第26政策提言
「新しい脅威と日本の安全保障」スタート

基調報告する佐瀬昌盛主査(中央)
 当フォーラムは、その第26番目の政策提言として「新しい脅威と日本の安全保障」を取り上げることとなり、その第1回政策委員会がさる7月20日に東京全日空ホテルで開催された。
 当日は、伊藤憲一政策委員長の司会のもとで、まずタスクフォース主査の佐瀬昌盛政策委員(拓殖大学海外事情研究所所長)より「今後の日本は、国際テロなどの『新顔』の脅威に対処するとともに、北朝鮮の核兵器問題や台湾海峡問題などの従来から存在するが新しい局面を迎えている『更新』された脅威に対処することが必要となる」との基調報告がなされ、タスクフォース・メンバーの三好範英読売新聞社国際部次長、宮坂直史防衛大学校助教授、高橋杉雄防衛庁防衛研究所助手から補足説明がなされた。
 このあと、伊藤義郎、井上明義、グレン・フクシマ、秋山昌廣、今井隆吉、江畑謙介、大木浩、木村明生、坂本正弘、田久保忠衛、田中靖政、永野茂門、畠山襄、茂木賢三郎、廣野良吉、屋山太郎などの政策委員41名およびゲストの鶴岡公二外務省総合外交政策局審議官の出席を得て、活発な審議が行われた。
 「非常に包括的な問題提起で、その大筋には同感する」とのコンセンサスが表明された一方、「サブ・ナショナル・レベルで起こるテロ等の低強度紛争は『新しい脅威』と呼ばれているが、海外では1970年代より議論されており、今やっと議論されるようになった日本は遅れている」「中国の台頭により、アジア地域では地政学的な変化が起こっており、台湾と周辺海域の問題を超えた安全保障政策が必要だ」「日本の専守防衛について再考し、人を挑発せず必要最小限の攻撃力をもつという『非挑発的防衛』といった方針を考慮に入れるべきだ」「憲法改正を論じるのであれば、憲法改正そのものか、憲法解釈の変更か、について熟考すべき」などの議論が百出した。
 次回政策委員会では、柳澤協二内閣官房副長官補を講師に迎える予定。






第26政策提言「新しい脅威と日本の安全保障」に取り組むにあたって
タスクフォース主査 佐瀬昌盛

 2001年の9・11国際テロ、2003年春のイラク戦争で、どの国でも安全保障の論じ方が大きく変わった。主要国の場合、その論じ方には軌を一にしている側面と、そうではなく、地域的特性が重視される側面とがある。国際テロ、大量破壊兵器拡散、失敗国家など、「新しい脅威」に対する安全保障論は前者に当たる。では、元来が冷戦に由来する「古い」脅威は消えたか。たとえば欧州では「ソ連の軍事的脅威」は消え、今日の安全保障論は「新顔」の脅威を主対象にしている。「国防」の重要度は最劣後順に落ちた。
 日本の場合は違う。核・ミサイル開発に躍起の北朝鮮、経済的躍進を背景とした中国の台湾に対する軍事的威圧――それらは、冷戦に由来する脅威源からくる「更新」された脅威である。だから、日本にとっては「国の防衛」の重要性はいささかも減じていない。と同時に、「新顔」の脅威の深刻さも正面から直視しなければならない。つまり、「複線型」の脅威に対する安全保障が求められている。
 だが、日本の対応は正直言って鈍い。憲法から、あるいは集団的自衛権問題に見るように憲法解釈から、変えてかからなければならない。この提言構想中に、米国の在外展開兵力再編も政治日程化してきた。こういう時期に提言できることに、武者震いしている。






第25政策提言
「日本の文化と教育:その課題と対策」審議進む

議論を交わす政策委員たち
 第25政策提言「日本の文化と教育:その課題と対策」の第3回政策委員会がさる6月7日(月)東京全日空ホテルで開催された。
 当日は、袴田茂樹タスクフォース主査から、これまでの2回にわたる政策委員会での議論を踏まえた「政策提言中間案」が報告された。すなわち「具体的な提言を提示するよりも、大きな哲学及び方向性を示唆することが重要と考えた。日本国際フォーラムの理念、文明観といったものを出せるようにしたい」との報告がなされた。
 出席した政策委員は、伊藤憲一政策委員長のほか、次田雅俊、茂木賢三郎、阿曽村邦昭、金森久雄、黒田眞、高瀬保、田中靖政、山中燁子など12名であったが、タスクフォース提出の「中間案」については、「なぜ日本国際フォーラムが文化と教育の問題を論じるのか、国際問題の専門家たちの提言にどのような意味があるのか、それをきちんと示す必要がある」「すべての人間を一律に扱う『悪平等』を克服し、平均層の『底上げ』とできる人間の『プッシュ』が必要」「語学教育を早めに始めるべき」「専門だけにとどまらない底辺の広い人材育成を」「躾の重要性」などの意見が次つぎと出された。






