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2009-02-09 07:57

麻生への「諦観」に覆われた自民

杉浦正章  政治評論家
 「私は政局天動説をとっている。自ら動かなくても天が荒れる」と述べたのは福田赳夫だが、いまの政権をめぐる動きは、まさに政局天動説だ。自民党が躍起になって何をしようと、首相・麻生太郎がものに憑(つ)かれたようにマイナス発言を繰り返し、国民の支持を失う。まるで積み木崩しを首相自らやっているようなものだ。郵政見直し発言にまで至ると、もはや“失言病”といってもよい。普通なら「麻生おろし」が派閥単位で生じてもおかしくないのに、なぜ出ないのだろうか。自民党を覆う諦観があるような気がしてならない。

 いくら何でも自らの存在基盤を否定するような郵政見直し発言、それも小泉内閣の閣僚でありながら「反対だった」の発言は、いかんともし難い。国民の感覚からのずれと言うより、政治常識の欠如の部類であろう。さすがに8日のNHK日曜討論も、野党はもちろん、自民党や公明党からも批判が続出した。民主党代表・小沢一郎に至っては8日「こんな総理大臣ではダメだ、という動きが与党内で起こりかねない。いつ政局の転換が起こってもおかしくない状態だ」と大げさに反応したが、小沢が言うと、なぜかやろうと思っている自民党実力者も動かない。

 普通ならこれだけの麻生発言は、自民党内実力者から政局意識の批判の声をわき上がらせるものだが、なぜか静かだ。動きが取れない最大の原因は、未曾有の経済危機で予算審議をしている最中に、党内の人事抗争ののろしを上げられない、という事情がある。もっとも自民党内は総裁選候補の「タマ切れ」の状況でもある。麻生と総裁選挙を戦った4人の候補は、与謝野馨、石原伸晃、石破茂、小池百合子のいずれもが派閥のリーダーでもなく、政治的には総裁選挙の“にぎやかし”的存在であった。本命麻生を盛り上げる効果しかなかった。このうち与謝野だけが「麻生退陣の場合の選挙管理内閣での首相候補」に擬せられているが、その確率はコンマ以下であろう。どうしてこのように覇気のない政党になってしまったのだろうか。第一の原因は、派閥抗争の最大原因であった中選挙区制が小選挙区制になって、派閥対立の原因が除去されたことにある。派閥の領袖を旗印に押し立てて、選挙区のライバルと張り合って政権を取る、という状況が失せた。したがってどの派閥もトップはいるが、必ずしも総裁候補ではない。

 また4、5月解散となれば、「麻生おろし」をするにはあまりに時間がない。おまけに予算審議の最中である。マスコミや野党から袋だたきにあうのは目に見えている。予算審議から解放された場合も、麻生が解散に踏み切れば、自分の選挙で党内抗争どころではなくなる。唯一のチャンスは、麻生が7月のサミット出席に“色気”を示して解散を先送りにしようとしたときであろう。この場合「任期満了選挙」と「麻生おろし」は“同義語”となり得る。首相の顔をすげ替えての任期満了選挙が、唯一残された自民党の希望のともしびになり得る。しかし、その可能性は少ない気がする。やはり予算が関連法案を含めて成立した後の解散の可能性が大だろう。そうなれば「麻生おろし」は封じ込められたまま、日の目を見ないことになろう。
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