外交円卓懇談会

第137回外交円卓懇談会
「米国の防衛戦略」(メモ)
外円懇のようす

2017年9月21日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第137回外交円卓懇談会は、トーマス・マンケン(Thomas MAHNKEN)米国戦略予算評価研究所理事長を講師に迎え、「米国の防衛戦略」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2017年9月21日(木)15:00~16:30
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「米国の防衛戦略」
4.報告者:トーマス・マンケン(Thomas MAHNKEN)米国戦略予算評価研究所理事長
5.出席者:22名
6.講師講話概要
 トーマス・マンケン米国戦略予算評価研究所理事長の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

(1)米国の国家安全保障をめぐる諸課題
 現在トランプ新政権においては、マティス国防長官のもとで、新たな国防戦略が練られているところである。国際社会においては、中国、ロシアによる力を背景にした動きの活発化、北朝鮮による核武装、未だあきらめられていないイランの核開発、ISILやアルカイダによるテロ活動、などの脅威がある。そしてこれらの脅威は相互に影響もしあっている。オバマ政権においては、これらの脅威への認識はもっていたが、対応における優先順位の他、どの脅威が実際の戦争に進展する可能性があるのかなどの判断が曖昧であった。そのためそれらの脅威に対応するための計画に乏しく、さらに脅威に対する曖昧な認識で国防予算の削減に踏み切り、米国が冷戦以降維持し続けてきた二つの戦争を同時に行える二正面戦略体制を放棄してしまった。
 こうしたオバマ政権の後を受けたトランプ政権は、米国に対する多様な脅威に対処していかねばならないだろう。一つは、中東、朝鮮半島という差し迫った脅威と台頭する中国という長期的な脅威に対して、どのようにフォーカスしていくのかという問題に直面することになる。また、米海軍の事故により明らかになった米軍の予算不足という現状に対して、どのように資源を配分するのかという課題にも直面する。他に、世界的な米軍の展開や同盟国自身による防衛力をどのように強化するのか、米国の核体制およびミサイル防衛体制の見直しをどうするのか、などの課題もある。この後取り纏められる米国の「国家安全保障戦略」および「国防戦略」では、こうした課題への取り組みが明確化されていく必要があるだろう。

(2)米国の国家安全保障をめぐる課題
 では、以上のような課題がある中で、米国はどのような国防戦略を打ち出していくべきだろうか。まず、現在の米国が、ロシアおよび中国による挑戦を受けているという認識をもち、戦略を考案していく必要がある。というのも現在の米国は、中国およびロシアといった大国から挑戦を受け、これまで以上にこれらの国と国力を競い合う競争の中にある。その競争の中で、如何にして平和を保つのか、如何にして相手国の挑発的な行動を抑制させるのかを検討していかなくてはならない。なお、その際には、過度に冷戦終結の成功経験に依拠することは避けるべきである。かつてのソ連と現在のロシアは全く異なる国だからである。また、中国およびロシアとの間では、国力の競争だけでなく、実際の戦争の可能性も高まっている。こうした中で、どのような戦力を配備していくのかを検討しなければならないだろう。
 以上を踏まえると、今後米国においては、まず軍備の近代化が必須となる。そのためには予算が必要であることはいうまでもない。赤字財政の中ではあるが、米国を取り巻く脅威の中で、最も優先順位が高いのが軍の近代化であるため、国防予算の増加は必要であろう。また、現状世界の各前線に配置されている米軍は、すぐにでも万全の体制で戦争に突入できる状態を維持しているが、これでは兵器の老朽化を加速させるだけである。今後は、同盟国の軍隊との相互運用性を高め、できるだけ兵器を温存させるべきであろう。他に、現在の米国の核戦力は、1990年代初頭に整備されたものであり、現在の国際状況において運用するには必ずしも適当な状態にない。米国は長らく核戦力を近代化することを抑制してきたが、トランプ政権では再び強化する方向に進むことになるだろう。ただしその際には、同盟国の反応を考慮しなければならない。また、戦力の質を高めるためのイノベーション力も今後高めていく必要があるだろう。
 最後に、トランプ大統領の発言や振る舞いは、日本の価値観からすれば乱暴にみえることも多いかもしれない。ただし、中国やロシアの脅威が高まる中で、ある種の乱暴な直言というものは、必要ではないだろうか。

(文責在事務局)