第25提言
タスクフォース テーマ改題を提案

 第25政策提言タスクフォース(主査:袴田茂樹政策委員)は、7月9日に臨時タスクフォース会合を開催し、テーマの改題を政策委員会に提案することを決定した。6月7日開催の第3回政策委員会まで「日本の文化と教育:その課題と対策」というテーマについて、「日本国際フォーラムの提言としては、外交政策との関連で文化、教育を論ずるべきではないか」「外交政策の観点からみれば、文化はその国のソフト・パワーとして位置づける必要がある」などの意見が表明されたことを受け止めて、この際テーマを「世界の中の日本:その文化と教育」と改題し、提言の論点を絞ることを提案することに決定した。
 この決定に基づき、タスクフォースでは「第1部:論考」において日本の古典・現代の文化をソフト・パワーという視点から捉え直し、また「第2部:提言」においても「日本のソフト・パワーを担う人材を育成せよ」との視点を導入し、第4回政策委員会への提出をめざして提言最終案作りに注力することとなった。




シュミットPNAC所長ら来訪

シュミット氏(右)を迎えて
 さる7月28日、「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC)のゲーリー・シュミット所長とエレン・ボーク副所長が当フォーラムを来訪し、当フォーラム関係者と意見交換した。
 PNACは、ブッシュ政権の外交・安全保障政策に大きな影響を与えたことで知られるいわゆる「ネオコン」派の牙城であり、その所長、副所長を迎えた当方としても、議論の成果に期待するところは大きかった。当方からは、伊藤憲一理事長兼所長のほか、神保謙研究主幹、吉崎達彦双日総合研究所副所長、伊藤剛明治大学助教授など6名が出席した。
 当日のシュミット所長の主要な発言ぶりは、つぎのとおりであった。
 「PNACは、アジア太平洋地域における将来の米国の同盟体制のあり方について、1年半にわたり研究してきた。日本や韓国といった民主主義国と米国との間の同盟体制は、今後の国際安全保障環境の変化に適応できるのか。その再構築のためには何が必要か、というのがPNACの問題意識である」
 「アジア太平洋地域における安全保障体制の構築のためには、ASEANやASEAN地域フォーラム(ARF)では、機能的に限界がある。ARFはこの地域における同盟関係を『置換』するのではなく、『補完』するものだ。核兵器保有疑惑のある北朝鮮や将来の戦略の不透明な中国の存在を考えると、結局は北大西洋条約機構(NATO)のような共通の価値観に根ざした同盟体制の構築しかないのではないか」






「日本の対テロ政策」研究会スタート

 6月1日に「日本の対テロリズム政策:多層型対テロ抑止戦略の構築」研究会が新しくスタートした。リーダーには神保謙研究主幹が、メンバーには高橋杉雄防衛庁防衛研究所助手、古賀慶研究員補が就任した。
 同研究会は、「テロリズムは抑止できる」という立場から、「先制行動」理論を超える新しい抑止理論を求めて、グローバル・レベル、地域レベル、国内レベルの3レベルにおいて、新しい対テロリズム政策の理論的裏付けとそれに基づく提言を試みる。研究会報告書は11月末日に完成する予定。






