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2020-10-03 19:02

日本人の国連評価「最低」、なぜなのか

伊藤 洋 山梨大学名誉教授
 多国間主義を嫌うトランプ米国大統領は、ユネスコから脱退しWHOの拠出金を停止するなど国際枠組に背を向けているが、国連についてもその分担金の多いことに再三にわたって苦情を述べている。戦後世界の国際的枠組みを主導してきたアメリカが「鎖国政策」に転ずるようなワシントンの政治的な変化に対して、辟易するばかりだ。そんなことだから、国際協調に対してさぞやアメリカ人は退行しているのではないかと思いきや、そうではないらしいという。

 創設75周年を迎えた国連の実績について、先進14カ国の国民がこれをどう評価しているのかその好感度を調べた結果が米国CNNで報道された。それによると、アメリカ国民は、大統領の悪罵にもかかわらず、国連に対して好感度を失ってはいないようだ。全国民の62%が好感を持っていると答え、否定的な割合は31%にとどまっていて、その数値はオバマ大統領在任中と遜色がない。この記事によれば、なんと、国連に対する評価が最も低かったのはアメリカではなく、先進14ヶ国中最低の評価を下したのは日本人だったという。曰く、「日本人の半数以上(55%)は国連に対して好感を持たないと答え、好感を持つという人は10人中3人(29%)に満たなかった。1年前の調査では、日本人の47%が国連に対して好感を持つと答えており、好感を持たない人は35%にとどまっていた。」(2020年9月21日付CNN報道)

 日本は、国際連合の分担金がアメリカ、中国に次いで世界で3番目、つい先ごろまでは世界第2位だった。にも拘らず、国民の好感度が極端に低いというのはなぜだろう。もっとも考えられるのはやはりトランプ大統領が声高に語る不平を日本人が真に受けるためではないだろうか。とりわけ米国一辺倒の外交政策のフィルターを通じて見る世界観がじわりと影響しているのではないか。また、国連は二度の世界大戦の反省として戦勝国を中心にして構築されたものであり、平和構築に貢献してきたことに異論ない組織だが、他方で、この国と国民にとってはこうべを垂れて参加させてもらったコンプレックスが低評価への傾向をドライブしているのかもしれない。しかし、それにしてはこの調査国の中には同じ歴史背景を持つドイツも含まれている以上、日本人の態度は特筆すべき傾向というべきであろう。

 長く続いた保守政権による対米追随外交だが、マスメディアを通じて日本人が聞かされる米国便りもまたホワイトハウス中心であって、アメリカの民衆の息づかいを聞かせてくれるわけではない。そこに、こういう混乱が入り込むのかもしれない。菅新首相も真っ先にトランプ大統領と電話会談をして、外交に不安という大方の評価を「払拭」したという。ホワイトハウスの色眼鏡が日本国民の国連への見方まで左右してしまうとは、長期間の米国一辺倒外交の副作用であろう。
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