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2026-03-15 20:54

トランプの誤算

舛添 要一 国際政治学者
 2月28日、イスラエル軍と米軍がイランを攻撃し、イランの最高指導者ハメネイ師や政府要人多数を殺害した。イランは反撃し、イスラエルのみならず、米軍基地のある湾岸諸国も攻撃した。とりわけ、石油やLNG関連施設を攻撃し、世界経済へ悪影響を与えることによって、抵抗している。この戦争がいつまで続くのか。そして、どのような形でも停戦するのか。また、戦後のイランの体制はどうなるのか。原油価格高騰など、世界経済への影響も懸念されている。トランプは、イランを攻撃することによって多くの「成果」、「成功」を期待したが、思い通りには行っていない。3月1日公表のロイター/イプソス調査によると、イラン攻撃を支持する米国民は27%で、支持しない人は43%である。2月28日と3月1日に行ったCNNの世論調査では、支持は41%、不支持は59%である。イラン攻撃は大統領の支持率を上昇させていない。
 
 トランプは、ベネズエラでの軍事作戦の成功を容易に繰り返すことができると考えたようである。しかし、ベネズエラ(人口、約2700万人)と違ってイラン(人口、約9000万人)は大国である。世界の軍事力ランキングでも、前者は51位、後者は16位である。それだけに、イスラエルや湾岸のアメリカの同盟国に対して、反撃を展開している。米軍兵士にも死傷者が出ている。ベネズエラ奇襲のときのように、すぐに終わる作戦ではない。トランプは、作戦がいつ終了するかの見通しを述べていない。目的を達成するまで継続すると言うが、では目的は何なのか。核兵器開発阻止は明確だが、それは、核関連施設を破壊すれば済む。現体制を転覆させ、民主政治に移行するとも言っていた。しかし、ハメネイ師殺害の後、穏健な後継者なら認めるとも言っている。まさに支離滅裂である。ルビオ国務長官は、体制転換は目的ではないと述べている。政権内で方針がまとまっておらず、その場その場の対応のようである。

 イスラム諸国でもアメリカに対する反発が強まっている。イランに近いヒズボラ、ハマス、フーシなどは当然だが、パキスタン、インドネシア、マレーシアなどでも、反米の動きが広まっている。さらに、世界経済、アメリカ経済への悪影響も既に出ている。イランはホルムズ海峡を閉鎖したと主張し、多くの船舶の自由航行が妨げられている。原油やLNGの価格が上昇し、物価高を昂進させる。アメリカでガソリン価格が上がれば、国民の不満は爆発する。戦争が長引けば長引くほど、その危険性は高まる。2001年9月11日の同時多発テロへの対応として、10月にアメリカのブッシュ政権はアフガニスタンを攻撃し、タリバン政権を倒した。そして成立させた政権は、タリバンと内戦を繰り返した。その間、米軍が駐留し政府を支援した。しかし、そのアフガン政府は統治に失敗した。その結果、2021年8月、米軍はアフガニスタンから撤退した。そして、その後、タリバンが政権を握り、女性を蔑視し、教育も与えないような圧政を続けている。

 2003年3月、アメリカやイギリスは、イラクが大量破壊兵器を保持しているとして攻撃した。英米軍は4月にはバクダッドに入り、占領した。サダム・フセインは12月には捕捉された。当時国会議員だった私は、日本の自衛隊を派遣する準備のため、現地を訪ねて、現状を把握した。危険な視察であったが、後年になって大量破壊兵器があったというのは嘘であったことが明らかになった。日本政府も私も、その虚偽情報に騙されたのである。今のイラクは治安も回復し、民主化への道を歩んでいるが、豊かな国への成長は遅々としている。両国とも、米軍の攻撃が、素晴らしい民主主義国を生んだとは言えない状況である。軍事攻撃によって、アメリカは、イランを繁栄する民主主義国に生まれ変わらせることができるのであろうか。
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