外交円卓懇談会

第67回外交円卓懇談会
「広域黒海地域:その課題と展望」(メモ)

2011年2月21日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第67回外交円卓懇談会は、ドル・ロムルス・コステア・ルーマニア外務次官を報告者に迎え、「広域黒海地域:その課題と展望」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2011年2月21日(月)午後3時00分より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「広域黒海地域:その課題と展望」
4.報告者:ドル・ロムルス・コステア   ルーマニア外務次官
5.出席者:19名

6.報告者講話概要

 ドル・ロムルス・コステア・ルーマニア外務次官の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

広域黒海地域(Wider Black Sea Area)と周辺地域

 広域黒海地域に中東と中央アジアを加えて、「危機の三日月地帯(Arch of Crises)」と呼ばれることがあるが、この地帯に位置する諸国家は、かねてより脆弱かつ不安定な社会・政治的構造を抱えており、また、互いに密接な相互連関を有している。この地帯の一国として、ルーマニアは、周辺地域情勢の安定、将来的な予測可能性、そして民主化の動向に対して多大な関心を払ってきた。他方で同国は、2001年以降、NATO次期拡大国に含まれるべく鋭意働きかけを行ってきたが、その結果、2004年3月には他のいくつかの中・東欧諸国及びバルト三国とともにNATOへ、そして2007年にはEUへの加盟を果たした。これを機に、広域黒海地域と欧州との距離は格段に縮まったが、それに伴い、経済関係の深化を通じて人の移動が大幅に増加するなど「ゼロ・サム」ではなく「ウィン・ウィン」のかたちでの相互依存関係が強化されるようになった。そのような中、2011年1月から黒海経済協力機構(BSEC)議長国を務めているルーマニアは、中東ならびに中央アジアと密接な関わりを有し、かつ欧州との関係を徐々に強化しつつある広域黒海地域を代表し、近年、多角的な外交努力を積み重ねているところである。

広域黒海地域の展望とロシア

 広域黒海地域の将来展望を考える上で鍵となるのは、実のところ、近隣の2大地域大国であるロシアとトルコである。いうまでもなく、黒海地域やコーカサス地域は、カスピ海から欧州への「エネルギー回廊」として、関係各国の利害や思惑が大きく交差する戦略的要衝である。当然、ロシアもこれら地域に死活的な戦略的重要性をみているが、とはいえ、ロシアとしてもこの地域の権益を独占しようと考えているわけではないようである。広域黒海地域としては、ロシアや欧州諸国と共にこの地域に「ウィン・ウィン」の関係と信頼を構築することが今後とも重要となろう。

広域黒海地域の展望とトルコ

 他方、この地域において無視できないもう一つの主要なプレイヤーであるトルコは、近年、大きな変化の時を迎えている。トルコの外務大臣アフメット・ダーヴトオールは、大変有能な人物として知られているが、近年、トルコの対外的役割を、これまでの「東西の架け橋(bridge)」から、地域の「中軸的国家(pivotal state)」へと変革させるべく尽力しており、そうした動きの中で、ルーマニアもトルコと経済・軍事の両面において密接な関係を築きつつある。またトルコは、ここ10年で民主化を一層進展させてきており、また経済的にも大きな発展を遂げていることから、今後さらに国際政治における存在感を高めることとなるであろう。他方、トルコは、パレスチナ人と並ぶ「独自の国家を持たない世界最大の民族集団」とされるクルド人問題を抱えており、今後トルコのクルド人問題の取り扱いはトルコの国際的評価を左右しかねない。いずれにせよ、トルコはその実力、地政学的重要性からみて、EU加盟の資格を十分有しており、トルコにとってもEUにとっても広域黒海地域にとっても、そして中東地域にとってもプラスであることは間違いない。ルーマニアとしても積極的にトルコのEU加盟を支持していきたい。

(文責、在事務局)