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2009-03-27 10:33

なぜ日本経済はここまで落ち込んだのか

古川 元久  衆議院議員
 このところ後退を続ける世界経済の中でも、日本経済の落ち込みが深刻になっています。昨年秋の時点では、欧米に比べ日本経済のダメージは比較的小さいとの見方が内外で一般的でした。そのため急激な円高も進んだのですが、ここに来て円も売られる一方です。なぜ日本経済がこれほど落ち込んでしまったのでしょうか。私はその大きな原因として次の3つが挙げられるのではないかと思います。第1に、近年の世界同時好況は結局、米国バブルであったこと、第2に、80年代後半以降唱えられた日本経済の外需主導経済から内需主導経済への転換が、いまだにできていなかったこと、第3に、政府の経済分析・見通しがきわめて甘かったことを挙げたいと思います。

 一昨年ぐらいまで数年間は「世界全体の景気がいい」という“世界同時好況”の状況でした。しかし過去の日本のバブルを思い出しても、「みんな景気がいい」という状況はふつうではありません。結局、これはサブ・プライムローンに象徴されるアメリカ国内で起きたバブルに、グローバル化した世界経済がみんな巻き込まれていたのです。世界中の国が、輸出もお金もその多くをアメリカにつぎ込んで、それが世界同時好況へとつながりました。途上国の勃興ももちろんありますが、その経済発展もかなりの部分をアメリカに頼っていたのです。80年代後半の円高不況下で、「日本経済を外需主導から内需主導へ構造転換する」ことを提言する前川レポートが提出され、その後の日本はこの“内需主導型経済”への構造改革を行ってきたはずでした。

 ところが実際に進んだのは、輸出産業が国際競争力をつけるための構造改革だけで、外需依存の日本の経済構造を内需主導に転換するための構造改革はほとんど進んできませんでした。小泉内閣の“構造改革”はその典型です。その結果、ここ数年はますます外需依存(それは、ひいてはアメリカ依存)が高まり、その外需が急減したために、その影響をもろに受けているのです。政府が世界及び日本の経済を常日頃、きちんと分析し、それに基づき見通しを立てていれば、つい1ヶ月足らず前まで示していたような「欧米に比べれば、日本経済はまだまし」というような楽観的な政府見解は出てこなかったはずです。そのような甘い分析、見通しを立てているがために政策対応が遅れ、しかもその対応は適切なものとなっていないのです。

 したがってこれからやるべきことは、希望的観測などではなく、客観的事実に基づいて正しく現実を認識し、それに基づいて見通しを立てることです。そうすれば今後とも相当に厳しい状況が想定されるはずです。その上で、外需頼み、アメリカ頼みでない、今度こそ内需を喚起するような、真の構造改革に着手することです。時間のかかる、容易な道ではありませんが、おそれずに前に進んでいきましょう。私たちが現在享受している豊かさも、同じような先人の努力によって築かれたものなのですから。今度は私たちが次の世代にために、そうした努力をする番です。
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