外交円卓懇談会

第63回外交円卓懇談会
「政権交代後の英国の政治経済動向」(メモ)

2010年11月22日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第63回外交円卓懇談会は、ディビッド・ウォレン駐日英国大使を報告者に迎え、「政権交代後の英国の政治経済動向」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2010年11月22日(木)午後3時より午後4時半まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「政権交代後の英国の政治経済動向」
4.報告者:ディビッド・ウォレン   駐日英国大使
5.出席者:30名

6.報告者講話概要

 ディビッド・ウォレン駐日英国大使の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

「新商業主義」あるいは「頑固な国際主義」

 今年7月にはヘイグ外相が訪日したが、これらの機会をつうじて、英国は日英間の貿易・投資関係の促進に努力している。ヘイグ外相はこのようなアプローチを「新商業主義」と呼称しており、前原外相も同様の趣旨の発言をしている。新政権は世界における英国の影響力低下を阻止し、国際社会の中でしっかりとした価値観を維持する方針をとっている。キャメロン首相はそれを「実際的かつ良い意味で『頑固な』国際主義」と表現している。

「国家安全保障会議(NSC)」の発足

 新政権は「国家安全保障会議(NSC)」を発足させ、外務・国防・国際開発省など外交政策に関わる主要省庁だけでなく、国内外の安全保障・エネルギー・気候変動など外交政策に影響を与えうる分野の他省庁も参加している。これによって縦割り行政の弊害を阻止しつつ、諸外国との関係改善を促進し、強化することを狙っている。また、国益にはよりよい世界の実現への努力が含まれなければならない。英国はそのような「啓蒙された国益」、例えば外交政策における人権の重視、貧困の撲滅といった活動については、支出削減の対象外におき、最貧国に対しては集中的な開発支援を構想している。「啓蒙された国益」には、国連をはじめとする国際機関を通じて、気候変動や紛争解決に向けて行動するよう働きかけることも含まれる。

NATOのPKO活動への参加など

 新政権は現在、戦略・防衛・安全保障分野の見直しに取り組んでおり、国防予算において人員の削減を促進しつつ、テロ、サイバー問題、災害への対策が可能なように再編制と兵装の更新を実施し、戦略的能力の維持を図っている。そして英仏国防協定に基づく軍備管理によって、より効率的な運用が期待される。NATOのPKO活動から英国が撤退することはあり得ない。キャメロン首相はNATOを通ずるアフガニスタンでの軍事活動を継続することを再確認した。これは、タリバンへの軍事的圧力を高めながら、アフガニスタンの再建を支援し、非軍事的活動に取り組むという政策の一環である。旧タリバン勢力の社会復帰を進め、国内の安定と安全に責任を担うべき民主的なアフガニスタン政府を支援することが重要なのであり、英米両国首脳はNATO軍が現在の規模で恒久的に駐留することは想定していない。他にも中東和平問題、国連安保理改革、英連邦の強化、インドや中国との関係強化、主要な経済大国との緊密な関係、イランへの核不拡散なども、連立政権にとって重要なイシューといえる。

国際問題に対する日英協力

 上記のような問題に取り組むに当たって、日本は英国の極めて重要なパートナーである。英国はアウン・サン・スー・チー女史解放に関する前原外相の声明を支持し、ビルマの政治囚たちが早急に解放されることを願っている。また、アフガニスタン復興支援における日本の非軍事的貢献と自衛隊の技官参加を評価している。イランの核兵器開発防止について、国連を通じて核兵器保有を許さないメッセージを送る上で、日本が積極的に支持してくれることに感謝する。北朝鮮問題は日本にとって重大問題であり、北朝鮮に対しあるべき対応を求める日韓の取組みを英国は全面的に支持する。北朝鮮の六カ国協議復帰は望ましいが、他の参加国が被害を被った結果としての対話実現は論外であり、対話再開の条件を北がつけることは許されない。一貫して明確なメッセージを送り続けることが、この場合でも重要である。そして、英国は国際的な災害救助活動における日本の役割を歓迎している。海賊対策への参加、パキスタン大洪水後のヘリ展開活動、スーダン南部の国民投票実施に向けたPKO支援活動等である。

日英間の貿易・投資促進

 日本企業が英国で行っている投資は非常に大規模なもので、総数1200社、総額210億ポンドにまで達し、10万人以上を雇用している。新政権は持続可能な成長を目標にしており、日本の対英投資はその中核的な役割を担っている。英国は、各社の欧州本社を英国に誘致し、ビジネスに適した国として欧州ナンバー1にランクされているが、さらに世界でもトップクラスになるべく、法人税をG7最低水準の24%まで引き下げるなどの方針をキャメロン首相は示している。また、気候変動に関する対話構築を英国は望んでいる。日本のCO2削減目標25%や排出権取引の姿勢を英国は歓迎しており、コペンハーゲンでの結果を受けてハードルを下げるようなことは望ましくない。カンクンで開催されるCOP16での日本の果たす役割にも期待している。
 世界経済はリーマン・ショックから回復しつつあるが、横浜のAPEC会議で示されたように保護主義に逆行することは許されない。農業分野など保護を求める分野は確かにあるだろうが、それ以上に保護主義がもたらす弊害の大きさを意識すべきである。この点で、外国からの対日投資を妨げる障壁を取り除くことが望ましいと考える。現在でも、日本における外国からの直接投資は非常に低水準にとどまって居るが、これは正しい状態とは思われない。日本とEUのEPAも双方に利益があるだろう。日本が欧州側に説得的なサインを送る一つの手段として、日本の次期戦闘機の候補としてユーロファイター(タイクーン)をリストに入れることも考えられる。

英国の対中戦略

 1年前の外交円卓懇談会では英国の対中戦略について述べたが、英国は中国が「責任ある大国」へと発展することを支援している。同時に持続可能な経済発展と国内改革、特に人権や法の支配における中国の近代化に尽力したいと考えている。中国市場は日本経済の回復と密接な関連がある一方で、中国の不透明な軍事費拡大や先の尖閣諸島沖での漁船衝突事件などの懸案事項があり、日中関係が非常に複雑なものであることは認識しているが、英国は地域全体に関わる建設的な役割に積極的に貢献する方針を持ち、中国に影響力を及ぼしながら自らの国益を確保することを明確にしている。そのため、北東アジア・アジア太平洋において中国が日本と緊密な対話を維持することは英国にとっても利益になる。

(文責、在事務局)