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2024-10-17 08:57
(連載2)「アフリカの角」地域に立ちこめる暗雲
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
エチオピアとソマリランドは、その後も軍事訓練などを含めた交流を活発化させている。代わりにソマリア連邦政府実効統治地域に展開していたアフリカ連合の平和活動(現在はATMIS、来年からAUSSOMという名称のミッションに移行する予定)の中核を担っていたエチオピア軍が、ソマリアから撤収することになった。長期にわたってソマリアにおけるアルシャバブ掃討作戦に従事してきたエチオピア軍の撤退は、現地社会に波紋を投げかけ、残留要請の運動が起こったくらいであった。しかしソマリア連邦政府は、むしろエチオピアと険悪な関係に陥って久しいエジプトに急接近し、軍事援助を引き出すとともに、エチオピアに代わるAUSSOMへの兵力提供をする約束を取り付けた。エジプトが、エチオピアに代わり、アルシャバブ掃討作戦に従事することになるのである。これは地域情勢に、様々な影響を与えていくだろう。
エリトリアは、現在のアビイ政権が成立してすぐにエチオピアと和解を果たした。そして2020年に勃発したエチオピア北部におけるティグレイ紛争では、エチオピア連邦軍とともにティグレイに展開して軍事介入を行った。その際のエリトリアの蛮行は、悪質な戦争犯罪行為として、激しく非難された。もともとエリトリアとエチオピアの国境地帯にあたるティグレイ州の勢力と、エリトリアは対立的な関係にある。
しかしこのティグレイ紛争が、2022年にアフリカ連合の調停で「プレトリア合意」という停戦合意にたどり着いた。エチオピア国民にとっては凄惨な内戦の終了は歓迎すべきことであり、ティグレイでは戦後復興の再建に向けた政策が導入されてきている。日本政府も、国際機関への資金提供などの形をとって、復興支援に関与する姿勢を見せている。しかしこのティグレイ紛争の終結は、エリトリアにとっては、望ましいことではなかった。「プレトリア合意」後は、エチオピアとエリトリアの関係は、冷却化したとみられていた。その状況で、エリトリアの首都に、エジプトとソマリアの政治指導者が集まり、三カ国の首脳会議を開いた。そのため、エチオピアを取り囲む包囲網の成立として、アフリカを見ている者たちの間では、大きな注目を集めることになった。
こうした状況は、日本にいると単にニュースで見ることがないだけでなく、そもそも何も関係がない、というふうに感じるものであるかもしれない。しかし石破首相も、あらためて「自由で開かれたインド太平洋」を推進する所信表明演説を行った。「インド洋」は、東アフリカまで続いている。エチオピアと国境を接するジブチには、自衛隊の唯一の海外基地があるが、ジブチ政府は地域情勢の悪化に懸念を深めている。三カ国首脳が集まったエリトリアが面しているのは紅海で、ガザ危機に反応したイエメンのフーシー派が船舶攻撃を行い続けているため、海上交通がほとんど遮断されているような地域だ。フーシー派と交戦状態にある米軍も展開しており、中東情勢をめぐる事情での緊張も高まっている。いくら日本から離れているといっても、21世紀の今日、とにかく全くゼロの関心、というわけにはいかないはずである。(おわり)
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(連載1)「アフリカの角」地域に立ちこめる暗雲
篠田 英朗 2024-10-16 08:47
(連載2)「アフリカの角」地域に立ちこめる暗雲
篠田 英朗 2024-10-17 08:57
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