外交円卓懇談会

第149回外交円卓懇談会
「日韓関係の現状をどうみるか」メモ
金在信(KIM Jae-shin)韓国国立外交院日本研究所顧問

2018年11月7日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第149回外交円卓懇談会は、金在信(KIM Jae-shin)韓国国立外交院日本研究所顧問を講師に迎え、「日韓関係の現状をどうみるか」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2018年11月7日(水)15:00~16:30
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「日韓関係の現状をどうみるか」
4.報告者:金在信(KIM Jae-shin)韓国国立外交院日本研究所顧問
5.出席者:22名
6.講師講話概要
 金在信(KIM Jae-shin)韓国国立外交院日本研究所顧問の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

(1)はじめに

 戦後日韓両国は、1965年の日韓基本条約の締結によって国交正常化したわけであるが、同条約が締結されるまでには13年間にわたる交渉期間があった。本年2018年は、小渕恵三首相と金大中大統領による「日韓パートナーシップ宣言」の締結から20年目を迎えている。今回の来日に際し搭乗したフライトで、ドイツとフランスの両大統領が、第一次世界大戦終結100周年の記念行事に並んで出席している写真が掲載された新聞記事をみた。今後の日韓関係が、この写真のごとくなれることを願っている。

(2)「日韓パートナーシップ宣言」締結までの日韓関係

 韓国においては、歴代のどの大統領も日本との関係を重視している。しかし、日本との間には漁業問題や歴史問題があり、政権末期になるとそれらの問題が顕在化し、関係が悪化する。つまり日韓関係は、韓国の政権の任期が前半のうちは良好となるが、後半になると冷え込むという傾向があるわけである。ただそうした中でも、90年代後半の金大中政権と小渕政権はとても良好な関係を築いた。金大中政権は、戦後初の民主化による政権交代によって誕生した政権で、韓国民主化の象徴として国内外で支持が高かった。またアジア通貨危機によって、韓国はIMFからの介入を受け、日本はアジア重視の外交を推し進めたため、両国の間で協力関係が見直されたのである。こうした情勢も相まって、未来志向の「日韓パートナーシップ宣言」が締結できたのであろう。また金大中政権は、それまで制限されていた日本の大衆文化を政治的決断によって導入し、日韓の文化交流を推進した。それまで韓国では、規模や質の高い日本の大衆文化を無制限に導入すると、韓国国内の文化や文化産業が衰退するのではないかと懸念されていたのである。なお、個人的な見解であるが、韓国において同宣言を締結した小渕首相は、戦後の日本の歴代首相の中で最も評価が高い首相である。このように良好な日韓関係であったが、小渕首相が急逝し、金大中大統領も任期の後半になると、これまでと同様に漁業問題、歴史問題また教科書問題などが顕在化し、日韓関係は悪化した。

(3)「日韓パートナーシップ宣言」以後の日韓関係の歴史

 つづく廬武鉉大統領は、大統領就任前に唯一行ったことのある海外が日本であるなど、もともと日本に良い印象をもっていたとみられる。廬武鉉大統領は、歴史問題を日韓両国の外交問題にはしないと公言していたが、小泉首相の靖国参拝、島根県による「竹島の日」の制定などがあり、日韓関係は悪化した。その後の李明博政権は、島の訪問などを行い、日韓関係は過去最悪にまで悪化した。朴槿恵政権に至っては、就任直後から一貫して日本への対立姿勢を示した。現在の文在寅政権は、北朝鮮との関係改善を最重要外交課題とし、そのために日本との協力を強化する必要があった。そのような背景から文在寅政権は「ツートラック政策」を掲げて歴史問題と他を分けて日韓関係を進めようとしていたが、慰安婦問題をめぐる対立や徴用工訴訟に対して韓国大法院で日本企業に賠償するよう判決が出されたことで、果たしてどこまで同政策が可能なのか難しい局面に立たされている。現在文在寅政権は、今後日本との関係をどのように構築すべきか検討しているところであろう。

(4)これまでの日韓関係の評価と今後のありかた

 最後に、以上述べてきた内容から、過去20年間の日韓関係を考察し、今後の課題について述べたい。日韓関係は、「日韓パートナーシップ宣言」の締結にみられるように、2000年代初頭が全盛期であったといえよう。その背景には、1988年のソウル五輪の成功によって韓国が自国の発展に自信を付け、日本との経済関係もそれまでの一方的な対日経済依存から対等な相互依存関係へと変化していったことがあるだろう。また市民レベルでも、2002年のサッカー・ワールドカップ日韓共同開催および日本での韓流ブームなどにより人的・文化交流が盛んに行われ、相互に親近感の高まりをみせたこともあるだろう。

 しかし、こうした非政治分野での日韓交流は盛んに行われたものの、日韓の間の政治・歴史問題は常に存在し、2000年代が進むにつれてそれらが強く顕在化することで、日韓関係は悪化していってしまった。歴史問題は常態化しており、歴史的な記念日などでは決まって相手国を負の感情を噴出させることから、カレンダーをみるといつ日韓関係が悪くなるか予想ができるほどである。歴史問題については、両国が互いに満足できる到達点はありえない。文在寅政権の「ツートラック政策」、民間レベルでの賢人会議や歴史共同委員会の活動など、これまでの様々な取り組みがなされてきたが、今一度歴史問題を整理し、今後の関係改善を図る必要がある。幸いなことに、最近の世論調査などの結果をみると、韓国の若者の間では、例えば日本の「居酒屋」が人気であるなど、一般的な対日イメージはむしろ良くなっている。こうした感情を、いかに歴史問題によって悪化させないかかが課題であろう。また政府レベル、特に首脳同士の交流は重要であり、2011年以来途絶えている両国首脳の相互訪問をもう一度回復させなければならないだろう。2020年には、東京オリンピックが開催されるが、同年は日韓国交正常化55周年でもある。この年を一つの契機に、日韓関係の好転、深化がなされることを期待している。

(文責在事務局)