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2009-03-12 14:40

NGOの参加が不可欠な日本のODA

広中 和歌子  参議院議員
 私が政治の世界に入ったのは1986年、東西冷戦の雪解けが始まった頃。当時の日本の経済成長には目を見張るものがあった。21世紀は「日本の世紀」と言われる反面、貿易摩擦も大きくなっていた。そうした外圧を取り除くためにも、日本の途上国への支援は大切だったが、援助の額は大きいものの、大型インフラ中心で、現地の貧しい庶民には無縁だと批判されていた。日本の支援は相手国の要請に基づくものだという政府の言い訳は、「結局は日本企業が事業を受注し、地元企業は潤わない」とか、「self-serving」つまり「自分達のための支援」だ、というのが日本のODAへの批判だった。

 私は外国のODAについて学ぶため、カナダの国際開発援助庁CIDAと米国国際開発庁USAIDを訪れ、その援助のかなりの部分がNGOを通して実施されていることに驚かされたものだ。次いでブラジルのアマゾンの奥地マナウスを訪れた時、火事や洪水などの災害に現地の公館ではどう対応しているのか、「火事場の見舞金」のような支援が必要ではないか、とマナウスの日本総領事に伺った。「必要性はあるが、そうした制度はない」とのお話だった。帰国後、早速外務委員会で小規模支援の必要性を訴え、そこから我が国の「草の根無償」支援がはじまった。

 最初は1億円から、やがて150億円にまで達したが、最近は120億円前後で推移している。1989年ベルリンの壁は崩壊したが、冷戦後の世界は決して平和ではなく、新たな課題が生まれていた。地域紛争、テロ、麻薬、感染症に加えて地球環境問題など、政府の援助への対応も変わってきた。これまでの要請ベースを改め、まず相手国の軍事支出に注目、民主主義と人権への配慮、教育と人材育成、環境重視、そして良い統治を行なっている国に優先的に支援を行うというように改革された。しかし、1990年代後半、日本の経済は下り坂となり、ODAの縮小を余儀なくされる中、より効率の高いODAが求められるようになった。

 人間の安全保障という視点での平和構築、感染症、女性の権利と健康、そして途上国の自立支援などが強調され、きめ細かな支援のためにはNGOの参加は欠かせない、という認識が少しずつ高まってきた。アメリカやEUは国際援助を増額し、そのかなりの部分がNGO、NPOを通じて、顔の見える援助となっている中、日本の海外支援は量から質への転換が必要であり、特に援助国と受入れ国の市民参加が欠かせない。そうした参加型ODAによって、援助を必要としている人たちに支援が直結するようなきめ細かな活動ができ、他方支援国のNGOは受け入れ側との連携によって効率の高い支援で人間の心を伝えることができるからである。
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