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2025-07-02 00:38

国政選挙で望まれること

畑 武志 大学名誉教授
 参議院選挙が近づいている。民主主義の国の統治は、優れた議員集団によって進められているか否かで、その国の近未来は決定的に変化する。立候補者の情報が充分得られない状況の中、候補者によるSNS等の利用拡大は、有権者にとって候補者を知るための選択肢が増え、それぞれが掲げる政策課題についても身近に受け取ることが出来るようになる。どこを見てもスマホを手にした老若男女であふれる今の時代の効果的な選挙は、ネットを通して彼ら彼女らと一気に近づき、関心を引き付ける方法を開発することでもあろう。街頭演説や街宣車での連呼だけでは、熱気は伝えられても、広く政見を伝えることは難しい。有権者にとって、多忙の中で政見演説を聴きに行く代わりに、隙間時間にネットを通して直接的に立候補者の政見及びお人柄にまで触れられるのは、投票への有用な基礎情報になる。
 
 立候補者のSNS活用で望まれることは、一方的な政見の伝達だけでなく、視聴者との双方向のやり取りの公開である。有権者との応答は、各候補のネットサイトへの意見の書き込みを許容するだけで、有権者の声が届き、それに対する候補者の見解も伝えることができる。各候補が訴えようとすることについて、有権者とのやり取りも表示できるようにしておけば、各立候補者のネットサイトを中心に活発な議論が展開されて行くことになる。各候補がネット上での応答にどれだけ注力するかどうかによるが、熱心な候補のサイトには自ずと多くの関心が寄せられ、それら議論を通して候補者への理解も深まっていくであろう。
 
 ネット空間では日々多数の意見が交錯しており、フェーク情報や誹謗中傷までさまざまであるが、それらに冷静に対応処理する能力を含め、立候補者は多様な技能を伝達することができる。国政選挙でこそ、自由な議論の展開を通して国民は政治を学んで行くことにもなる。民主主義の原点である選挙において、しっかりとした議論によって候補者が選ばれるならば、国会での審議形態も変わっていくかもしれない。
 
 世界が大きく変化しようとする現代、国政が国民に信頼される政治家によって運営されるか否かは国の未来に直結する。自己の保身や利権に走らず、語られる言葉通りに、国の未来を考えぬいた優れた国際感覚と知性や人格を備えた人々によって、この国は導かれなければならない。そのために、国会審議においても、重要な課題に関して、卓越した見解を持つ議員の声は必ず政権に伝わる形にしておく必要がある。多くの国民の目に優れた意見と思われても、それらの声が政権に届くことなく、議論されることなく進められる形には、改善の余地がある。
 
 国会審議や各委員会での議論が公開されているにも拘わらず、その議論内容は噛み合わず、逃げの答弁に終始することもある。今後の国会審議について望まれる一例を考えてみる。最良の政策が実施されるためには、良く練り上げられた政策案が議論されることになるが、有権者から選ばれた議員である以上、提言の機会は役職を越え、提言内容本位で与えられるべきであろうし、それらの提言を斟酌して、政策は決められる筈である。
 
 各大臣の所管事項についても、より適切な政策提案のできる議員が居る場合、それを汲み上げられる制度が必要である。大臣補佐官らは、議員からの貴重な意見を大臣に伝え、国政が誤りなく実行できるよう補佐している。大臣にも弱点はあろうから、完全でない部分を議員からの提言によって補い、万全を期すことになる。AIの活用によれば一般議員による提案は容易になる。各大臣の端末に意見を送信するだけで、補佐官を介さず議員からの意見は届けられ、大臣も即応できる。意見が多数の場合は、AIが瞬時に要約整理して伝えることができる。必要であればこれら意見交換の記録も議員に公開することで、政策立案過程へ議員の理解が進み、委員会や本会議での議論の充実に繋がる。
 
 今、国際政治の上でも世界経済においても時代は大きく変わりつつある。政策判断の誤りは国の未来を変えてしまう。公益最優先で、透徹した判断力を持った各大臣が政策を進めているところであろうが、躍進するこの国のためには、さらに優れた国会議員が国政選挙で選ばれて行くことが望まれる。
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