国際政経懇話会

第282回国際政経懇話会メモ
「安倍長期政権の行方」

2016年4月12日
公益財団法人 日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会

第282回国際政経懇話会は、歳川隆雄・「インサイドライン」編集長を講師にお迎えし、「安倍長期政権の行方」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、オフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

1.日 時:2016年4月12日(火)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室(チュリス赤坂8階803号室)
3.テーマ:「安倍長期政権の行方」
4.講 師:歳川隆雄・「インサイドライン」編集長
5.出席者:22名
6.歳川隆雄・「インサイドライン」編集長の講話概要

(1)オバマ大統領による広島訪問の可能性

 昨日までのG7外相会合、日米間の事前交渉で難航していたテーマは、原爆資料館訪問にあたっての映像メディアの同行を許可するかであった。米国側は、カメラマンの同行を認めなかった。岸田外相は、ケリー国務長官と共に原爆資料館に入って、その姿をメディアを通じて世界に発信したかった。しかし、米国側によってそれは不許可になってしまい、取材は認められなかった。そのケリー国務長官による原爆資料館訪問前、米国側の先遣隊が資料館内部へ入ったが、その先遣隊の中にはシークレットサービスがいた。これは、伊勢志摩サミット後、オバマ大統領による広島訪問が検討されていることを示唆している。各国首脳は中部国際空港から伊勢志摩サミット会場へ入るだろうが、サミット終了後、オバマ大統領はヘリで岩国の米軍基地へ入り、そこから陸路で広島入りを果たすのではないか。ケリー氏は帰国後、オバマ大統領に広島訪問を進言すると思う。キューバとの国交回復および史上初の被爆(被曝)地である広島訪問を達成できれば、オバマ大統領はそれらを任期8年間のレガシーとすることができる。

(2)対露交渉

 安倍首相は対露交渉進展に強い思いがあり、1956年の日ソ共同宣言から60年、安倍首相の父、安倍晋太郎氏没後25年の今年、この節目の年に、日露平和条約締結と北方領土返還の進展を目指している。5月6日、ソチに一泊して、大統領別邸でプーチン大統領と安倍首相は会談する。安倍首相は、プーチン大統領の今秋の、日本公式訪問を要請する。戦後70年経っても日露で真の国交正常化が出来ていないので、安倍首相は「断固交渉を進める」とオバマ大統領に伝えている。

(3)衆参同日選挙の可能性

 今年7月、衆参同日選挙は行われるのか?安倍側近の本音は、参院選単独である。自公合せて320議席あるのに、衆参同日選挙を行うなど、リスクが高過ぎる。中曽根元首相は1986年、東京サミット後、衆参同日選挙を行って自民を大勝させたが、当時と今とでは状況が違う。中曽根元首相は幹事長だった金丸氏および蔵相だった竹下氏を手練手管で使い、衆参同日選挙を勝ち抜いた。しかし、菅・現官房長官はこの衆参同日選挙に慎重である。菅氏だけでなく、閣内にも慎重な空気が漂っている。安倍首相自身が突出して党を引張らなければならないのが、当時との状況の違いである。しかし、2017年4月からの消費税増税再延期および改憲に必要な2/3の議席確保のため、安倍首相は「衆参同日選挙」に向かうのではないか。また、衆参同日選挙となるかどうかは別として、共産の志位委員長が党の方向転換を行い、野党は選挙戦を共闘することとなった。参院1人区32のうちで、9議席は野党統一候補が優勢である。そして、自民党は1人区で20~21議席、比例で18議席、複数区でも15~18議席は獲得できる。自民は50議席改選だが、7議席増えれば単独過半数に達する。4月24日、北海道の補選が行われるが、自民は厳しい選挙戦となっている。民進がNPO代表の女性を推し、自民は町村氏の娘婿を推しているが、4~5ポイント差で民進候補に逆転されている。安倍首相も北海道入りして応援演説を行うが、それでも接戦になるだろう。自民党内では、この補選で負けた場合の戦犯を誰にするかで既に揉めている。なお、この補選の勝敗に関らず、安倍首相は衆参同日選挙を決断する。それは、橋下徹・元大阪市長の存在が大きい。橋下氏には、大阪府知事および市長同日選挙を戦って勝った実績がある。昨年末、この橋下氏との会談で、安倍首相は決心した。今回の選挙後、「自公+おおさか維新」の連立政権が成立するのではないか。菅官房長官は、この三党連立政権を構想している。橋下氏に出馬してもらい、彼の力を借りようとしている。菅氏は、橋下氏に「出馬するなら『行革担当大臣』のポストを用意」しようとまでしていた。しかし、橋下氏はテレビ番組で「出馬しない」と公言している。

(4)安倍政権の超長期化の可能性

 現実主義者になった筈の安倍首相だが、最近になって欲、野心が出てきたのではないか。それは、改憲達成願望だけではない。安倍首相は、2018年9月に自民総裁の任期が切れるが、衆参同日選挙で勝てば、褒美として総裁任期を延長させてもらえるかもしれない。そうすれば、2020年東京五輪まで首相在任が可能になる。それが実現すれば、吉田茂元首相の第5次内閣を抜くし、更に’21年9月まで維持できれば、戦後最長の佐藤栄作元首相の在任記録を抜いて、安倍首相が戦後最長記録を更新する。安倍首相は、その野心を持つようになり始めているのではないか。現在、菅官房長官でさえ、安倍首相の前では直立不動だ。現在の安倍首相に健康問題は無い。安倍首相が超長期政権を目指すようになると、何が起るのかは予測不能である。

(文責、在事務局)