外交円卓懇談会

第71回外交円卓懇談会
「テロリズムの新局面」(メモ)

2011年9月16日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第71回外交円卓懇談会は、デニス・シュオルター・コロラド大学教授を報告者に迎え、「テロリズムの新局面」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2011年9月16日(金)午後3時00分より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「テロリズムの新局面」
4.報告者:デニス・シュオルター  コロラド大学教授
5.出席者:17名

6.報告者講話概要

 デニス・シュオルター・コロラド大学教授の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

現代のテロリズムの3つの特徴

 現代のテロリズムは、非対称的な暴力の行使と定義づけられるが、その非対称性は「正統性」、「パワー」、「標的」の3つに関する特徴を有する。すなわち、現代のテロリズムは、選挙などの合法的手段を通じた正統性の獲得を目的とせず、テロリストと対抗勢力の間には軍事力をはじめとするパワーに顕著な不均衡があり、そして攻撃対象となる標的は軍事基地や兵舎でなく、学校や役所などの非軍事施設である。

現代のテロリズムの形態の進化

 現代のテロリズムの第一の形態は、第二次世界大戦の最中にナチス・ドイツの占領地域などで見られた、占領者の抑圧や弾圧に対するレジスタンス活動で、「生き残り」を目的とするテロリズムである。第二の形態は、第二次世界大戦後のアフリカ諸国などにおいて英仏などの植民地支配者を「追放」することを目的とした反帝国主義テロリズムである。ケニアのマウマウ団の乱などがその例である。第三の形態は、先進諸国において過激な政治的「革命」を標榜したテロリズムである。政治的不満を抱いた社会的エリート層によって引き起こされるが、社会の支持を得られず、失敗に終わる傾向がある。たとえば、日本の連合赤軍の他、イタリア、ドイツ、アルゼンチンなどの例がある。第四の形態は、国内政治の枠組みのなかで戦われる点で、第二の形態と異なるが、国内の少数派であるヨーロッパ系移民の「排除」を目的とするテロリズムである。甚大な暴力により多数の犠牲者を出して長期化するものの、最終的には双方の交渉と妥協によって解決に至るケースが多い。例としては、南アフリカ、アルジェリア、北アイルランドなどがある。

新たなテロリズムの形態としての「ジハード」

 オサマ・ビン・ラディンとその率いるアルカイダのいわゆる「ジハード」は、もっとも新しいテロリズムとして、その第五の形態に数えることができる。一種の信仰復興論者による「宗教」上の目的をもったテロリズムであり、主としてイスラム社会の物質的・表面的な西洋化に対するイスラムの側からの国家主義的・権威主義的な反発である。9・11同時テロ事件以降、様々なテロ事件が発生しているが、西洋社会は「ジハード」に屈することなく、これまでの政治的テロとは異なる、新たな宗教的テロとしての「ジハード」への認識を高めている。

中東情勢から見えるテロリズムの新局面

 イスラエルとパレスチナは国境問題に関する交渉の機会を設けてきたが、交渉の背後にある宗教的文脈を無視し、軍事的・外交的文脈でのみ交渉してきたため、交渉は誤解と不信を生じさせる結果となっている。現在、両者の国境問題は交渉不可能な状況にあり、今後の進展は困難であると思われる。中東では、ハマス、ヒズボラなどのテロ活動に従事する組織が政府と協働関係にある事例が見られる。また「アラブの春」と称されるエジプトとリビアでの民主主義運動も、やがて幻想に終わり、アルカイダもしくは類似組織が、設立の途上にある両国の新政府に重大な影響力を行使する可能性も決して無視できない。このように、中東の国家システムにおいては、伝統的な軍事・外交の政治体制に、テロリズムの影響力がプラスされて機能していることを考慮に入れるべきであろう。

(文責、在事務局)