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2009-03-27 16:39

(連載)中国の海軍力増強と近海支配強化(1)

神浦 元彰  軍事ジャーナリスト
 海軍力増強を急ぐ中国が、同時に並行するように、南・東シナ海で強硬措置による「主権防衛行動」を拡大しつつある。大国意識を強める中国が「自らの海」を大胆に抱え込もうとする動きだ。そのため、日本を含む周辺諸国、さらには米国との摩擦も表面化し始めている。海南島沖の南シナ海で今月8日、中国船5隻が米軍調査船に異常接近した上、材木を海上に放出し航行を妨害した問題で、中国政府は「米艦は中国の許可を得ず、中国のEEZ(排他的経済水域)で活動した」とし、米国に関連活動の即時中止と再発防止を求めている。中国での報道も「米スパイ艦」への批判一色だ。

 しかし米国側は、公海での沿岸国による規制を認めていない。また、日中間の合意事項となっている事前通告なしに中国の調査船が日本のEEZ内で活動するケースが相次いでいる。それにもかかわらず、中国は今回「中国の主権が脅かされた」(中国紙)として、実力で米艦を阻止し、事実上米軍に「中国の海で活動するな」と宣言した。

 南シナ海で6カ国・地域が領有権を主張するスプラトリー(南沙)諸島でも同様の問題が起きている。今月、フィリピン、マレーシアが同諸島の一部領有を改めて確認したが、これに対し、全諸島の領有を主張する中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が問題の複雑化回避などで合意した「南シナ海行動宣言」に違反する、と激しく反発した。ただ、中国も南沙諸島の主権を主張し、実効支配の強化を進めており、新華社電によると、中国は15日、人民解放軍・南海艦隊の退役船を改装した最大級の漁業監視船を南シナ海に配備した。

 中国の「主権防衛行動」は、日本と主張がぶつかる東シナ海でも強化されている。昨年12月、中国船2隻が尖閣諸島沖の日本領海内に9時間にわたって侵入した事件は、「主権を示す」ために行ったことを中国紙が明らかにしている。日中合意に反する形でのガス田開発でも、「中国のEEZ内に位置する」として、日本の申し入れに耳を傾けない。中国共産党政権はもともと、「力の信奉者」(共産党関係者)だ。海を巡る最近の行動は、「軍事力を含む総合的な国力の増大で独自の極を目指す」(同)という大国戦略と、もはや多少の対外摩擦は恐れないという強硬姿勢の表れだ。空母建造・保有論もこの流れの中にある。(つづく)
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