、本当に驚異的なことですが、その背後には一人の日本人の献身的なサポートがあることを知って、また別の意味で驚嘆しています。というのは、本フォーラムの主催者は6年前に設立されたカンボジア大学であり、その学長は外務副大臣でもあるカオ・キム・ホーン氏ですが、カンボジア大学総長としてホーン氏を支えているのは半田晴久氏という日本人だからです。カンボジア大学や本フォーラムは、この2人が中心となって運営されていると言っても過言ではないでしょう。

 じつは、カオ・キム・ホーン氏や同氏が側近として仕えるノロドム・シリブッド殿下(シハヌーク国王の甥)は、日本国際フォーラムの伊藤憲一理事長の旧友でもあり、その縁で私は今回のAEFに招待されたのですが、招待されて、改めて半田氏に紹介され、「アジア経済フォーラム」がダボスの「世界経済フォーラム」をモデルにして開催されていること、6年前に半田氏らによって設立されたカンボジア大学がすでに2000人を超える学生を擁する規模に成長し、カンボジア3大大学の一つとして認められるようになっていることを知りました。日本の途上国支援はもっぱら政府ベースのODAだけで、民間ベースの支援がほとんどなきに均しいことは周知のことですが、それだけにこのような半田氏の貢献はもっと日本でも知られてよいと思いました。

 第5回目を迎えたAEFは、金融・経済危機の真っ只中で「アジアの挑戦と機会」というテーマを柱に据え、フン・セン首相の基調演説で開幕しました。続いて、金融・経済危機への対応、貿易と投資、平和と安全保障、地球温暖化等の個別テーマについて、カンボジアのコン・ヴィボル経済・財政副大臣、パン・ソラサック通商貿易副大臣のほか、インドネシア、中国、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、インド、イギリス、オーストラリア等の各国や国際機関の関係者が次々に発言しました。私も、「金融・経済危機への対応」というセッションのスピーカーとして、「行き過ぎたグローバル資本主義の反省に立ち、共生というアジアの価値を踏まえた新たな地域協力や経済統合へ向かうべき」と述べ、それなりに共感していただけたものと思っています。

 全体的にアジアは、この金融・経済危機の中で成長率は昨年より下がっているものの、欧米と比べるとその影響は相対的に軽微であり、今後の見通しに関しても楽観的な見方が多かったような気がします。ASEAN諸国は全体として元気であり、同時に成長著しい中国とインドの存在感も見せつけられ、日本としてうかうかしておられないと感じました。G20サミットに出席した直後のスリン・ピツワンASEAN事務局長が「アメリカ中心の一極時代が終焉して、多極化の時代に入りつつある。今後はASEANもその極の1つを担いたい。世界の秩序を決めるのは、もはやG7ではなく、G20である。ASEANも世界の秩序づくりに参加したい」と自信たっぷりに語ったのも、非常に印象的でした。この「アジア経済フォーラム」が今後も更に回を重ね、、アジアと共に一層発展することを祈念してやみません。
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