本稿では、世界において日本がどのように見られているか、各国での世論調査の結果を紹介したい。ただし、調査時期は国により多少ずれている。
2009年11月から2010年2月にかけて、BBCと読売新聞が共同で実施した33ヵ国を対象とした世論調査によると、国際社会に影響を及ぼす主要17ヵ国および国際機関の中で、日本は「世界に良い影響を与えている」との評価は53%、「悪い影響を与えている」との評価は21%であり、「良い影響」が大幅に上回った。「良い影響」はドイツが59%で最高であり、日本は欧州連合(EU)と並んで第2位の名誉を占めた。
ちなみに、米国は「良い影響」が46%、「悪い影響」が34%、中国は「良い影響」が41%、「悪い影響」が38%であった。
日本の外務省は、毎年対象国を定めて現地の調査機関に委託して世論調査を行っているが、代表的な国での調査から次のようなことが判明した。
1 米国
2011年2月から3月の世論調査では、対日信頼度は、一般の人々(1200名が対象)で84%、有識者(200名)で90%と高かった。
日米関係を「極めて良好」ないし「良好」と答えた割合は、それぞれ77%、87%と過去最高となった。おそらく、最近の中国の拡張的ないし覇権的行動を見た米国人が、日米同盟の重要性を再認識したことが影響していると思われる。
これは、「日米同盟を維持すべき」と考える割合がそれぞれ92%、91%といずれも9割を超えたことにも表れている。
日本の国連安全保障理事会(以下安保理という)常任理事国入りについて、有識者で支持したのは52%であり、以下に述べる他の国々よりは、その割合は低かった。これは日本による世界の平和と安全への寄与に対する懐疑心もあろうが、米国人の国連に対する無理解や冷淡な感情とも無関係ではないと思われる。
2 アセアン主要6カ国
2008年2月から3月に行われたインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのアセアン主要6カ国の調査では、日本への好感度が高く定着していることが分かった。
日本との関係については、各国とも9割以上が「友好関係」「どちらかというと友好関係」にあると答えた。同じように、9割以上が、日本を友邦として「信頼できる」「どちらかというと信頼できる」と回答した。
ただ、アセアンにとって重要な国としては、日本を第1位とする意見(インドネシア、フィリピン、ベトナム)と中国を第1位とする意見(シンガポール、マレーシア、タイ)とに分かれた。後者の3カ国が日本より中国を重視するのは、人口に占める華人の割合が高い(それぞれ75%、25%、5%前後)ことも影響していると思われる。
ちなみに、日本の安保理常任理事国入りを支持したのは、安保理の機能を承知している人々の中で78%と高い割合であった。
また、日本のODAに対しては92%が役立っていると答え、日本企業の進出にも93%が好意的であり、アジアの発展に対する日本の積極的役割に対しても87%が肯定的であった。
3 インド
2009年2月の対日世論調査では、76%が日印関係を「非常に良好」または「良好」と回答した。インドは伝統的に親日であるが、インドにとっての重要国としては、米国(48%)、ロシア(30%)に次いで日本(14%)は第3位であり、また、日本は信頼に足ると答えたのは92%の高率であった。日本の対インドODAは世界最大の規模であるが、これについては79%が役立っていると回答し、また、日本企業のインド進出についても94%が歓迎するとしている。ちなみに、回答者の6割以上が日本語学習に関心を示している。
4 ブラジル
ブラジルは、日本人移民の子孫が最も多く、また国造りに貢献したので、大変な親日国である。2008年には、日本人のブラジル移住100周年行事がたくさん行われた。その機会に、日本外務省が行った世論調査では、74%が日伯関係は友好的であると回答した。日本は、米国(78%)に次いでよく知られた国(58%)であり、将来有望な国としては中国(45%)、インド(11%)より高い46%であった。75%が日本の安保理常任理事国入りを支持した。72%が日本のブラジル経済発展への貢献を評価し、また日系人のブラジルへの貢献については81%が評価した。
5 欧州主要国
2007年の英国、ドイツ、フランス、イタリアの4ヵ国の世論調査においては、日本は「信頼できる」ないし「どちらかと言えば信頼できる」の合計は、英国72%、ドイツ88%、フランス89%、イタリア96%、平均で86%と押しなべて高かった。
EUにとって重要な国は、4ヵ国いずれにおいても第1位は米国、第2位は中国であった。日本が重要と回答したのは、英国6%、ドイツ14%、フランス3%、イタリア3%とかなり低かった。
日本が安保理常任理事国になるべきとの意見については、いずれの国でも3分の2程度を占めた。
6 ロシア
2010年3月の調査結果では、日露関係は重要と答えたのは90%に上り、日露関係は「とても良好」ないし「良好」の合計は70%であった。
しかし、北方領土については、日露双方の立場を知っていたのは47%、そのうち両国が相互に合意すべきと考えるのは32%、一方で53%はロシアに帰属すると答えた。
この1~2年以来、ロシアではナショナリズムが高まっており、今ならどうであろうか。
7 南アフリカ
最後に、途上国でもあり、遠い国でもある南アフリカがどのような認識を持っているかを知ることは、多くの途上国の対日感情を推測するうえで有効であろう。
2011年2月の世論調査の結果では、日本を「信頼できる国」と回答したのは71%、「信頼できない」はたった5%であった。また、日本との友好関係は、90%が「絶対重要」ないし「重要」と答え、そうでないのは6%にとどまった。
日本企業の進出については、93%が歓迎と回答し、技術力(87%)などを理由に挙げた。
日本の安保理常任理事国入りについては、66%が支持し、反対(5%)を大きく引き離した。
各国共通の認識として、日本の特徴について、「豊かな伝統と文化」「経済力・技術力」「平和な先進国」「アニメ、ファッション、料理など新しい文化の発信」「自然の美しさ」などを挙げた。
また、日本人に対しては、勤勉、協調的、文化を大事にする、礼儀正しいなどの評価であるが、能率的、創造性などを挙げるところもあった。
日本に期待する国際貢献としては、世界経済の発展、科学技術の発展、途上国への援助、地球環境保全などが挙げられた。
最近、わが国の政治は二流に堕しているが、日本および日本人に対するこのような好意的な評価と高い期待を裏切らぬよう心すべきことである。
[「自警」2011年8月号「日本から見た世界 世界から見た日本 第5話」より転載]
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平林博 日本国際フォーラム副理事長
1940年東京生まれ。東京大学卒業後、1963年外務省入省。1991年から2007年までに、在米国日本大使館経済公使、次いで同大使館特命全権公使、外務省経済協力局長、総理官邸の内閣外政審議室長、駐インド特命全権大使、駐フランス特命全権大使、査察大使をそれぞれ歴任。現在、グローバル・フォーラム有識者世話人、東アジア共同体評議会常任副議長、日印協会理事長等を兼任。 |
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