外交円卓懇談会

第70回外交円卓懇談会
「危機後の東アジア経済秩序における中国と日本」(メモ)

2011年7月6日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第70回外交円卓懇談会は、ジョン・ウォン・シンガポール国立大学東アジア研究所前所長を報告者に迎え、「危機後の東アジア経済秩序における中国と日本」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2011年7月6日(水)午後3時00分より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「危機後の東アジア経済秩序における中国と日本」
4.報告者:ジョン・ウォン   シンガポール国立大学東アジア研究所前所長
5.出席者:17名

6.報告者講話概要

 ジョン・ウォン・シンガポール国立大学東アジア研究所前所長の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

東アジア成長の二つの波

 東アジアはASEAN10か国と日中韓の計13か国、あるいは香港・台湾・マカオを加えた計16国・地域と定義することができる。中長期にわたって高成長を達成してきた東アジア諸国・地域には、高い貯蓄率と投資率、輸出主導の成長戦略、工業化初期における政府の積極的介入など、幾つかの共通項が見られる。この東アジア成長モデルの下、東アジアはそれぞれ日本と中国に牽引される二度の雁行型の高成長を実現してきた。1950年代から1970年代初期にかけての日本の高成長は、第一の波(EA-I)としてNIEs 経済に恩恵をもたらし、1980年代から現在まで続く中国の高成長は、第二の波(EA-II)としてASEAN諸国の成長を牽引してきた。1985年にEA-I が全世界GDPの15.2%を占めたのに対し、2010年にEA-IIは全世界GDPの23.4%を占め、アメリカの23.5%に匹敵する。今日の中国で起こっている急速かつ巨大な規模の経済成長は、経済史・人類史上において比類を見ないものである。

EA-I とEA-II の制度的性質の違い

 EA-I においては、日本はアメリカの安全保障体制の傘に収まっていたため、日本の台頭が東アジア諸国に政治的脅威を与えることはなく、東アジアには安定的秩序が維持されていた。しかしEA-II においては、アメリカの影響力が相対的に低下するなかで、中国の米国に対する対峙姿勢、近隣諸国に対する強硬姿勢、軍事力の増強、共産党による独裁体制などによって、東アジアに緊張と不安が生じている。このようにEA-II の東アジアは「熱した経済と冷えた政治」のジレンマに直面しており、東アジア秩序の今後の様相は多くの不確定要素を抱えた状態にある。

EA-II の成長持続性

 EA-II の高成長、すなわち中国の高成長は今後も持続するのだろうか。30年間にわたって約10%の成長を記録してきた中国が今後も同レベルの成長率を維持すると考えるのは現実的ではない。しかし中国は国内に豊富な資本、労働力、生産性、高い需要を有しており、今後5年間8-9%、その後5年間7-8%の成長を維持することは考えられる。そして遅くとも15年後には、名目GDPでアメリカを追い越すと見込まれる。EA-II 全体では、NIEs の成熟やインドネシア、マレーシア、タイ、ヴェトナムなど新興国の高成長を経て、5年後にはアメリカとEUを凌ぐ世界最大の経済地域になると予測される。

今後の東アジア地域の秩序

 東アジア共同体の形態としては、経済共同体、安全保障共同体、社会文化共同体の三つの可能性がある。経済的な相互依存関係にある現在の東アジアは、経済共同体を段階的に達成しつつある。しかしEUのような政治的統一を達成しているわけではない。東アジア諸国は「熱した経済と冷えた政治」の矛盾を解決するために、今後安全保障共同体の実現を優先事項とすべきである。10-15年後にアメリカが東アジアを離れた場合、東アジア諸国は自力で平和的共存を実現しなければならなくなる。安全保障共同体を実現する方法は、対話と協議を重ねる「ASEAN Way of Cooperation」を採用すると同時に、中国と日本が「独仏和解」というEUの経験から学び、歩み寄ることである。

(文責、在事務局)