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日中関係「対立」から「接点」構築へ   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳) [投稿履歴]
投稿日時:2017-11-14 06:56 [修正][削除]
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No.4010
 2012年の野田政権による尖閣国有化以来、中国公船の侵入で険悪化してきた日中関係に一筋の光明が差し込んできた。新聞紙面でも「対中改善」「首相・習氏友好ムード」と活字が踊るが、果たして「本物」か。たしかに習近平にとっても安倍にとっても「本物」とするには、障害となる難問が山積している。まず、基本的に言って、習近平の主導する「一帯一路」戦略が、安倍・トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」と対峙するのか融合するのかは流動的だ。まだまだ矛盾要素は多く、「ガラス細工」の危うさを感ずるが、このチャンスを両国とも逸するべきではない。出来るだけ接触の機会を増やして、“接点”を見出し、来年にも首脳の相互訪問を実現して、方向を「地域の安定化」に向けて確たるものにしなければならない。安倍は2020年オリンピックの円滑なる運営まで視野に入れた対応をしているかのように見える。

 関係改善の芽は生じていた。5月に自民党幹事長・二階俊博らは、訪中で「一帯一路の」会議に出席。9月には外相・河野太郎と王毅が会談したが、なぜか河野はこれまでの外相が言及してきた南シナ海への懸念伝達を“封印”した。6日の日米首脳会談後の記者会見では安倍が「インド太平洋戦略」に関して「賛同する国があればいずれの国でも共同してやっていく」と微妙な発言をした。安倍は「一帯一路」と対峙する方向ではなく、「インド太平洋戦略」と融和させる方向で協力関係を築く姿勢に転じたかのようである。「一帯一路」が中国のアジア全域に対する軍事支配確立への突破口とならないように、参加して内側からけん制することも不可欠だ。アベノミクスの総仕上げにも「一帯一路」を“活用”して行く構えであろう。日本企業の間には、「一帯一路」をチャンスととらえて、積極的に参加すべきだとの声が強まっている。

 その上で11日の安倍・習近平会談が「かってない良好な雰囲気で開かれた」(首相側近)という状況に至った。安倍が、打って変わってニコニコ顔になった習近平に首脳の相互訪問を提案、習も心よく応じた。年内に懸案の李克強との日中韓首脳会談が開催される下地が整った。そして13日の安倍・李克強会談である。首相李克強は「最近の日中関係には積極的な変化が現れているが、一部に敏感な要因も存在する。双方の努力で日中関係の改善を強化しなければならない」と発言した。一連の発言と動きは、かつて尖閣諸島の領有権については「棚上げにする」という「密約」が成立したことを想起させる。これを裏付けるように1978年、副首相とう小平(当時)が日本記者クラブにおいて尖閣問題で「中日国交正常化の際も、双方はこの問題に触れないということを約束した」と発言している。今回も事実上の「亀裂要因棚上げ」ではないかと思う。安倍が李克強に「来年は日中平和友好条約締結40周年だが、戦略的な互恵関係のもと関係改善を強く進めたい」と発言したのも、関係改善最優先のなのであろう。この流れは東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも同様であり、各国とも南シナ海問題を「封印」して「対中接近」を際立たせた。共同声明にもこれまであった中国進出への「懸念」の文字が消えた。スカボロー礁への中国進出を懸念しているフィリピン大統領ドゥテルテですら、「中国と戦争するわけにはいかない。今は触れない」と言及を避けた。東南アジア諸国の大きな潮流は「対立を避け実利を求める」方向へと大きく蛇行し始めたかのようだ。

 こうした緊張緩和の傾向は中国が主張する「一帯一路」を、加速せざるを得ない状況となっている。背景には、日の出の勢いの中国と比較して米国の存在感の低下が著しいことが挙げられる。今後米国は南シナ海で「航行の自由作戦」をより頻繁に推進する方針だが、トランプが習との会談で中国の2500億ドル(28兆円)の「商談」に飛びついて、大喜びしている姿をみて、アジア諸国は「バスに乗り遅れるな」と対中傾斜が一段と強まったのだ。しかし、北朝鮮問題一つをとっても日米が「対中対話のための対話では全く意味がない。いまは 最大限の圧力をかけるときだ」(安倍)としているのに対して、習は「平和的対話で朝鮮半島の核問題を解決する」と真っ向から対峙している。これは極東戦略という安全保障上の基本中の基本について根本的な対立要因を日米と中国が抱えていることになる。ガラス細工たるゆえんである。しかし、気がついたときには中国の「覇権主義」が東・南シナ海を席巻していたという事がありうるのであり、「用心」は不可欠だ。習近平の微笑外交の裏には冷徹な計算があることを夢にも忘れるべきではあるまい。習近平は安倍との会談後「日中関係の新たなスタートとなる会談であった」と言明したが、「新たなスタート」は、日本の「対中追随」路線への幕開けとなる危険性を常に帯びている。

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