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2026-05-18 17:08

現地の米中首脳会談テレビ報道から受けた印象と日本での反響

山田 禎介 国際問題ジャーナリスト
 注目された米中首脳会談で訪中の米トランプ大統領の車列が北京の人民大会堂に到着した際、装甲車のような米GM製大統領専用車は、巨大な正面階段から外れ、脇となるコンクリート面むき出しの場所に停車した。国賓たるトランプ大統領はこのコンクリート面を10メートルほど歩き、階段下正面の赤い絨毯の上で待つ習近平主席に歩み寄り握手を交わした。本来の国際儀礼なら、国賓の乗る車の降車ドア下まで絨毯が敷かれているはずである。

 これは数千年の歴史を誇る中国が、たかだか250年の新興国の朝貢になぞらえ、あえて米大統領専用車まで絨毯を敷かなかった「いんぎん無礼さ」か。それをテレビ映像で示したのかも知れない。あるいはトランプ大統領側が中国指定位置を無視して、予定外の場所に停めたのかも知れない。というのも、かつて仏ドゴール大統領は何度も暗殺未遂事件に遭っているが、専用車シトロエンを降りた瞬間を狙われたり、狙撃された例が多かったことを思い出すからだ。米国内ではあるが今回大統領選のとき、銃撃事件に見舞われたのも他ならぬトランプ大統領である。米大統領専用車の停車位置は、長年現場取材に関わった筆者には、今回の首脳会談冒頭の意外な光景であり、成り行きを推し量るものにみえた。

 いま世界リアルタイムのニュース報道のほとんどは、グローバル中継のテレビ映像からだ。しかも今回これらのテレビ映像を見るのは、北京のテレビ局ネット経由だ。トランプ訪中で中国首脳と何を話したか---と言う点ではほんの一例だが、中国の新華社通信が早くも両首脳の会談終了前に「習近平主席が米国の台湾武器売却問題を暗に示し警告した」とする内容を流し、一時は中国側が主導権を握った空気であった。これはまさに中国の対米関係では現状国益の核心だ。

 米中両首脳の会談では共同声明も共同記者会見もないから、この一点だけでも強く印象付けられた日本のメディア、とりわけ民放テレビでは「中国側の攻勢にトランプ大統領は受け身となった」との報道が多かった。ところが北京滞在中の保守的な米FOXテレビによるトランプ大統領インタビューが帰米後に放映され、「台湾への武器売却は中国への有効な交渉材料」と、いつもの「トランプ節」のしっぺ返しに戻ってしまった。

 ビジネスでのディール(取り引き)を国際政治に持ち込み、毀誉褒貶の政治言動のトランプ節を筆者は認めるつもりはないが、米政界では、中国新華社が報じた習近平主席発言とする報道に米連邦議会一部議員勢力が反発して、台湾への武器売却への後押し機運にもなっている様子。おまけにトランプ大統領は首脳会談から数時間後には、中国からの独立を目指す台湾の勢力への警告を行うという発言で、中国台湾にざわつきも起こった。「先んずればひとを制す」というのも、長い歴史に根ざした中国の巧妙な外交交渉術(Chinese Negotiations)のひとつであるが、今回は裏目に出たとの米専門家の指摘もある。

 中国に返還後も香港の窓口をいまも持つ英国は、西側で最初に社会主義中国を承認(1950年)した対中政治交渉歴の長い国だが、BBC特派員の報道を見ても、ワシントン(米政府)の確立された立場は台湾の独立を支持しないことであり、北京との関係を継続することは、中国政府が一つしかないことを受け入れることを条件としている、と破天荒なトランプ節を横目で見ている。

 以前わたしはこの百花斉放で、「中国が巨大な経済力をつけた現在は----(略)----各新聞社、テレビの北京特派員経験者が、ほとんど例外なくワシントン支局員や北米総局長の座に就いた」と指摘したことがある。私的な見解に過ぎないが、テレビ映像での報道に関わる中国専攻ジャーナリストのごく一部には、中国への好意的な観測があるのではと思う。
 ところでプーチン大統領が19日20日と、中国を公式訪問することがロシア大統領府から発表された。北京の人民大会堂で中ロ首脳会談が行われるとすれば、プーチン専用車であるドイツのメルセデス製特注車のマイバッハは人民大会堂の「どの位置に停車するか」見ものである。が、おそらく日本のテレビでは見ることはないだろう。
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