河村洋氏からのご質問への回答
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河村洋氏からのご質問への回答 ← アフガニスタンとの関連で渡邊啓貴教授に質問  ツリー表示
投稿者:渡邊 啓貴 (東京都・男性・東京外国語大学教授・60-69歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-01-27 23:57 [修正][削除]
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No.4067
 ご質問ありがとうございました。的を射た質問だと思います。しかし同時に応えるのが容易ではない質問だと思いますが、以下お答えいたします。

 第一の質問については、私も妙案はありません。ただ、ユーラシアにおけるアフガニスタンの勢力的位置関係をもっと地政学的に考えていくことは必要かと思います。たとえば1979年第二次冷戦とか、新冷戦などと呼ばれたソ連のアフガニスタン介入事件への国際認識と対応です。この戦争がソ連崩壊のひとつの要因となったことは知られていますが、それに極端に強硬な反応をしたアメリカの対応が自ら養成したタリバンからのしっぺ返しを後に受ける原因となりました。このときヨーロッパはアメリカの介入に意外な気持ちを持ちました。アフガニスタン地域はもともとソ連の影響圏であるという意識がヨーロッパにはあったからです。ヨーロッパ諸国にとっては70年代のデタントムードにあった当時、アメリカのアフガニスタン介入は事態を複雑にするだけで、その必要・緊急性を測りかねたからです。テロに対する戦いは普遍的価値のあることですが、その地域性や現実的効用を考えると、反テロ政策とそのタッグの組み方には「地域性」と適性への考慮が必要だと考えられます。今後の対応としては原義として、すでにEUなどと多国間枠組みで行ってきた復興支援を存続させると同時に、過激派に対してはジョージ・ケナン流の「封じ込め」だと思います。つまり過剰反応をおこさないように刺激することなく、辛抱強くかつ注意深くその行動を制約し、過激派の自壊に導き、諸勢力の統合と国家建設に導いていくことだと思います。これまでの多国間枠組みでの経済社会インフラつくりのための協力の継続ですが、同時に交渉相手としてのカウンターパートや復興の母体を作っていくための人的資源の発掘の模索と育成がより重要です。いわば「橋渡し役」が日本にどこまで可能か模索していくことです。

 第二にも同様な考え方ができると思います。日本は当初より復興支援会議に代表を派遣しています。マリの事態でも英仏にアメリカが協力した形でしたが、西アフリカ経済共同体の協力がありました。受け皿として当該地域での安定や周辺国家との協力が不可欠です。別な言い方をすれば介入には、当該地域の安定を実現するための地域統合共同体やそれに準ずる受け皿が必要です。失敗国家・破綻国家の救済は難しいところですが、周辺地域での支えを強化するための協力をすることも必要だと思います。

 第三は、日本に何ができるのか、ということと何をしようとしているのか、何をすべきなのかということをきちんと整合性をもって、対外的に意思を伝えていくべきかと思います。そのためには日本外交のコンテクストを作るような努力が今後必要だと思います。つまり良いことは何でもする、というのは理想ですが、同盟関係や地域隣接国との諸問題を考慮するとおのずから行動は制限される。結局はその場その場の対応となる。それに今の日本では経済力も含めてそのリソースに制約がある。それでは結局有効な日本外交とはならないでしょう。

 「価値外交」「俯瞰外交」として広い視野から市場経済・デモクラシーの普及に努める外交というのは原理原則です。これをどのように肉化していくのか。その場その場での対応ではなく、関係改善や相手国の繁栄のためのシナリオを提示し、自らのコミットの道筋を明示することです。日本の考える国際平和ビジョンとそれに即した改善方法を相手国に示し、具体的提案をすることです。もちろん近隣諸国にとってはそれが日本外交の独善性だといわれるかもしれません。いきなり相手国の体制の是非論をする必要はありませんが、日本とのかかわりで外交問題の解決の道筋を具体的に明示し、議論に入る姿勢を明らかにすべきです。多国間枠組みの一協力者ではなく、直接的な「対話」の相手国として対話の場所を常に作っていくことです。場合によっては、日本の「独善性」(もちろん私たちがそう思っているわけではない)を議論することでもよいではないかと思います。そうした外交ビジョンをめぐる議論のコンテクストの中で、私たちの具体的な役割を相手に納得させる努力が必要かと思います。「こうなっては困る」「そうなったらこうしよう」ということではなく「正しいと思うのでこのように進めていく。将来の見通しや理想はこうなのだから今こうすべきだ」という問いかけをしていく。そうしたコンテクストの中での今の外交対応を正当化していく。当然日本外交そのものの長期的な見通しも求められることになります。簡単に言えば、相手に日本は特別なパートナーだと思ってもらうということです。

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