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(連載2)世界との対話「ユーラシア2025」に参加して ← (連載1)世界との対話「ユーラシア2025」に参加して  ツリー表示
投稿者:三船 恵美 (東京都・女性・駒澤大学教授・-) [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-14 12:33 [修正][削除]
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No.4106
 第2に、スリランカのハンバントタ港を代表的な例として、インド洋圏における中国の新植民地主義の展開である。別の言い方をすれば、「清朝中国の屈辱の歴史」を清算するかのようなパフォーマンスを含め、インド洋圏における権益を拡大させている。まさに、当日のパネリストお一人である渡邊啓貴教授(東京外国語大学)がご指摘されたように、ランドパワーである中国が、シーパワーとして台頭を図っているのである。これらの、ランドパワーとシーパワーに加え、「一帯一路」による「宇宙情報回廊」をつくろうとしている点にも注意すべきであろう。中国は、「一帯一路」のメカニズムを通じて、「海洋防災・減災」での早期警戒システムのネットワーク形成を進めようとしているが、(1)地球観測衛星「遥感」(リモート・センシング)、(2)通信放送衛星、(3)航行測位衛星「北斗」の三大システムで一体化した情報ネットワーク=「宇宙情報回廊」を構築しようとしている。サーバーや宇宙での、サイバーパワーやスペースパワーとして、中国は台頭しようとしているのである。

 第3に、中国は、「一帯一路」を通じて、「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」に有利な国際環境を整えようとしている。「中国製造2025」とは、2015年5月に中国政府が公表した三段階の発展計画である。中国は、「第1段階」の2025年までに「世界の製造強国入り」を目指し、「第2段階」の2035年までに中国の製造業レベルを世界の製造強国陣営の中位へ押し上げることを目指し、「第3段階」の2045年に「製造強国のトップ」になることを目指している。急速なイノベーションが難しい分野では、中国は外国企業の買収によって技術を吸収している。一方、「一帯一路」を通じて、途上国では、鉱物資源やマーケットの獲得を展開している。「一帯一路」による「朋友圏=お友達圏」は、経済のみならず、政治手段となっているのである。「中国製造2025の公布に関する国務院の通知」において、「軍事・民間技術の資源を統一配置し、軍民両用技術の共同攻略を展開し、軍事・民生技術の相互の有効利用を支援し、基礎分野における転用を促進する」ことが謳われている。軍民両用を進める「中国製造2025」と「一帯一路」が連動していることを、慎重に注視すべきであろう。

 第4に、「一帯一路」による協力圏の構築によって、中国が推し進めようとする政策を国際社会において通しやすくしたり、中国が抑えたい国際社会の政策や行動を押さえ込む手段や力にしたりしている。例えば、中国を念頭にまとめられた欧州企業の買収防衛策案が、中東欧諸国からの反対で流されている。イタリア、フランス、ドイツは、近年の中国企業による企業の買収をめぐり、欧州委員会に対して、戦略的とみなされるすべての対象企業および、国や政府系機関の資金で賄われた買収に対する規制権限の強化を求め、そのような投資を阻止する権限をEUに与えるように訴え続けた。しかし、それを、「1+16」の枠組みを強化している中東欧諸国が阻止した。このような動きに、ドイツのガブリエル外相などから、中国が中東欧を使ってEUの対中政策の足並みを分断するのではないかと懸念する声があがった。また、近年、中国との関係を深めているギリシャの例を挙げれば、昨年、EUが国連人権理事会で中国の人権状況を批判する声明をとりまとめようとしたところ、ギリシャが反対して、EU加盟国全28ヵ国が賛成しなければ「EUとしての声明」が出せないため、EUは中国の人権状況をめぐる批判声明を断念した。

 中国がその影響力を増大しても、平和的な台頭であれば、何も問題はない。友好的な隣国が平和的に台頭するのであれば喜ばしいことである。しかし、増大する影響力を、「膨張する中国」が如何に使うのか、それが日本に何をもたらすのか、が問題である。「氷のシルクロード」の開拓に邁進する中国は、今後は、南西諸島方面のみならず、津軽海峡や宗谷海峡でのプレゼンスを増大させてくるであろう。日本を取り巻く安全保障環境は、いっそう厳しいものになっていくことが予想される。日本は、中国の対日外交や「一帯一路」を、中国が中央アジアやヨーロッパで展開している朋友圏形成の延長上で語るべきではない。また、中国が「安全保障上の直接的な脅威」にはならないヨーロッパ人的な発想で、中国のユーラシア外交を考えるべきではない。パクスシニカをめざす中国の諸政策において日本が如何に位置づけられているのかを分析したうえで、日本が「一帯一路」へ如何に向き合うのかを考えるべきであろう。全人代の常務委員会は、昨年末から、「英雄的な殉難者の精神や愛国心の高揚」を目的とした「英雄烈士保護法」の法案を審議してきており、今年の全人代で同法が新たに制定される。同法は日中戦争時代に日本軍と戦ったとされている中共の「抗日神話」に対する批判を認めないものである。2014年に9月30日を「烈士記念日」と定めた中国は、烈士を記念する活動を執り行ってきた。その一環として発表された「抗日烈士・英雄リスト」には、存在しない人物までリスト入りしていたと指摘されたこともある。「歴史を書き換えようとしている中国」が、日本を如何に位置づけているのか、南西諸島方面をはじめとする日本周辺で如何に行動しているのか、中国の中長期的なねらいを冷静に分析してから、日本の対ユーラシア外交を我々は検討していくべきであろう。いま、ユーラシアで何が起きているのか?パクスシニカをめざす中国の「一帯一路」を、ビジネスチャンスの視角からのみ語るべきではない。(おわり)

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