国際政経懇話会

第264回国際政経懇話会メモ
「法務行政における国際貢献」

 第264回国際政経懇話会は、谷垣禎一法務大臣を講師にお迎えし、「法務行政における国際貢献」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2014年4月14日(月)正午より午後2時まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室(チュリス赤坂8階803号室)
3.テーマ:「法務行政における国際貢献」
4.講 師:谷垣 禎一 法務大臣
5.出席者:26名

6.講師講話概要

 谷垣禎一法務大臣の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、オフレコを前提としている当懇話会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

日本国法務省による開発途上国への法制度整備支援

 日本国法務省は、開発途上国における法の支配が強化されるよう、立法支援等の法制度整備支援を実施している。1994年から外務省及びJICAと連携し、ODAの一環としてアジア諸国(とくにASEAN諸国)に対し、法制度整備支援を行っている。支援体制をより充実させる為,2001年には国際協力部を法務省法務総合研究所内に作った。支援に当たっては,対象国の開発途上国の主体性、自主性を尊重し、相手国に対し、テイラーメイドでニーズに合せて行っている。法制度はその国の歴史、文化に適合したものでなければならないし、我が国はボアソナード以来、西洋の法制度を導入するのに苦労した経験があるので、その経験を途上国への支援の際に活かしている。途上国での法制度整備支援は、包括的で中長期的な視点で行っており、相手国の人材育成、法制度の執行・運用のための体制整備をも含めて考えている。法制度整備支援の具体的活動として、日本国法務省は途上国の立法関係者、裁判官、検察官、弁護士等に来日して頂いて日本国内で研修を受けて頂き、又、逆に日本の法律実務家、大学教授等を現地へ講師セミナーとして派遣したり、日本国内に作業部会を作って途上国へのアドヴァイスを行ったり、更には1年間以上滞在する専門家(検察官、裁判官等)を2名ずつ途上国へ派遣して常駐させる等、積極的な活動を行っている。

東南アジアでの法制度整備支援

 日本が初めて法制度整備支援を行った国はヴェトナムである。1994年以降、ドイモイ政策下のヴェトナムへ法制度整備支援を行っており、各種法令の起草支援、裁判所等司法機関の実務改善支援も行っている。日本の大学だと名古屋大学もこれに力を入れている。カンボジアはヴェトナム同様、日本が法制度整備支援に力を入れている国である。カンボジアでは1970年代のポル・ポト時代に多くの法律が廃止され、法律家の殆どが殺され、数人しか生き残っていなかったと言われている。そこで、日本国法務省は1996年から現地のカンボジア人と協議しながら、日本法をモデルとしつつ、カンボジアの社会、文化に沿うように新たに法を作るための作業を行ってきた。その結果、カンボジアでも2006年に民事訴訟法、2007年に民法を成立させることができた。ミャンマーは2011年3月に23年間続いた軍事政権から民政へ移行した。昨年1月、麻生副総理が訪問、そして安倍総理が日本の総理としては36年振りの訪問を果した。昨年11月からはJICAと共に、ミャンマー法整備支援プロジェクトをスタートさせた。

UNAFEI(国連アジア極東犯罪防止研修所)

 UNAFEIは国連と日本国政府との協定に基づいて設立された「アジア地域を中心とした諸国の犯罪防止と犯罪者処遇に関する刑事司法の運営改善を目的とした研修所」であり、日本国法務省が運営している。UNAFEIは近年、開発途上国で発生する汚職への対策に力を入れており、途上国が汚職を防止し、また、汚職に対し、法に基づいて正しく適切な対応をとれるようになるよう、協力に努めている。この研修所では、アフリカやかつてのソ連圏である中央アジア、東欧を含む135ヶ国から約4,900名の研修参加者を受入れている。参加者は研修修了後、各国の刑事司法の要職に就いている。

タイ王国の少年院建設

 1991年頃から日本国法務省はタイに対し、少年院等の改善整備支援を行っている。この頃のタイは急激な経済発展に伴い、バンコク等の大都市で少年による非行が増えていた。タイの多くの少年院は「閉じ込める場所」としてしか機能していなかった為、非行少年を教育・訓練する為の矯正施設を新たに作る必要があった。しかし、日本国外務省にも当時は「橋や地下鉄ならともかく、少年院を造っても感謝されないだろう」という意見があったかもしれないが、タイ側の熱意が日本側を動かし、少年院建設が実現した。この少年院建設計画は、タイ王室の関心も得られて、シリントーン王女が開院式にご出席なさり、王女ご自身のお名前を冠してシリントーン少年院とご命名して下さった。シリントーン少年院は、日本国法務省が基本設計を行い、(現地タイの気候風土に適合させて)高床式とし、尚且つ教官が収監されている少年達の動きを把握し易くする為、また、少年も教官に相談しやすいように、死角を無くして壁も減らし、柱主体で建設された。その成果か、他のタイ国内の少年院の出所後の再犯率が20%なのに対し、シリントーン少年院のそれはたったの5%である。ちなみに、シリントーン少年院出所後の少年の62%が就職し、15%が高校進学を果しており、タイ国内では模範少年院となっている。そして、タイ国内ではシリントーン少年院を模範として新たに矯正施設(刑務所)が建設されてゆくようになった。現在のタイの矯正施設は、建物も施設内部の処遇も先進国のそれに相応しい水準に達しつつある。タイ王国からは今も矯正施設建設等の技術支援の要請がある。それは、日本から学んだ技術を活かして、今度は日本と一緒に、アジア(特にタイ周辺諸国)へ技術支援を行っていきたいという内容の要請である。タイへの政府開発援助は終了したが、これまでの交流を活かさないのは勿体無いので、アジア矯正建築実務者会議を行い、アジア諸国からの技術支援要請に応えてゆくこととなった。

法曹関係者育成

 1999年、司法制度改革審議会が発足し、2001年にその意見書が取り纏められた。意見書の趣旨を生かし、世界規模での法の支配の発展を牽引する為に語学力、交渉力、調整力等、幅広い能力を具えた法曹有資格者育成に努めたい。


(文責、在事務局)