外交円卓懇談会

第119回外交円卓懇談会
「ASEAN共同体の展望:マレーシアの視点」(メモ)

2015年12月8日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第119回外交円卓懇談会は、モハド・アブドラ・ウタラ・マレーシア大学ガザリシェフェイ大学院院長を講師に迎え、「ASEAN共同体の展望:マレーシアの視点」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2015年12月8日(火)15時00分より16時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「ASEAN共同体の展望:マレーシアの視点」
4.報告者:モハド・アブドラ・ウタラ・マレーシア大学ガザリシェフェイ大学院院長
5.出席者:17名
6.講師講話概要
 モハド・アブドラ・ウタラ・マレーシア大学ガザリシェフェイ大学院院長の講話の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

(1)「ASEAN共同体」の発足
 さる11月22日のクアラルンプールでの東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議にて採択された「ASEAN共同体設立に関するクアラルンプール宣言」により、本年12月31日をもって「ASEAN共同体」が正式に発足することとなった。「ASEAN共同体」は、2003年のASEAN首脳会議にて採択された「第二ASEAN協和宣言」において、2020年までの発足が宣言されていたものであるが、その後、2007年のASEAN首脳会議で5年前倒しされ2015年までの発足が目標とされたところ、今回の発足はその目標を順守したものといえる。

(2)ASEAN共同体の主眼としての「経済共同体」
 「ASEAN共同体」とは、いうまでもなく「経済」、「政治・安全保障」、「社会・文化」の3分野における各「共同体」の総称であるが、今回の発足にあたっての主眼は、「経済共同体」にある。この「経済共同体」の主たる目標は、ASEAN加盟国間での関税の完全撤廃であるところ、現在、すでに95.99%まで撤廃が進んでいる。また、「経済共同体」の土台となるASEAN経済は、過去数年目覚ましい成長を遂げており、たとえば、2007年から2014年の間に、ASEAN加盟国のGDP総額は1.3兆米ドルから2.5兆米ドルに倍増している。他方、ASEANには、先発国(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)と、後発国(カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム)との間に依然大きな経済格差が見られることも事実である。そこで、後者については「経済共同体」への完全統合までに今後5年の猶予期間が与えられ、その間での経済力の強化が期待されている。

(3)ASEANにおける共同体構築の特徴
 このように着実に共同体構築を進めているASEANであるが、大事なことは、ASEANは組織であると同時に、加盟国間での信頼醸成や各種の協力推進といった地域統合の「プロセス」そのものも象徴している、ということである。東南アジアには、多様な宗教、政治制度、経済水準を持つ国々が存在しており、ASEANは、上記のプロセスを通じて、多様性を残しつつ結集してきたし、今後もそうあるべきであるといえる。その意味では、同じ共同体構築でも欧州連合(EU)とは異なる内実となる可能性もある。また、ASEANは、主として加盟国の政府やエリート層が中心となって設立された経緯があり、必ずしもEUのように加盟国の一般市民の意向を踏まえつつ運営されてきたわけではない。もっとも、今後のASEAN共同体の運営においては、加盟国の各国民がASEAN共同体が何たるかを理解した上で、その意思決定に参画することを重視しようという機運が高まっていることも指摘しておきたい。

(4)今後のASEAN共同体の分野別課題
 今後、ASEAN共同体が、さらなる国際的競争力、強靭性、持続力を備えるためには、「経済」「政治・安全保障」「社会・文化」の各分野別に多くの課題がある。「経済」分野では、熟練労働者の育成や域内移動の促進、地域規模で活動可能な中小企業の育成、各国の自国産業保護の緩和、ガバナンスの改善などが求められている。「政治・安全保障」分野においては、南シナ海における中国の行動、自然災害対策、エネルギー安全保障などの諸問題に対する、自主性・一体性を持った取り組みが求められている。「社会・文化」分野においては、各国の学生間の交流プログラムを強化し、若年層へのアウトリーチを通じての「ASEANess(ASEANアイデンティティ)」の醸成などが求められている。

(文責在事務局)