外交円卓懇談会

第102回外交円卓懇談会
「未来志向の日中関係の構築に向けて」(メモ)

2014年6月20日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第102回外交円卓懇談会は、楊伯江中国社会科学院日本研究所副所長を講師に迎え、「未来志向の日中関係の構築に向けて」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講話の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2014年6月20日(金)13時00分より14時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「未来志向の日中関係の構築に向けて」
4.報告者:楊伯江 中国社会科学院日本研究所副所長
5.出席者:32名

6.報告者講話概要

 楊伯江中国社会科学院日本研究所副所長の講話(日本語でなされた)の概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

 自分(楊伯江副所長)は、中日関係の現状が厳しく、望ましくない状況だからこそ、中国社会科学院の様なシンクタンクが理念を持って努力する必要があり、そこに価値が出てくるという確信を持っている。そこで、多角的な視野から、未来志向の日中関係を実現するための七策を個人の意見として述べる。

 一つ目は、時代の認識についてコンセンサスを作ることである。中国の学界には「政治的多極化」と「無秩序」なグローバリゼーション、地域統合、国家間の相互依存が進んでいるという見方がある。国の発展と対外関係のモデルも変わりつつあり、冷戦時代の様な閉じこもった自己発展というモデルはもうダメである。中国なりの言葉を使えば、闘争しながら協力しなくてはならないということである。中国の春秋戦国時代には、王の子を人質として交換することで相手の急な軍事的アタックを防止するという外交パターンが流行したが、その人質は(現代では)投資・貿易・駐在に形を変えた。極端に言えば、もし(中国が)ミサイルで攻撃されれば、死ぬのは中国人だけではないということである。中日という近隣国同士であれば、平和的共存・共栄が唯一の正道であって、他に選択肢はないというのが、今の中国における一般論であり、習近平主席が(中国共産党総書記に)就任以来国際状況・中国の外交に関して発表してきた三十程の談話・スピーチに見られる時代観・国際観・世界観も正しく、今の時代に追いついている(catch up)という印象を受ける。

 二つ目は、誤解を解き、「了解」を深め、相互信頼を構築することである。中国語の「了解」は単純に相手を分かることであり、「理解」はさらに賛成するということである。それであえて「了解」を使った。中日は現在、特に軍事・安全保障において互いが等身大以上に見えている。その原因として、中国が東に向かって進める海洋戦略と、日本の南に向かって伸びるシーレーンがEast China Seaで交差するという地政的な摩擦の種、中華秩序の終焉と同時に日本による植民地化と侵略があったこと、冷戦期を違う陣営で過ごしたことなど、対等な関係が不足している経験に基づく相互認識や共有できる歴史(shared history)が欠けていることが挙げられる。

 三つ目は、国交から社交に重点をシフトし、草の根レベルから了解と信頼を構築することである。2002年の頃、私が「国交回復以来の30年は、国交の30年、これからは社交、即ち中日の社会同士の交際の30年を作りましょう」と初めて提唱した。旧ソビエトの脅威という特殊な国際情勢から、1972年の国交回復は政府・政治主導の色が濃かったが、その後42年間で、中国社会は言論の多様化、情報の公開化、権力の分散化(中央と地方の権力関係におけるde-centralization)、部門利益化(対外関係などにおける利益が各部門(省庁)で異なること)、そして政策決定における民主化(実践レベルでは民意を重視しなければならないこと)など、大きく変化したからである。

 四つ目は、中日間で戦略的対話を始めることである。地域の秩序(regional order)は中日の成長に適応できなくなった。同様に勃興している(rising)韓国も含め、互いの位置付けを明確にしなければならない。また、地域安全保障の枠組みである日米同盟の再調整・現代化の本質は日米間の権力と責任の再分担であり、日本は(米国と)より対等・平等な地位を得て、その役割はよりパワフルになる。中日両国が直接接する場面はこれから増え、戦略対話は現実に一日も早く始めなければならない。

 五つ目は、シーレーンという公共財に共同で貢献することである。我々はシーレーンを対立の種にするか、協力の素材にするかの選択に直面している。中国はエネルギー輸入をシーレーンに依存しており、日本とインドの協力を心配している。他方、日本は中国のSouth China Seaの国々との島を巡る闘争・紛争から、自由航行に関して憂慮している。また米国は、シェールガスの開発などにより、将来中東の石油への依存度が減る可能性があり、シーレーンに関する政策の変化が考えられる。中日には自らの力で安全保障を保つという圧力がかかってくるが、アメリカ、韓国と共に協力を進めるべきだ。

 六つ目は、協力を増やし、相対的に対立を減らすことを中日関係の総方針とすることである。ハードな部分での協力を増やし、心理的・社会的なソフトな部分では、両国民に島・紛争・対立から目をそらしてもらい、協力に集中してもらうことだ。例えば、舛添知事が発言したように、日本は中国のオリンピックのノウハウを、中国は日本の環境保護技術等を借りるといった協力ができる。また、国土開発に関しても、東京は設計・街づくりのノウハウが高度なのに対し、北京は投資の潜在力が大きいものの大雑把・粗末である。

 七つ目は、East China Seaにおけるプログラム(を作ること)である。特に、偶発事故を防止するメカニズム作りである。万が一何かがあれば、東アジアの海域の混乱、シーレーンへの影響、国際社会でのイメージダウン、国内の混乱を起こす恐れがあり、中日は共倒れする。多くの日本人が中国人を好いていないが、中国と戦争しようというのは少数派であろう。また、日本はEast China Sea(中国語で東海)とSouth China Sea(同、南海)を東シナ海・南シナ海と呼んでいるが、中国人は「シナ」という言葉を不愉快に感じ、感情的になる。日本の方は軽蔑の意味はないと言うが、問題は聞く側(の心情)にある。互いに相手の心境に配慮することが、国際的なやり方であろう。

(注)文中の英単語は、楊副所長が使用した。

(文責、在事務局)