外交円卓懇談会

第100回外交円卓懇談会
「中国の戦術と日本の戦略」(メモ)

2014年5月23日
公益財団法人日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
事務局

 日本国際フォーラム等3団体の共催する第100回外交円卓懇談会は、エドワード・ルトワック米戦略国際問題研究所(CSIS)上席研究員を講師に迎え、「中国の戦術と日本の戦略」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その冒頭講和の概要は下記6.のとおりであった。

1.日 時:2014年5月22日(木)15時00分より16時30分まで
2.場 所:日本国際フォーラム会議室
3.テーマ:「中国の戦術と日本の戦略」
4.報告者:エドワード・ルトワック米戦略国際問題研究所(CSIS)上席研究員
5.出席者:31名

6.報告者講話概要

 エドワード・ルトワック米戦略国際問題研究所(CSIS)上席研究員の講話概要は次の通り。その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われたが、議論についてはオフレコを前提としている当懇談会の性格上、これ以上の詳細は割愛する。

歴史的に見た中国の戦略

 歴史を見れば、中国人は、農業、文化、詩歌、文学などには強いが、戦略には弱いことが分かる。そして、そのことは現在も変わっていない。過去には少数民族との戦いに敗れ、中国人の喧伝とは逆に、清も元も漢文化に同化はされなかった。戦略とは、他者を理解することから始まるものだが、中国人は自分が優れているとの前提から考え始めるので、他者を理解できず、従って敵味方と隷属関係以外に同盟や連邦というものがあることを理解できない。そうした中国の攻撃性や傲慢さに対して、2008年以降世界中で反中気運が生まれている。

次第に形成されつつある対中コアリション

 日本はひとつひとつ石を積み、ひとつひとつ声明を積み重ねて、対中コアリションを作ればよい。インドのモディ首相はモスクワではなく東京を向いた初めてのインド首相である。日印の自然な同盟が現れつつあり、対比支援をともに行っている。何か事件が起きた時に日、印、比が全く同じ文言で談話や声明を出せば、物事は変わる。また、ハイフォンとコルコタを結ぶ横線(東西線)の鉄道建設が、中国の進める縦線(南北線)の鉄道建設に対して進められている。これは重要な対中戦略布石だ。なお、日本外交はシベリアが中国化されないようにすることが日米露の共通の戦略的利益であることを理解しなければならない。翻って、ASEANはその戦略的役割を失った。なぜならカンボディアとラオスは中国のゲームを演じているし、タイは内政が不安定だからである。従ってASEANについては、それを害することなくバイパスすればよい。インドネシアは中国といさかいがあるからコアリションに入るほかなく、豪州もこのコアリションの非常に重要なパーツである。マレーシアは惰眠をむさぼっていたが目が覚めた。シンガポールは地域最大の軍事大国で、特に空軍は豪ばかりか仏まで届く長いアウトリーチを持っている。一方韓国は、中国の「天下」に入りつつあり、中国を代弁することになるからコアリションには加わらないだろう。

日本の自衛隊の課題

 このように中国の行動が(対中)コアリションを生みつつあるが、日本には技術的問題がある。すなわち、日本の自衛隊は、実際の戦闘があれば圧勝するに足る武器を有しているが、それは冷戦時代に構想された実戦を想定した武器である。他方、中国は、緩い Command and Control (C&C) の下で no shootingを唯一のルールとする戦いを想定している。ということは、日本は非殺傷兵器を持ち、また非殺傷戦術を持たねばならない。例えば強力な低周波の音響装置などのたぐいである。今の自衛隊の能力では実射せずには中国に対抗できない。撃つことなしに彼らをembarrassできなければならない。航空自衛隊はどうかといえば、尖閣に中国空軍がやってきても、中国は撃たないから日本も撃てない。海上保安庁はといえば、唯一有している非殺傷兵器は大音響装置であり、中国人は全く意に介さない。中国が進めているのは、本当の戦争であり、今日ベトナムで起きていることが、明日には尖閣で起きうる。彼らは戦争にファンタジーを見ているから、周りの国からの政治的な interventionが必要である。

日本の外交と戦略

 オバマ大統領が訪日中に尖閣について「安保条約5条の対象になる」と明言したことに対して、米国内では「3つの岩のために戦争するのか?」といった非難が全く起きなかった。プーチンのロシアは、独、仏、英、伊各国のありうべき反応を事前に一つずつ研究してから、クリミアを奪取し、そしてNATOを分断したのとは逆に、中国は、尖閣をとれないうちに、対中コアリションの形成を招いた。中国は「ベトナムは屈服する」と高をくくっていたが、それは情報機関が間抜けをしでかしたということだ。形成された対中コアリションは、人口、技術、資金において中国より優っている。日本は本当の外交をし始めたのだから、自分の役割をしっかりと演じるべきであり、そのための戦略が必要である。

(文責、在事務局)