「すべては教育にあり」
評議員・政策委員 内館 牧子 

 私は仕事でよく中国に行くのだが、2002年4月、香港のエッセイストのテレサ・イップさんに『週刊香港』の切り抜きを渡された。
 「マキコ、見てよ。何て嘆かわしいことッ。今に香港は中国に敵わなくなるわ。若い人の意識がまるで違うの」
 その切り抜きには、香港と中国本土の中学生894人が回答したアンケート結果が出ていた。質問は、
 「あなたの最も崇拝する人物は誰ですか?」
 というもので、1位から10位までの回答が並んでいた。香港の1位は、アイドル芸能人の陳慧琳。そして、第9位に「キリスト」が入った以外は、すべて芸能人である。10人中9人までが、特にアイドルで占められている。
 一方、中国の中学生の答えは、
1位 周恩来
2位 ビル・ゲイツ
3位 毛沢東
4位 芸能人(記事中は実名)
5位 父親
6位 芸能人(記事中は実名)
7位 芸能人(記事中は実名)
8位 アインシュタイン
9位 鄧小平
10位 母親
 この違いに、香港の大学教授が衝撃の談話を発表していたが、私は日本の中高生でも似たような結果が出る気がする。以前に、私は日本の女子中学生に取材したことがあるが、日本の首相の名前をフルネームで言えず、
 「うちら、政治とか関係ないじゃないですかァ」
 と、長いつけ爪で茶髪をかきあげていた。そんな濃い化粧の女子高生が、「明日、田舎からババアが来やがるけど、知らねえよ。うちら、学校の帰りにカラオケだもんよ」
 というのを聞きながら、この子たちを一方的に責めるわけにもいかないとも思っていた。現代日本の教育がこの子たちを作ったのであり、学校教育であれ家庭教育であれ、大人の責任だ。
 ただ、昨今の日本の大人はろくに挨拶もできないレベルだ。責任も取れまい。先のアンケートを日本の大人にも試したなら、香港の中学生と大差ない答えが出たりはしないだろうか。






国際政経懇話会
平沼赳夫議員を迎えて

談話を行う平沼赳夫議員(中央)

 「国際政経懇話会」の7月例会がさる28日開催され、当フォーラムの評議員・政策委員でもある講師の平沼赳夫衆議院議員から、「参院選後の日本の政治」と題し、「今後の3年間大きな国政選挙はないが、自民、民主両党とも各種の内部矛盾を抱えており、そのまま二大政党確立とはならず、いずれ大きな政局が来る」等のご講話を伺った。
 当日は、今井敬、大河原良雄、歌田勝弘、中村公一、服部靖夫、グレン・フクシマなど18名が出席した。









監事監査実施さる

 当フォーラムの「2003年度収支決算書」案の監査が、6月4日に当フォーラム会議室において頌和公認会計士共同事務所の後藤俊二、宮尾克己両公認会計士陪席のもと、市川伊三夫、白石勝、両監事によって行われた。
 事務局より収支決算書案について説明の後、両監事によって証拠書類等の精査が行われ、「適正」との判断が示された。






「日米安保共同体」シンポジウム

 当フォーラムが、国際交流基金日米センターの助成と米ジョージ・ワシントン大学・シグール・センターの協力を得て、2002年度から実施している日米共同研究プロジェクト「日米同盟の再定義:日米安全保障共同体の可能性」は、いよいよその最終年度を迎えている。
 本年11月には、ワシントンにおいて、添谷芳秀慶応大学教授(日本側リーダー)及びマイク・モチヅキ・ジョージ・ワシントン大学教授(米国側リーダー)を中心とする日米双方のプロジェクト・メンバーが集合し、3年間の成果を総括する「日米合同シンポジウム」を実施する予定である。在ワシントンの政官学各界の関係者の参加を得て、研究成果を公表する。
 本プロジェクトは、日米同盟を「日米安全保障共同体」という新しい枠組みで再定義することにより、従来の同盟の機能を強化するだけでなく、地域的な文脈の中で新しい安全保障秩序を構築することができるとのアプローチを取っている。そのために「安全保障共同体と日米同盟」、「伝統的・非伝統的脅威と日米同盟の役割」、「アジア太平洋における地域的な安全保障枠組みと同盟関係」などの様々な角度から問題を掘下げている。
 なお、最終的な研究成果は、英文出版物として刊行される予定であるが、その前にも、日・英両語によるダイジェスト版の出版が予定されている。






■ 新規入会会員・新規就任評議員・政策委員の紹介
(6-8月分、入会順)

  新規入会会員の紹介

 〔法人準会員〕 <3口>
 神戸学院大学アジア
 太平洋研究センター
 〔個人準会員〕 4名(氏名省略)

