外交円卓懇談会

第64回外交円卓懇談会
「インドネシア『脱ASEAN路線』の可能性」(メモ)

2010年12月1日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第64回外交円卓懇談会は、リザール・スクマ・インドネシア戦略国際問題研究所(CSIS)所長を報告者に迎え、「インドネシア『脱ASEAN路線』の可能性」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2010年12月1日(木)午後3時より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「インドネシア『脱ASEAN路線』の可能性」
4.報告者:リザール・スクマ   インドネシア戦略国際問題研究所(CSIS)所長
5.出席者:26名

6.報告者講話概要

 リザール・スクマ・インドネシア戦略国際問題研究所(CSIS)所長の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

外交路線の見直しを求められるインドネシア

 世紀転換を迎えて、国際社会の秩序にも変化が生じている。既にG8主導の時代から発展著しい途上国を含んだG20の時代へと、世界的な舞台も変わりつつある。そのG20メンバーの一角を占めるインドネシアも、この変化の時をとらえて、国際社会における自国の立場を戦略的に変化させてゆく絶好の機会にある。東南アジアとASEANを外交の最も基本的な部分に据えてきた、これまでのインドネシア外交の基本路線が、真にインドネシアの国益の観点からみて適切か、を評価すべき時、ということである。これまでASEANにおけるインドネシアの立ち位置は、経済面の遅れと非民主主義的な統治が長く続いたために、常に国力に比して周辺的な扱いに甘んじてきた。しかしながら、その後経済的に発展し、軍政からデモクラシーへの安定した移行にも成功したインドネシアは、引き続きそのような立ち位置を維持すべき理由はなく、ASEANとの関係をも含めて、その外交路線の見直しが求められている。まさにインドネシア建国時に構想されたような「自由かつアクティヴな」外交をユドヨノ大統領やウィラユダ外相は求められている。

新しい外交枠組の確立

 まず、ASEAN依存の外交枠組を再定義する必要があるが、新しい外交枠組を判断すべき基準としては、戦略的必要性や価値の共有などが考えられる。戦略的必要性の観点からは、マレーシア、シンガポール、日本、オーストラリア、中国、インド、アメリカ、そしてG20との関係が重要であり、これらの関係を第一の外交関係に据えるべきといえる。デモクラシーの価値を共有する国同士の外交、そして穏健派ムスリムが多数派を占める大国としてムスリム諸国との間でもより積極的な外交を展開すべきだ。その中で、インドネシアは多国間主義と二国間主義の間のバランスを保つ必要がある。ASEAN内部では、戦略的必要性からはシンガポール、マレーシアとの友好関係が、デモクラシーの価値共有という点では、タイ、フィリピンとの外交関係が、また同時にビルマの民主化に対して共同歩調をとることが、重要といえる。ASEANの外では、ASEAN+3に入る3か国(日本、中国、韓国)、もしくはアメリカ、インド、オーストラリアに代表されるようなグローバルもしくは地域的なリーダーシップを取るような国との関係構築が重要である。

ASEANからアジア太平洋へ

 また、インドネシアはその国際的ポジションをよりアジア太平洋にシフトするべきだと考える。そうすることによって国益にかなうような新しい外交的視野や機会が拡大するだけではなく、新しい地域構造の「形成」にインドネシアが主体的に関与することが可能になるからである。ASEANにおいては、インドネシアは、他の加盟国に主導権をとられ、常に周辺的な立場にあった。東アジア・サミット(EAS)は、この点でインドネシアがより積極的に取り組むべき対象である。

民主化したインドネシアの外交課題

 但し、以上に述べたことは、インドネシア外交の単純な「脱ASEAN」を意味しない。ASEANが加盟国間の友好関係を維持することで東南アジア地域の安定と安全に寄与するという役割を果たす限りにおいて、ASEANを正当に評価する必要はある。だが、それ以上のことをASEANに求め、インドネシアの国益を犠牲にするようなことはあってはならない。ASEAN以外にも、G20、APECなどの新しい地域枠組みのアプローチを選択肢に入れ、ASEAN外交を相対化することが重要なのである。これによって、民主化したインドネシアは、戦略的・地政学的に急速に形成されつつあるアジア太平洋地域において自らの立場を強化することは出来るようになるであろうし、それこそがユドヨノ政権の外交課題である。

(文責、在事務局)