外交円卓懇談会

第83回外交円卓懇談会
「米国から見た中国の東方政策」(メモ)

2012年10月24日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第83回外交円卓懇談会は、エドワード・ルトワック米戦略国際問題研究所上席研究員を報告者に迎え、「米国から見た中国の東方政策」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2012年10月24日(木)午後4時00分より午後5時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「米国から見た中国の東方政策」
4.報告者:エドワード・ルトワック  米戦略国際問題研究所上席研究員
5.出席者:19名

6.報告者講話概要

 エドワード・ルトワック米戦略国際問題研究所上席研究員の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

「都合の良い敵国」としての日本

 近年、中国の軍事大国化が国際政治上に大きな影響を与えていることは確かであるが、中国は同時に、幾つもの深刻な国内問題を抱えており、内政は非常に脆弱である。ここで特に注目すべきことは、多くの中国人自身が共産党による「政治の腐敗」に気付き、その「支配の正統性」を疑い始めていることである。こうした中、中国共産党政権は、国内からの不満の矛先を逸らすために「都合の良い敵国(good enemy)」を必要としているが、その最適格国が日本である。これは、中国にとっての日本が、経済的にも、軍事的にも脅威でないばかりか、日本人には「歴史の負い目」があり、「敵国」とする絶好の口実があるからである。他の候補国としては、インドや米国も挙げられるが、両国はともに中国にとって「都合の悪い敵国」である。インドとは国境紛争を抱えているが、中国人から見てインド人は「貧しくて、汚い」。それは、敵国人のイメージに相応しくない。また、米国人は、中国人からみると、「強大で、好戦的な民族」であり、敵国とするのは危険な相手である。さらに言えば、現在の中国のエリート階級はそのほとんどが、米国内に親族を留学、移住させ、あるいは財産を投資しており、そのような米国との関係を悪化させることは、かれらにとって都合の悪いことだからである。

破綻している中国の外交戦略

 中国人の多くは、自分たちのことを、「孫子の末裔として戦略的思考に優れており、外国人をコントロールする術を熟知している」と思い込んでいるようだが、じつは、それは根拠のない自惚れである。実際には、中国人は、中華思想の囚われ人であり、四囲の近隣諸国に対しては、「中国は大国であるが、お前たちは小国である。だから、お前たちは中国の言うことを聞けばよいのだ」という、高圧的な姿勢をとることに終始している。その結果、現実には、中国の外交政策は戦略的に破綻している。直近の例を挙げれば、ミャンマーの中国離れがその好例だ。この背景としては「戦略思想への過信」、「外国に対する無理解」、「政策決定過程の複雑さ」などが指摘できる。他にも、現在の良好な米越関係や米比関係を例として挙げることができる。それは、南シナ海の領有権問題等で中国がベトナムやフィリピンに対して一方的、高圧的な態度を取り続けてくれた結果である、と考えられるからだ。

米国および日本の対中外交

 今後の米中関係を見通す上で注目すべきことは、現在、米国を中心として、「非公式的な多国間安全保障組織(unofficial multinational security network)」が、中国を取り囲むように形成されつつあることである。このネットワークにはシンガポール、オーストラリア、フィリピンなどが含まれているが、これらの国々が今後も米国を支持し続ける限り、中国に対するこの地域における米国の「力の優位」は変わらないであろう。一方、日本の将来的な選択肢は、中国と米国の動向によって大きく左右される。例えば、中国が攻撃的姿勢を取り続けるなかで米国が弱体化した場合、日本は中国からのより深刻な圧力を受けるだろう。他方、中国が攻撃的ではなく、2008年当時に掲げたような「平和的台頭(peaceful rising)」に復帰すれば、日本は米国との同盟を維持するかどうかという選択を迫られるかもしれない。最後に、中国国内の権力闘争の行方は、米国および日本の対中外交に大きな影響を与えるだろう。11月の中国共産党大会で新しい人事が決まり、中国国内の権力闘争が落ち着けば、現在の中国による拡張主義的対外政策は一段落し、尖閣諸島に対する強硬姿勢も見直される可能性がある。外部に「敵」を求める必要性は弱まるからだ。付言すれば、尖閣諸島は中国にとって軍事戦略的にはデッドエンドの攻撃目標だ。奪取しても、その先の展望が描けないだけでなく、日米による軍事的反撃に対して無力である。

(文責、在事務局)