e-論壇「百花斉放」 e-論壇「百花斉放」 公益財団法人 日本国際フォーラム 公益財団法人 日本国際フォーラム
 「百花斉放」へようこそ。投稿へのコメントでないご意見は「新規投稿する」ボタンをクリックして投稿してください。
 なお、投稿記事を他所において引用、転載する場合は、その記事の出所が当e-論壇であることを明記してください。

投稿日で検索  //// 
キーワードで検索   
※キーワードはスペースで区切って複数の言葉を入力できます。
  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]
プーチン・ロシアはどこへ行くのか   
投稿者:伊藤 憲一 (東京都・男性・日本国際フォーラム理事長・70-79歳) [投稿履歴]
投稿日時:2015-05-12 11:20 [修正][削除]
>>>この投稿にコメントする
No.3272
 さる5月9日にロシアはモスクワで対ドイツ戦勝70周年を記念する式典を開いた。対ドイツ戦争はロシアでは大祖国戦争と呼ばれ、5月9日の戦勝記念日はソ連時代から毎年最も重要な祝日とされてきた。それが、今年はソ連崩壊後最大規模の軍事パレードとなり、「70年前のナチズムや日本軍国主義に対する勝利が世界をファシズムの支配から救った」として、それが「民主主義」の勝利であることも強調されたが、いざ祝典の当日となってみると、主要国首脳でモスクワにかけつけたのは、中国の習近平国家主席だけであった。

 このことは何を意味しているのであろうか。言葉で歴史を語るとき、そこには必ず話者の主観が入るということである。バルト3国を含む東欧諸国にとって第二次世界大戦は決して「解放」戦争などではなかった。抑圧する者がナチス・ドイツから共産主義ソ連に代わったというだけのことであった。1956年にはソ連軍がハンガリーに、1968年にはソ連・東欧5カ国軍がチェコに侵入して、対ソ離反の動きを見せていた両国の政権を鎮圧した。だから1989年のベルリンの壁の崩壊につづいて、1991年にソ連が解体されたとき、世界はこれを「ヤルタからマルタへ」の世界秩序の転換であるとして、歓迎したのであった。東欧諸国は初めて真の自由と独立を手にしたかに見えたのである。

 ゴルバチョフからエリツィンにいたる時代のロシアは「ヤルタからマルタへ」の世界秩序の転換に異を唱えることはなかったが、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と捉えるプーチンが大統領になってからのロシアは、ゴルバチョフやエリツィンのロシアとは別の道を選ぶようになった。私の見るところ、プーチンは共産主義者ではない。共産主義に対して幻想は抱いていないようである。だが、権力政治家として人心収攬の天才であるプーチンは、リューリック王朝、ロマノフ王朝に遡るロシア人の民族的欲求としての領土拡大欲を熟知している。それを自分の権力獲得に活用することを躊躇しない人物なのである。

 私は、日本国際フォーラムの理事長として1996年12月にチェチェン共和国(当時チェチェンはロシアとハサビュルト休戦協定を結び、準独立国の地位をもっていた)からホザメド・ヌハーエフ第一副首相を団長とする使節団を日本に招いたことがあるが、そのときヌハーエフ団長から平和と自立を求めるチェチェンの人々の痛切な願いを聴いた。しかし、プーチンが大統領になると、プーチンはチェチェン人を「テロリスト」に仕立て上げて、たちまち第二次チェチェン戦争の口実を見つけることを躊躇しなかった。

 当時、私は「プーチンはチェチェンだけで満足することはなく、このまま放置すれば、必ずその触手を他の隣接諸国にも伸ばすであろう」と予言したが、2008年のグルジア戦争、2014年のクリミア編入はこの予言が的中したことを示すものであった。プーチンはさらにウクライナ東部にも介入しようとしているが、このようなプーチン・ロシアの「力による現状変更」こそは、第二次世界大戦で世界の「民主主義」が敵とみなしたファシズムの常套手段だったのであって、かつて第二次世界大戦を戦った主要国の首脳たちがこのようなロシアの対ドイツ戦勝70周年記念式典に欠席したのは、あまりにも当然のことであった。それにしても、そのような場に中国の習近平国家主席が席を連ねたことは、果たして中国のためによかったのであろうか。私は疑問に思う。

註:本稿は、伊藤憲一個人の見解であって、日本国際フォーラムの見解を代表するものではない。

No タイトル 投稿者 日時
4200 米ロ首脳会談と世界秩序の行方 河村 洋 2018-07-16 13:25
4199 はやぶさ2への期待 船田 元 2018-07-13 10:43
4198 死刑制度をめぐる議論と憲法9条 篠田 英朗 2018-07-12 18:36
4197 貿易戦争には「利」をもって応えよ 四方 立夫 2018-07-11 12:30
4196 安倍一強にないないづくしの候補ら 杉浦 正章 2018-07-10 05:20
4195 不確実性増大、トランプの陥穽 鍋嶋 敬三 2018-07-09 11:13
4194 わが国の死刑制度について感じたこと 犀川 幸雄 2018-07-07 22:36
4193 我々は沖縄戦と島守の塔の存在を忘れてはならない 船田 元 2018-07-05 15:02
4192 米に北の「非核化」に対する懐疑論 杉浦 正章 2018-07-05 06:48
4191 トランプ大統領はなぜ国連人権理事会を離脱したか 赤峰 和彦 2018-07-04 20:22
4190 中国国内経済に要注意 四方 立夫 2018-07-02 11:02
4189 (連載2)マクロン大統領は西側の道徳的普遍性を代表 ←  (連載1)マクロン大 河村 洋 2018-06-30 23:55
4188 (連載1)マクロン大統領は西側の道徳的普遍性を代表できるか 河村 洋 2018-06-29 23:15
4187 党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を 杉浦 正章 2018-06-28 06:29
4186 長島昭久先生のご提言に賛同します ←  (連載1)米朝首脳会談後の日本外交 四方 立夫 2018-06-27 14:47
4185 今こそ、新しい国際的枠組み「G11」を設立すべきだ 松井 啓 2018-06-27 11:20
4184 米朝首脳会談とその後 船田 元 2018-06-26 11:24
4183 秩序破壊に暴走するトランプ外交 鍋嶋 敬三 2018-06-25 10:53
4182 (連載2)米朝首脳会談後の日本外交 ←  (連載1)米朝首脳会談後の日本外交 長島 昭久 2018-06-22 10:32
4181 (連載1)米朝首脳会談後の日本外交 長島 昭久 2018-06-21 10:30

  <<前の20件 | 最新|次の20件>>  [ スレッド一覧 | *タイトル一覧 | 投稿一覧]