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2009-03-28 21:33

(連載)中国の海軍力増強と近海支配強化(2)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 ここで、中国は公海の自由航行権について認識が浅いことに気がつく。日本やアメリカのような海洋国家は、公海の自由航行で巨大な国益を得ている。たとえ周辺海域であっても、その公海に制限を加えることは、自分で自分の首を絞める行為になることに、中国は気がついていない。日本の港にいろいろな国の船が自由に航行できるから、日本は繁栄できるのである。自分で都合よくルールを決めるのではなく、世界のルールに従うことが、自国の国益になることを知るべきだ。中国はその大人に成りきれていないという意味である。

 この記事にある様なことを、日本やアメリカの海軍(海自)関係者はどう思っているかといえば、中国の幼稚さを感じているだけのことで、軍事力を使って解決すべき問題とは考えていないだろう。なぜなら、海南島の近海海底には日米の潜水艦探知システムが敷設され、すでに活動しているからである 。日本周辺で行われていた北朝鮮の不審船の活動を、日本は自衛隊の電波傍受と上空からのP3C哨戒機でほぼ完璧に把握していた。ただそのことを公開していなかっただけの話である。中国について問題なのは、台頭するその軍事力ではなく、国際常識に慣れないその幼児性である。中国はこれから何度も苦い水を飲みながら、学んでいくしかないのだろう。

 まあ、日本はイライラしないで、大人の対応をすれば、この問題は自然に消滅する。長期的に見れば、いま中国のやっていることは、中国の国益を失う行為にほかならないからだ。かつて江沢民前主席は反日教育を“国家統合”のための政治手段として使った。現在の胡錦涛主席は「海権(ハイチュワン)」を“国家統合”の政治手段として使おうとしているのではないか。「海権」という新語が、いま中国で熱く語られている(政策掲示板「百花斉放」3月19日付け拙稿「米海軍調査船への中国艦船の異常接近事件の意味」をご参照ください)。

 今、図書館から借りてきて、『インドの衝撃』(NHKスペシャル取材班編著、文藝春秋社刊)を読んでいます。その中に、インドが核実験を行った1998年5月11日前後を取材した「インド Vs アメリカ:核を巡る攻防」という個所があり、「インドは核武装がしたくて核実験を行ったのではなく、アメリカと対等に対話(交渉)したくて核実験を行ったのだ」という記述がありました。その個所を読んで、インドが核実験に拘った理由と、中国が「海権」に拘る理由に、同じものを強く感じました。(おわり)
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