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2009-03-17 19:08

世界金融危機と日本企業の対応

木下 俊彦  早稲田大学客員教授
 さる3月11日に経済産業研究所セミナーで「世界金融危機と日本企業の対応」という演題で講演をしました。参加者は約150名でした。私にとってこのセミナーに出たことの収穫は、冒頭参加者に以下のような3つの質問をしたところ、挙手でかなり明確な回答が得られたことです。このセミナーに来た人は、産官学やメディアの人たちで、必ずしも「専門家」とは言えないとしても、これらの問題を勉強して参加したはずで、TVや新聞の電話調査による任意調査よりも信頼度は高いと思います。そこで分かったことは、大半の参加者が、第1に、今回の景気回復は容易でなく、相当な年月がかかるであろう、第2に、米国経済はいずれ立ち直るが、今までのように双子の赤字を垂れ流し、米国経済が突出するというパターンではなくなるだろう、第3に、だからといって、日本がただアジアにのめり込むのはまずい、米国とアジアの双方に軸足をかけるべきだと考えている、ということです。

 Q1の回答からいえば、Q3はもっとアジアに力点いれるべきという人が多いのではないかと思いましたが、参加者は、経済面だけでなく、安全保障とか、アジアに軸足をかけたときのリスクを感じたのでしょうか。日本企業の幹部には「要は気の持ちよう。あと1年位で、世界景気は回復するのじゃないか」といわれる方が多いのですが、絶対的な根拠があるわけではありせん。

 私は、世界的な株価、地価など資産の極端な減少によるデフレ効果が(日本の90年代のように)意外に大きいこと、米国財務省は金融機関に現在「ストレス・テスト」を実施中であり、まだ不良債権の大きさをつかんでないこと(多分、公表をはばかるくらい大きいか、地価下落中で不明部分が大きいのではないでしょうか)に加え、GMクラスの米国の大製造業も政府救済要請に動くと聞いており、総合すると、世界景気の回復は遅れると見ています。すでに、米国の州財政は大幅歳入減に見舞われています。中央政府のばらまきも、こういう形のブラックホールに吸収されるのではないか。ガイトナー財務長官がEU、日本にさらなる財政支出を要請するのも、そのあたりに根拠があると思います。

 Q.1 いつ、米国の景気が回復するか。
  あと1-2年くらいに底を打ち、上昇へが3割。
  あと3-5年(あるいはそれ以上)かかるが7割。

 Q.2 米国は経済危機克服後、従来のように国際的に突出した地位を取り戻せるか。
  イエスは3割。
  ノーが7割。

 Q.3 日本として、これを機に、米国依存を減らしつつ、アジアに力点を置くべきか。
  イエスは3割。
  ノーは7割。

 講演後、出席者から以下のような質問がありました。(1)「中国経済は深刻な雇用問題、労働争議などから崩壊するという見方もあるが、どう思うか」、(2)「自分は、最近訪中し、日本の中小企業にとって中国市場は大きなチャンスだと思った。そこで、中小企業にそういう方向で指導をするつもりだが、どう思うか」、(3)「中国の鉄鋼、自動車などの過剰設備がダンピング輸出をもたらし、世界経済を麻痺させないか」、(4)「この際、アジア通貨危機時に米国につぶされたアジア通貨基金づくりに再挑戦するという考えもあるが、どう思うか」ということで、質疑も活発でした。以上、ご参考まで。
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