平林 博 副理事長 「日本から見た世界 世界から見た日本」

第37話
『近くて遠い国はどこに行くのかー再度韓国を論ず』

2014年4月15日
 日本国際フォーラム副理事長 平林  博



 「悪韓論」「嫌韓論」「愚韓論」「呆韓論」「愚韓新論」など韓国批判の書物が売れに売れているらしい。元韓国人の呉善花氏と元中国人の石平氏の共著「もう、この国は捨て置け!」も人目を引いている。週刊誌上では、毎週のように激しい中国・韓国批判の見出しが躍っている。韓国に配慮し自制してきた日本人も、韓国側の過度の反日言動に堪忍袋の緒が切れた感がある。

 就任以来1年余り、朴槿恵大統領は日本とくに安倍総理批判を続け、首脳会談を拒否してきた。首脳会談や国際会議の場を利用して、日本や安倍総理について「告げ口外交」を行ってきた。
 日本人も態度を硬化させた。日本経済新聞が2月に行った世論調査では、中韓との首脳会談につき「日本が譲歩するくらいなら急ぐ必要はない」が57%、「早く開催するためには日本が譲歩することもやむを得ない」が30%であった。産経新聞・FNNが同じ時期に行った合同調査にでも、同様の傾向が見て取れた。後者の世論調査では、慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話(1993年)を「見直すべきだ」との回答が59%で、「見直すべきとは思わない」の24%を倍以上、上回った。日本人旅行者の韓国訪問は、昨年は前年に比し20%近く減少した。

 朴槿恵大統領は、とくに慰安婦問題に執着している。3月1日の「3・1対日独立運動」記念日では、慰安婦に関し「歴史の真実は生きている人々の証言だ。」とし、名指しを避けながらも安倍総理を「過去の過ちを認めない指導者は未来を切り開けない」と厳しく批判した。
 他方、わが国においては河野官房長官談話の妥当性、その元になった日本政府の慰安婦16名に対する聞き取り調査などの信憑性に対する疑義が強まった。2月20日の衆議院予算委員会に参考人として招かれた石原信雄元内閣官房副長官は、「当時、元慰安婦とされる女性(16名)からの聞き取りを行って河野談話に至ったが、その裏付け調査は行っていなかった」と明言した。さらに石原氏は、韓国政府が一旦は河野談話を受け入れながらその後も慰安婦問題を追及し続けていることについて、「日本側の善意が生かされていない。非常に残念だ。」と述べた。その結果、日本政府は河野談話に至る経緯などを検証することとした。
 しかし、安倍総理は、大きな譲歩を行った。3月15日の参議院予算委員会において、安倍政権では河野談話を見直さないと言明したのである。
 これに対し朴槿恵大統領は「幸いに思う」と応じ、態度を軟化する兆しを示した。米国の動向のみならず、日本との冷い関係が韓国経済や観光業に暗い影を落とし始めたことが効いてきたようだ。
 慰安婦問題では、日本側は法的には日韓基本条約で解決済みとの立場は譲れない。道義的にも、アジア女性基金を通じた償い金200万円と橋本龍太郎総理のお詫びの手紙を多くの元慰安婦に渡して和解した。一部の強硬な元慰安婦と応援団体が対日闘争を継続し、現在、これに朴政権や韓国マスコミが乗っている図である。
 竹島問題でも、韓国は攻撃的な言動をやめるべきである。韓国が今以上に竹島に関し強硬態度をとれば、わが国としては国際司法裁判所に提訴することも躊躇すべきではない。韓国は提訴に応じない姿勢なので審理は行われないだろうが、わが国の正当性を国際的に訴える意義は大きい。
 「日本海」を「東海」と呼称すべしとの韓国側の国際的キャンペーンにも毅然として対応すべきだ。日本占領下で無理に「日本海」と定められたとの韓国の主張は根拠がない。「日本海」は古い呼称であり、1602年にマテオ・リッチ「坤輿万国全図」にも出現する。国連も、世界の海図を主管する国際水路機関(IHO)も、「日本海」を正当な呼称としており、米国、ロシアさらに中国ですら同様の立場である。中国にとって「東海」は、東シナ海のことで日本海のことではない。

