外交円卓懇談会

第95回外交円卓懇談会
「日韓関係の現状をどう考えるか」(メモ)

2013年12月11日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第95回外交円卓懇談会は、李元徳(LEE Wondeog)韓国国民大学日本学研究所長・教授を講師に迎え、「日韓関係の現状をどう考えるか」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2013年12月11日(水)午後3時00分より午後4時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日韓関係の現状をどう考えるか」
4.報告者:李元徳(LEE Wondeog)韓国国民大学日本学研究所長・教授
5.出席者:29名

6.報告者講話概要

 李元徳 韓国国民大学日本学研究所長・教授の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

日韓関係50年の総括

 日韓関係は、きたる2015年に国交正常化50周年を迎えることになるが、その約50年間におよぶ歴史の中で、現在は最も厳しい状況にあるといえる。日韓関係を分析するにあたり、巷では色々と論評されているが、2国間のバイラテラルな視点からではなく、国際政治上の構造的変化の視点から分析することが重要である。その視点からみると、この約50年の日韓関係は、(イ)西側陣営同士として両国の間に求心力が働いていた「冷戦期」、(ロ)ソ連崩壊によりその求心力が弱体化した「脱冷戦期」、(ロ)中国の急成長と日本の国力の相対的な低下ならびに韓国のミドルパワーとしての台頭、というパワー・トランジションが起こっている現在、と3つの構造的な変革期を経験している。国際政治理論の上では、こうしたパワー・トランジションは戦争や国際システムの変化などを引き起こすといわれているが、まさに現在の日韓関係は、この劇的な変遷の中にあるといえよう。

日韓関係における構造的変化

  そのパワー・トランジションによって、両国関係を隔てる複数の事案が浮上し、それが両国の関係悪化の原因になっている。その一つは、地政学的要因による中国を巡る両国のギャップの拡大である。対外経済依存度が7割と高い韓国にとっては、経済的にも、また致命的に重要な対北朝鮮外交を進めるにあたっても、中国とは大変重要な関係を保つ必要がある。他方、海洋国家たる日本にとっては、経済的にも地政学的にも、大陸国家中国とは距離を置けることに加え、尖閣問題で反中感情が高まった。そのギャップが、両国が協力して外交を進めることを阻害している。また、両国世論において、相手国への認識の変化が起こっていることである。韓国では、80年代からの民主化によってそれまで潜伏していたナショナリズムが噴き出し、日本へ強固な姿勢をとるよう政府に圧力をかけている。日本では、リベラル勢力が高齢化によって弱体化し、代わりに戦争の贖罪意識が薄い世代が政治の中心となることで、政府に右傾化した外交政策をとるように圧力をかけている。また、日韓間の官民の公式および非公式の対話チャンネルが弱退化して、両国間の危機を未然に緩和する措置がとれなくなっており、こうした変化が、友好的な両国関係を築くことを阻んでいるのである。

安倍・朴政権下における日韓関係の現状

 このため、両国の政権は、相手国に対してより厳しい措置をとるようになってきている。李明博政権が、独島訪問といったパンドラの箱を開けてしまった一方で、野田政権は、その反応として通貨SWAPの再検討など、「政経分離」という東アジアにあった暗黙の規範を覆す行為をとってしまった。安倍、朴の新政権になっても、両国関係は改善しないばかりか、韓国からすると安倍首相の「侵略の定義」発言や「河野談話撤回」の可能性の示唆、日本からすると朴大統領の世界各国で行う日本批判、などの行為によって、両国関係は更なる悪化にみまわれている。また、両国のマスコミの報道が、「右傾化する日本」、「中国化する韓国」というイメージを拡散し、それに拍車をかけている。

日韓関係の改善に向けて

 しかし、日韓関係の改善の道がないわけではない。冷静に両国の実態をみると、現状の日韓関係の悪化は、両国民の間の相互認識不足が多大に影響しており、日韓の首脳会談を行い、新たな合意をすることができれば、関係改善の可能性は十分にあるとみている。いきなり二国間では難しいことから、まず日中韓サミットを次回のホスト国である韓国が行ってはどうか。日韓首脳会談で合意すべき内容としては、(イ)歴史の再確認、(ロ)徴用工、慰安婦問題の解決、(ハ)両国の未来に向けた協力、の3点が挙げられる。(イ)歴史の再確認については、両首脳で改めて「河野談話」などを踏襲し、新たなパートナーシップ宣言を行うというものである。日本にとっては、これまで十分に韓国に謝罪を表明し、今や日本国内に「謝罪疲れ」ともいうべき心情が蔓延していることは認識している。しかし、韓国にとってみれば、少しでも日本国内で「河野談話」撤回の動きなどがあると、日本の歴史認識が修正されたのではないとの強い疑いの心情が蔓延してしまうのである。脱植民国家韓国では、歴史認識は国家のアイデンティティに関わる問題である。次に、(ロ)徴用工、慰安婦問題については、和解のための日韓のトラック1.5による専門家委員会を設置してその解決策を探るべきであり、首脳間でそのための合意をすべきである。なお、徴用工、慰安婦問題については、両者を分けて考える必要がある。徴用工については、1965年の日韓基本条約と一連の協定によって、韓国は日本政府に対する外交的な請求権を放棄しており、その点は2005年に盧武鉉政権が行った官民合同の委員会でも、改めて確認されている。そのため、今後大法院がどのような判決を下そうとも、韓国政府として、これ以上日本に徴用工問題で請求することは難しく、また実際にそのような行為をとることはないだろう。ただ、徴用工であった韓国人個人としての請求権は消滅したわけではないため、韓国政府は、それらの個人に対して、政府の責任として補償措置を今後もとる必要がある。つまり、徴用工については韓国政府の問題である。他方、慰安婦については、個人の請求権というよりも、人権の問題であり、日本側が決着済みという主張をするのであれば、韓国としては到底受け入れられないというのが実情である。また、紛争下の女性というテーマは、欧米ではグローバル・イシューとなっている。最後に(ハ)両国の未来に向けた協力については、今後日韓両国は米中に挟まれている状況になる可能性があり、そのため日韓は、歴史問題を越え、歴史的和解をつうじて、両国の経済統合を進め、東アジア地域において自由、平和、繁栄を生み出すスペースを創設しいくことに尽力すべきである。日韓は、閉ざされた関係としての視点ではなく、地域統合が進展しているというグローバルな視点から、日韓が協働していく未来志向の協力関係を、両首脳より打ち出していくことが重要である。

 

(文責、在事務局)