-政治システムとしてのアジア-

まえがき

 冷戦終焉後の世界は、グローバリゼーションの流れの中で、グローバリゼーションのゆえに同時に地域主義への傾斜をも強めてきたが、東アジアだけはそのような世界的な地域主義化の流れのバスに乗り遅れてきた。それも地域においてリーダーシップを取るべきであった日本のリーダーシップ不在によるところが大きい。しかし、ここへ来て、とくに1997年のアジア経済危機以後、急速に東アジアにおいて地域協力の深化を模索する動きが顕在化してきた。

 当フォーラムは、このような東アジア情勢の進展を背景として、本年度から3年間にわたり大型研究プロジェクト「アジアとの対話:アジアの中の日本とその役割」を実施することとなった。本年度においては「政治システムとしてのアジア」に、次来年度においては「経済システムとしてのアジア」に、それぞれ焦点を絞るが、いずれの場合においても、まず日本側からアジア各国にその思いを発信し、それに対してアジア各国から返信を得るという手法で、つまり「アジアとの対話」という手法で、この研究を進めてゆきたいと考えている。

 第1年度である本年度においては、白石隆教授をリーダーとする日本側コア研究会による「研究会合」「アジア各地へのフィールドトリップ」の後、コア研究会提言「日本からの発信:政治システムとしてのアジア」が作成、発表された。2003年1月27日に東京で国際ワークショップ「アジアとの対話:アジアの中の日本とその役割—政治システムとしてのアジア—」が開催されたのは、このような「アジアとの対話」を総括するためであって、このワークショップには、中国から張蘊嶺社会科学院アジア太平洋研究所所長、韓国から金宇祥延世大学教授、そしてアセアンを代表する意味でタイからパニタン・ワッタナヤゴーン・チュラロンコン大学教授がそれぞれ参加してくださった。

 
当日は、コア研究会提言「日本からの発信:政治システムとしてのアジア」に対し、3人のアジアからのパネリストたちよりいわば「アジアからの返信」が発表され、その後当フォーラム・メンバーを中心とする109名の会場の参加者との間で率直な意見交換が行われた。本報告書は、このような国際ワークショップの成果をその速記録の形でとりまとめ、当フォーラム会員を中心とする関係各位のご参考に資するため、印刷に付したものである。なお、本報告書の内容は、当フォーラムのホームページ(http://www.jfir.or.jp)上でもその全文を公開している。

 
なお、本プロジェクトの実施にあたっては、読売新聞社の協賛と日本財団の助成を受けた。この機会を借りて改めて感謝の意を表したい。

2003年3月1日

財団法人日本国際フォーラム
理事長兼所長   伊藤憲一

第Ⅰセッションで基調報告する添谷芳秀メンバー(右より2人目)
第Ⅲセッションで基調報告する白石孝リーダー(右より2人目)
白熱した議論に耳をかたむける会場の参加者たち