 ようやく最近になり、韓国側に変化の兆しが見え始めた。4月に予定されているオバマ大統領のアジア訪問は、当初はわが国とフィリピン、マレーシアの3カ国訪問であったが、米国は韓国の強引な要求に屈し韓国を訪問先に入れた。国賓として遇するために日本側が希望していたフルの2泊ではなく中途半端な2泊になってしまった。日韓双方に等分で当たってきたオバマ政権であるが、最近は韓国への圧力を強めた。中国と北朝鮮への対応もあるが、韓国の対日強硬姿勢によりオバマ大統領のアジア訪問が傷つく恐れが出てきたからだ。2月に韓国を訪問したケリー国務長官は、尹炳世外相との会談後の記者会見において、「歴史問題は少し後回しにして、未来に向かわなければならない」と述べた。
 この結果、朴大統領も、3月24~25日にハーグで開催された核安全保障サミットの機会を利用した日米韓三者の首脳会談に応ぜざるを得なくなった。しかし、朴大統領は、日本に対する基本的態度を変えたわけではない。朴大統領は日米韓首脳会談の前に中国の習近平国家主席と会い、歴史問題で中国と歩調を合わせて日本を強く牽制した。安倍・朴2者の首脳会談も、ハーグでは実現しなかった。

 韓国は、どこへ行こうとしているのか?
 韓国は経済面で中国の引力圏に入った感があるが、朴政権は歴史問題等でも中国と対日共闘を組むことにしたようである。韓国はかつての李王朝のように、習近平主席が夢見る「中華圏」に組み込まれるのであろうか?
 しかし、中国は対日関係で韓国を利用するだけであろう。中国は、韓国が領有権を主張する東シナ海の離於島(イオド)、波浪島(パランド)と称する岩礁は中国領だと主張している(中国では蘇岩礁)。中国は、かつての高句麗は韓国史ではなく中国史の一部であるとして譲らない。また、韓国のために北朝鮮を犠牲にすることもあり得ない。

 わが国としてはどうするべきか?
 韓国人の反日傾向は、伝統的な日本に対する「怨」に加え長年の反日教育もあり、根深い。反日朴政権はあと4年近く継続するので、憂鬱である。
 第1に、日本は右顧左眄せずに毅然としていればよい。ただし、韓国の国際的反日キャンペーンにはきっちりと反駁するべきだ。わが国の国際的な信用や高い評価は、韓国の自己中心的な主張や事実を曲げたキャンペーンで揺らぐようなものではないが、虚偽や誇張に反駁するとともに、戦後、一貫して平和的で国際貢献重視できたのは日本であることをもっとPRするべきである。
 第2に、意図的に反韓政策をとる必要はないが、過去の対韓外交において往々にして見られた特別な配慮はしないことだ。是々非々で行くべきだ。
 第3に、できるだけ韓国人が日本を訪れるようにすることだ。反日教育に染まった韓国人の中には直接日本で見聞きして認識を改める者も多い。
 第4に、わが国の教育において、近代史をもっと重視し学ばせる必要がある。反省するところは反省する一方、個々の日本人も中韓のいわれなき批判に対しては反駁できなければならない。
 最後に、わが国は強くならなければならない。強い経済、国民からの支持率の高い政権、日米同盟の強化を含む強い安全保障体制が3本の柱だ。国民は厳しい国際環境に直面していることを自覚し、国の安全と名誉を守るために奮起するべきだ。


 [「自警」2014年4月号「日本から見た世界 世界から見た日本 第37話」より転載]

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平林 博

平林 博   日本国際フォーラム副理事長

 1940年東京生まれ。東京大学卒業後、1963年外務省入省。1991年から2007年までに、在米国日本大使館経済公使、次いで同大使館特命全権公使、外務省経済協力局長、総理官邸の内閣外政審議室長、駐インド特命全権大使、駐フランス特命全権大使、査察大使をそれぞれ歴任。
現在、グローバル・フォーラム有識者世話人、東アジア共同体評議会議長、日印協会理事長等を兼任。