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2009-03-30 07:56

小沢続投:鈴つけ役は渡部しかいまい

杉浦正章  政治評論家
 千葉知事選の大差敗北と世論調査の挟撃を受けて、民主党代表・小沢一郎の進退は“風前の灯”のようになってきた。「続投問題」を決着させる役目は、「小沢続投は共同責任」と執行部総退陣を示唆した幹事長・鳩山由紀夫はもちろんのこと、続投を図った代表代行・菅直人では難しいだろう。ここは盟友で最高顧問の渡部恒三が、小沢のクビに鈴をつけられるかどうかにかかってきている。渡部は、小沢自身とその留任に不満を抱く中堅・若手の非小沢系議員の双方に親しく、まとめ役として最適だからだ。渡部の心中を推し量ると、おそらく時期を見て「続投は無理」と小沢を説得し、“のたれ死に”を避ける形でことを治めようとしているのではないか。

 地方選挙で連勝を続けてきた民主党に千葉知事選で逆風が吹いたのは、小沢“続投”に原因の一つがあることは言うまでもない。また朝日新聞のの世論調査では、政党支持率が自民党へ逆転、「首相にふさわしいのは、麻生か、小沢か」については、麻生へと逆転した。小沢は民主党にとってまさに“疫病神”的な存在となった。これでは民主党の悲願である「政権獲得」など夢のまた夢ということになるだろう。しかし、小沢にそれを悟らせるのは誰か。まず渡部しかいまい。渡部の気持ちを推量することができるが、渡部の立場は、自分のことしか考えないようにみえる菅直人や“抱き合い心中”覚悟の鳩山由起夫と違って物事を客観的に見ているようだ。

 小沢の“涙の会見”の後も「民主党は小沢さんの政党でも鳩山さんの政党でもなく、国民の政党。国民の期待に応えるような対応をとりたい」と述べた。党内の小沢辞任論を痛いほど知り尽くした発言であろう。泣いたこと自体についても渡部は、3月29日のTBSテレビで「40年つきあってきて、金丸信さんが死んだときと今度の2度だけ小沢君の涙を見た。男は他人のために泣いても良いが、自分のために泣いてはいけない」と距離を置く発言をしている。もともと小沢と渡部は竹下派七奉行といわれ、よきライバル関係にあった。ということは、逆に「小沢、何するものぞ」という気概もあることになる。それではどうして小沢の首に鈴をつけるかだ。

 渡部は、恐らく小沢の記者会見における「私が続けることのプラス・マイナスを、私が判断することはできない。すべて国民が判断することだ」と述べた1点をとらえているに違いない。「政権獲得」という民主党の合い言葉に小沢が逆行している、と気づくようになるまで、状況の推移を見る構えのようでもある。そして、事態は早晩そのような状況になると判断しているのだろう。既に朝日の調査結果が示しているのは、小沢への批判もさることながら、続投を支持した民主党に対する批判の拡大である。小沢、菅、鳩山の「続投三人組」は、明らかに続投のまま頬被りという路線をうかがっている。鳩山が3月29日のNHKで、「党内に外部有識者を招いて、調査チームを作る」と述べたのも、苦肉の延命作戦だろう。

 渡部は、このまま行けば小沢がのたれ死にするに違いないと想定しているのだろう。その前に、影響力を残していったん身を引いた方が良い、と考えているのだ。それでは後任に誰を担ぐのだろうか。かねてから渡部が育ててきた若手政治家に岡田克也や前原誠司がいるが、前原は今回はまだ早いとみて、岡田を担ぐだろう。渡部は正直なところがあって、TBSで「後継は岡田か」と聞かれて「それを言っては、話が壊れてしまう」と事実上本心を吐露してしまった。本来ならば国民的人気のある渡部自身が手を挙げてもよい状況であるが、盟友の困難に乗じて自らが手を挙げるような男ではない。周りから推すムードが出てくれば、別だが。
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