今日、日本の外交を読み解くキーワードとして「WPS(Women, Peace and Security)」に注目が集まる。日本は「WPS決議」が採択されて以降、3次にわたって「行動計画」を策定し、決議履行のため積極的な措置を実施している。例えば、紛争関連の事態をはじめ、自然災害・気候変動への対応、さらにはWPS普及に向けた人材育成など、その取り組みは多岐にわたる。
こうした歴史や実績を有する日本は、ジェンダーの視座から国際関係を考え、平和な未来構築に向けた主体的外交を展開できると確信している。そのためには、先達が切り拓いたジェンダー平等の精神を受け継ぐとともに、世界の動向を踏まえた上で、WPS分野における日本の強みを生かした新たな外交指針を世界に示すことがきわめて重要である。
折しも、2025年は「WPS決議」が採択されてから25周年の節目を迎えたほか、女性・平和・安全保障(WPS)フォーカルポイント・ネットワークにおいて、日本はノルウェーと共同議長国でもある。メモリアルイヤーに日本が議長としてWPSを主導し、次なるWPSの将来像を示すことは、日本の歴史的使命とさえいえよう。
そこで本事業では、「ジェンダー」と「国際安全保障」の関係性を今日的視座から再検証する。その際、紛争下の性暴力からの女性の保護のあり方をはじめ、和平プロセスや危機解決における女性の役割の強化といったジェンダー不平等の改善、さらには気候変動や防災、TFGBVといった新たな脅威などについても、可能な限り女性の視点から議論の再構築を試みる。本事業の活動内容としては、①WPSに関する知の蓄積を整理するとともに、最新動向を把握し、②様々なレベルにおける知的交流などを通じて、日本が有するWPSの経験や知見、貢献などを内外に向けて情報発信を行う。そして最終的には、③「政策提言」を作成し、政策立案者などに対して、次なる日本外交を構想する上での「知の構築」とその提供を行うことである。
以上の目的を達成するべく、本研究会は、以下のメンバーなどを中心に、調査・研究活動を実施する。