外交円卓懇談会

第153回外交円卓懇談会
「WTOの未来―改革への展望―」メモ
外交円卓懇談会のようす

2019年4月8日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第153回外交円卓懇談会は、ジョン・ハンコック(John HANCOCK)WTO参事官を講師に迎え、「WTOの未来―改革への展望―」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2019年4月8日(金)15:00~16:30
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「WTOの未来―改革への展望―」
4.報告者:ジョン・ハンコック(John HANCOCK)WTO参事官
5.出席者:15名
6.講師講話概要
 ジョン・ハンコック(John HANCOCK)WTO参事官の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

(1)中日両国間における相互認識の課題

 WTOは、1995年の設立以来、多くの成功をおさめてきた国際機関である。WTOの設立によって国家間の貿易ルールが定められ、国際社会に、開かれた市場、経済統合をもたらした。そしてその結果として、各地で経済成長が進み、国際社会を平和と安定に導いていったのである。実に、現在の世界貿易額は、1950年代よりも35倍に増大している。ではなぜ、現在国際社会において、WTO改革が声高く要請されるようになっているのか。

 一つには、前述のWTOのもとでの市場の安定によって、これまで発展途上国であった国家が急速に経済成長し、国際市場においてパワーシフトが起こったことによる。GATTの時代は、米国経済が単独で強固であり、主導権を握っていた。しかし、現在はEUと日本だけでなく、中国、ブラジル、インドなども台頭している。こうした状況のなかで、新たに台頭してきた国家から、これまでのルールの変更が求められるようになっているのである。

 二つには、グローバル化によって得られる利益が、社会全体にいきわたらず、特にかつての「西側」諸国内において、一部の層には利益をもたらしたが、一部の層にはかえって不利益を及ぼし、それぞれの国内で経済格差を広げてしまったことによる。こうした不利益を受けた層の声が強くなり、英国でのブレグジット、米国でのトランプ大統領を誕生させ、そしてこれらの国々を中心に、これまでのWTOルールの修正が迫られているのである。

(2)WTOの未来

 このように、WTOは国際社会に繁栄をもたらしたが、その反動で利益を享受できていない層の反発も強く、WTOへの挑戦となっている。しかしながら、現実的には、WTOの代替となるものはないのが実情ではないか。米国のトランプ大統領は、WTOの紛争処理制度に不満をもっているが、実際に同制度を最大に活用してきたのが米国である。また現在も多くの国家がWTOのもとで紛争処理を行っている。つまり、現時点ではWTOに代わる有効な存在はないのであって、その機能の強化を進めることに注力しなければならないということである。今日では、Eコマースなど新しい分野でWTOが広く関与している。

 仮にWTOの改革が進まなければ、世界はより分散化することになるかもしれない。例えば、米国、EU、中国の3つの分極ができことになるであろう。そしてNAFTAの再交渉のように、それぞれの分極のなかで、新しい経済秩序が構築されることになる。これはWTOのもとで進んできた統合やグローバル化に逆行するものであり、世界をより不安定で不確かなものにしてしまうのではないか。

(文責在事務局)