外交円卓懇談会

第152回外交円卓懇談会
「日中関係の未来について」メモ
廉德瑰(LIAN Degui)上海外国語大学日中韓協力研究センター所長

2019年3月15日(金)
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第152回外交円卓懇談会は、廉德瑰(LIAN Degui)上海外国語大学日中韓協力研究センター所長を講師に迎え、「日中関係の未来について」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2019年3月15日(金)15:00~16:30
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日中関係の未来について」
4.報告者:廉德瑰(LIAN Degui)上海外国語大学日中韓協力研究センター所長
5.出席者:24名
6.講師講話概要
 廉德瑰(LIAN Degui)上海外国語大学日中韓協力研究センター所長の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

(1)中日両国間における相互認識の課題

 中日関係は、一時期厳しい状況にあったが、現在は改善されようとしている。しかしながら両国の間には、互いの相互認識というレベルにおいて、次の4つの課題がある。

 一つ目は、互いに相手国に対して不信感を抱いていることである。中日関係は、1972年の国交正常化以降、中国側からは日本に戦争賠償を求めず、日本側からは円借款などが行われるなどして、友好関係が続いていた。しかし、90年代から互いに不信感をもつようになり、近年では、日本は中国の発展を脅威と捉え、中国は日本が中国の発展に協力せず、かつ米国とともに中国に対立的になっている、と認識するようになっている。

 二つ目は、両国関係の悪化の責任を、互いに相手側にあると捉えていることである。周恩来がかつて「日中二千年の歴史に比べれば両国間の不幸な時期など瞼の一瞬きにすぎない」と述べるなど、両国の間には歴史問題は見られなかった。しかし近年の両国関係の悪化に対して、中国は日本の歴史認識のためであるとし、日本は中国が未だに戦争の責任を責め続けているためであるとしている。

 三つ目は、現在の両国に対する認識が不足していることである。日本は中国の政治体制に対して必要以上に嫌悪感を持ち、実際にはそのようなことがないにも関わらず、中国が台頭すれば何をするかわからないと脅威を感じるようになっている。中国は、日本の「価値観外交」に代表されるように、日本が「価値観」に基準をおいて、政治体制が異なる中国に対して、米国とともにその発展を阻害しようとしていると感じている。

 四つ目は、米国に対する認識および関係の違いである。日本にとって、米国は同盟国で安全保障を担ってくれる存在である。中国にとって、米国の存在があるために、日本は中国の側には立ってくれることはないと判断している。なお現在、中米の間には貿易摩擦がある。日本の報道などをみると、日本では、中国が中米交易摩擦の影響から、日本との関係改善に関心を示すようになっているとみている。しかし、それは違う。中日関係は、双方が2014年11月に四項目(「四点合意」)について意見の一致をみたころから、関係の改善はなされ続けてきたのであり、現在の米中貿易摩擦は関係ない。

(2)中日関係の将来に向けて

 ではこれからの中日関係はどうなるのか。上記で述べたような相互認識の違いなどにばかり目を向け、互いに相手に対して否定的にばかりなっていては未来は開けない。未来は、両国が協力を続けていくことでしか開くことはできない。中日両国は、現実を直視する必要がある。その直視すべき現実とは何か。中国が近代化することで、どこかの国に対して紛争をしかけることなどないということである。また日本も、どこかの国に再び攻め入るようなことはないだろうということである。こうした現実を直視するために、両国はより交流を拡大する必要がある。日本では「価値観」が重視されているが、政治体制の違いによる価値観の違いよりも、両国の文化的なつながりに、2000年の長い友好の歴史に目をむけるべきである。文化交流は、経済的な協力・交流以上に、今後の両国の間で重要になるのではないか。

 第二次世界大戦後、欧州において独仏和解ができたのは、様々な要因があったとしても、何よりも両国の間に欧州統合というドリームがあったことが大きい。では中日両国にはないのか。中日両国の間には、東アジア共同体という共通のドリームがある。東アジア共同体は、確かに実現には多くの課題がある。しかし、共同体をつくろうという夢を捨てることなく、それを中日協力の基礎として、さらなる関係強化を進めることができれば、中日の良好な未来を拓くことができるであろう。

(文責在事務局)