新規就任評議員・政策委員の紹介

  〔評議員〕 西村英俊
平沼赳夫
〔財界人政策委員〕 鈴木惇嘉
西村英俊
〔有識者政策委員〕 中西寛
平沼赳夫






理事会、評議員会開催さる

第35回理事会・第33回評議員のもよう
 さる6月16日、当フォーラムは東京全日空ホテルにおいて、今井敬(会長)、伊藤憲一(理事長)、柿澤弘治、神保謙、田久保忠衛、中村公一、水上健也、屋山太郎他18名の理事、金森森久雄他1名の顧問の出席を得て、第35回理事会を、また長谷川和年(議長)、伊藤英成、井上明義、黒田眞、田島高志、廣野良吉他41名の評議員の出席を得て第33回評議員会を、それぞれ開催した。
 理事会、評議員会は、2003年度事業報告書案および2003年度収支決算書案を審議、承認したが、理事会は、さらに平沼赳夫衆議院議員、西村英俊双日ホールディングス社長の2氏を新評議員に選任するとともに、新たに財界人政策委員、有識者政策委員として各2名ずつを委嘱する件につき、審議、承認した。これにより、政策委員の総数は180名となった。






11月にGFと「日米韓対話」共催

 日米韓三国調整グループ(TCOG)の役割を共同研究している当フォーラム、米国タフツ大学フレッチャー・スクール、韓国延世大学外交大学院の三者は、グローバル・フォーラム(GF)との共催で、11月18-19日に「朝鮮半島の将来と日米韓安全保障協力」と題する「日米韓対話」を開催することを決定した。なお、共同研究の中間成果はhttp://www.ifpa.org/projects/tcog.htmで公開されているので、乞閲覧。




吉冨、神保両政策委員「東アジア議会」に参加

 「東アジア共同体」の実現をめざすトラック3のエンジンとして、昨年8月クアラルンプールで、マレーシア戦略国際問題研究所の主催する「東アジア議会」が開催され、当フォーラム関係者が多数出席した(『会報』昨年10月1日号既報)が、その第2回が6月21~23日に開催され、当フォーラムからは吉冨勝政策委員、神保謙研究主幹の2名が参加し、日本側の声を伝えた。 






フォーラム活動日誌(6-8月)

6月4日 市川伊三夫、白石勝両監事による決算監査
6月7日 第25政策提言第3回政策委員会(袴田茂樹主査他14名)
6月7日 第25政策提言第5回タスクフォース会合(袴田主査他2名)
6月16日 第35回理事会・第33回評議員会(今井敬会長他30名)
6月20-24日 神保謙研究主幹「East Asia Congress」出席のためクアラルンプールへ出張
6月21日 B. de Montferrand駐日仏大使晩餐会(伊藤憲一理事長)
6月23日 第164回国際政経懇話会(近藤誠一外務省文化交流部長他)
7月7日 鄭寅俊駐日韓国大使館公使参事官来訪(伊藤理事長)
7月9日 第25政策提言第6回タスクフォース会合(櫻田淳、耳塚寛明、中西茂メンバー)
7月14日 第25政策提言タスクフォース櫻田メンバー他、近藤外務省文化交流部長を訪ね、意見交換
7月20日 第26政策提言第1回政策委員会(佐瀬昌盛主査他41名)
7月20日 第26政策提言第2回タスクフォース会合(佐瀬主査他3名)
7月28日 第165回国際政経懇話会(平沼赳夫衆議院議員他17名)
7月28日 G. シュミットPNAC所長来訪(伊藤理事長他5名)
8月8日―10日 神保研究主幹「East Asia Economic Summit」出席のためクアラルンプールへ出張
[注]  第25提言「世界の中の日本:その文化と教育」(袴田主査)
第26提言「新しい脅威と日本の安全保障」(佐瀬主査)






事務局便り

 この夏、日本国際フォーラム「分室」がリニューアルされました。同居していた日本紛争予防センターが六本木の新事務所に移転したため、壁を取り外す内装工事を行って、35名収容可能の大会議室をオープンさせました。
 早速この会議室を使って、オンASEAN事務総長やアミタイ・イスラエル政治研究所副所長を迎えての「外交円卓懇談会」が企画、実施されましたが、「この会議室でどんな会議ができるだろうか」と夢が膨らんでいます。







財団法人日本国際フォーラム(JFIR)トップページへ||このサイトに関するお問合せ