外交円卓懇談会

第74回外交円卓懇談会
「日中関係の現状と今後の展望」(メモ)

2011年10月13日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第74回外交円卓懇談会は、程永華駐日中国大使を報告者に迎え、「日中関係の現状と今後の展望」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2011年10月13日(木)午後3時15分より午後4時40分まで
2.場 所:国際文化会館・講堂
3.テーマ:「日中関係の現状と今後の展望」
4.報告者:程永華  駐日中国大使
5.出席者:60名

6.報告者講話概要

 程永華駐日中国大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

白書が示す「中国の平和的発展」

 本日のテーマは「日中関係の現状と今後の展望」であるが、まもなく中日国交正常化40周年を迎えるこの機会に、特に「中国の発展とアジアにおける中日の協力」について、相互理解を深めることができれば幸いである。
 2011年9月6日、中国国務院新聞弁公室より「2011年版 中国の平和的発展」白書が公刊された。同白書は、国際社会における責任と役割が大きくなった中国が、今後どのような発展の道を歩み、それは国際社会にとってどのような意味を持つのか、という視点から、中国の外交政策について総括的に述べたものである。上記の点について、中国政府はかねてから対外的にメッセージを発信している。
 中国は1978年の改革開放以来、GDP成長率年9%以上の高成長を続けており、2010年にはそのGDPは5.88兆ドルに達し、世界GDPに占める割合は9.3%となった。同年の中国の貿易総額は2.97兆ドルで、輸出額では世界1位、輸入額では世界第2位となった。こうした驚異的な経済成長の要因は、鄧小平氏の掲げた「石を叩いて川を渡る(模着石頭過河)」という考えの下、「中国の特色ある社会主義」という独自路線を進めたことにあろう。そしてこの路線が今日の「中国の平和的発展の道」とつながる。「中国の平和的発展の道」は、世界の平和を守ることで自国を発展させ、また自国を発展させることで世界の平和を守る道であり、各国との互恵・ウィンウィンの関係を共同で発展させ、推進し、国際社会における恒久的平和と、ともに繁栄する調和のとれた世界の建設を目指す道である。中国が目指すこのような平和的発展の道は、科学的発展、自主的発展、開放的発展、平和的発展、協力的発展、共同の発展という6つの特徴から成っている。
 中国が上記のような外交方針をとるようになったのは、近代の西欧列強が、覇権を求めて、海外に進出した後、やがて衰退していったという事実を、反面教師にしたからである。また、中国では「和を尊ぶ」という文化的・思想的な伝統があることもその一因だと考えられる。中国は、自身のたゆまぬ努力によって、世界にとってプラスの役割を果たすことを実証していかねばならない。国際社会には中国の発展を善意を持って理解し、支持することを望む。

アジア地域協力における中国の方針

 近年、リーマン・ショックに端を発する金融危機、欧州の債務危機、中東民主化などにより、世界の経済・社会情勢が不安定化する中で、東アジアは比較的安定し、経済成長を進めている。過去30年を振り返ると、アジア、特に東アジア地域では世界の中でもスピードの速い経済成長を遂げており、今後の見通しも比較的明るい。2010年における東アジア地域のGDP成長率は7%となり、世界GDPの28.3%を占めている。東アジア地域の発展は、世界経済の持続的な成長に大きく貢献している。制度面から見ると、東アジア地域ではASEAN+3を重要なチャネルとしながら、ASEAN+1といったASEANと中日韓各国との協力体制や、中日韓サミットなど、さまざまな協力体制が形成されている。また、貿易面ではASEANと中日韓各国とのFTAが締結され、金融面ではチェンマイ・イニシアティブによる2国間の金融協力制度が多国間制度に移行するなど、経済協力が進んでいる。東アジアでは、経済協力によって各国間の利益の結びつきを強化しただけではなく、政治的な相互信頼も強まり、地域協力は、経済から徐々に政治、安全保障の協力に進みつつある。
 他方で、東アジア地域独自の問題も抱えている。北米や欧州に比べ、東アジア諸国は社会体制、文化的・歴史的背景、経済発展の度合いが異なるため、その地域協力のあり方は非常に多様化したものとなっている。このような背景を踏まえ、中国の東アジア地域での協力は、(イ)成果が見えやすい経済協力から着手し、少しずつ政治・安全保障分野にシフトしていく、(ロ)東アジア地域内の協力強化だけでなく、他の地域の国々とも協力関係づくりを進める、(ハ)中小国の利益を尊重・配慮し、ASEAN+3というチャネルをつうじて、中日韓がそれぞれ調整役としての役割を果たしていく、(ニ)歴史、文化、経済発展の度合いが多種多様な東アジア地域では、独自の新たな地域秩序を模索していく、という4つの方針で進めていく。

アジア地域協力における中国と日本の役割

 中国と日本は、東アジア地域において両国併せてGDPにして8割、人口では7割を占める大国であり、中日の関係は東アジアの地域協力において大きな影響を及ぼす。東アジアにおける中日の役割を議論する際、両国の主導権争いになるのではないかという懸念が聞かれるが、それは誤解である。中日両国は、双方にとって利益のある協力をして、東アジア地域協力の推進に貢献できる。東アジア地域において、中日は相互補完の関係にある。中国が巨大な市場、豊かな労働力、途上国のニーズに合った科学技術、産業開発の水準をもつ一方で、日本は高い技術力と資金力、産業における優れた管理・運営ノウハウを有している。中日両国は、それぞれの長所を生かし、東アジアの発展を促していくことができる。
 中日両国が東アジアの地域協力に貢献できる分野には、まず防災協力を挙げることができる。中日両国は、既に四川大地震、東日本大震災などで協力の経験があり、今後も自然災害の多いアジア地域で、地域的な防災・減災を推進できるであろう。また、中日両国は、その高い貯蓄率と外貨準備高という強みを生かし、東アジア地域での一層の金融協力も可能である。さらに、中日2国間のFTA締結を目指すことは、中日間の経済・貿易協力を推進するだけでなく、東アジア地域全体の自由貿易制度づくりにも貢献するだろう。最後に、環境・省エネ分野における協力が挙げられる。中国は第12次5カ年計画で環境保護・省エネを重要な柱に据えており、日本は両分野で優れた技術や経験を有している。両国は協力して、アジア地域における環境・省エネ対策を進めて行くべきだろう。

(文責、在事務局)