国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2009-01-28 08:04

給付金は与党選挙にマイナス効果

杉浦正章  政治評論家
 確かに定額給付金は、名実ともに「総選挙対策のばらまき」になりそうな気配だ。なぜなら配布が総選挙時期とピタリ一致しそうになってきたからだ。もし4月解散、5月選挙となった場合、自治体の準備の遅れもあり、給付がやはり4~5月になる方向だからだ。期せずして政府・与党は、選挙に合わせて現金を国民に手渡すことになる。だが、だからといってそれが投票行動につながるかは疑問だ。かえって選挙の争点に再浮上して、「骨折り損のくたびれもうけ」となりかねない側面がある。選挙時期もまだ曲折があるが、首相・麻生太郎の狙いの第一候補は5月選挙だろう。とすると、野党の徹底抗戦で給付金の盛り込まれた予算関連法案の成立は、「60日条項」を適用せざるを得ない方向だから、3月の中旬となる。

 既に給付の準備をしているが、これまでの予想では配布は、早くても4月から連休をまたいで5月ということになりそうである。共産党国対委員長・穀田恵二が27日、「究極の選挙対策のばらまき」と述べているゆえんであろう。もちろん政府・与党に選挙に合わせる意図はなく、国会の成り行きでそうなる可能性があるのだ。昔、千葉の選挙区を取材したが、農家の縁側でうたた寝しているばあちゃんの座布団の下に、いかに素早く千円札を滑り込ませるかが決め手となるという話を聞いた。給付金も、選挙とピタリと実施時期が合えば、これが国家的な規模で合法的に行われると野党が指摘している通りになる。

 しかし、効果があるかというと、どうも形勢は逆になりそうだ。元農水相・太田誠一が「これだけ評判が悪ければ、選挙対策にはならないのではないか」としみじみと慨嘆しているが、確かにそうだ。マスコミによるばらまき批判とこれに影響された国民的な反対論は、一つの政策では近年珍しいほど高まっている。受け取る国民が80-90%に達していることの効果はどうかというと、受け取っても投票行動は別という流れだろう。選挙は「政策で選択」という投票行動になる可能性が濃厚だ。民主党支持層も共産党支持層も給付を拒絶はしないだろうが、投票行動は「給付はけしからん」となる。

 それでは、定額給付金が景気対策になって政府・与党を後押しするかというと、これも疑問だ。なぜなら、たとえ給付が消費に回っても、給付してすぐには効果は生じないからだ。たとえ景気浮揚効果が分かっても、半年後では後の祭りだ。逆に野党にとっては選挙運動に格好の材料だ。「いま皆さん方が受け取っている給付金」を直接批判して、説得力があるからだ。逆に自民党側はこれだけ評判の悪い給付金を「わが党が実現した」とは言いにくいだろう。政府・与党は、選挙結果を見て、明らかに総選挙対策で打ち出した定額給付金が、“壮大なる徒労”に終わったことに気づくに違いない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム