東アジア・シンクタンク・ネットワーク設立会議、北京で開催さる

記念撮影する伊藤理事長、王洛林社会科学院副院長、唐家セン前外相(前列中央左から)

 「東アジア地域統合」の強化を目指す各種のトラック1.5(官民複合)の動きが表面化しつつあるが、そのトップを切って、さる9月29‐30日に北京で「東アジア・シンクタンク・ネットワーク」(NEAT)を設立する国際会議が開催された。
 NEATは、ASEANプラス3首脳会議の要請により「東アジア・ヴィジョン・グループ」と「東アジア研究グループ」が提出した報告書の中で提案されたアイデアであったが、本年5月のASEANプラス3外相会議で中国政府がその設立の音頭を取ることを申し出て、承認されたものであった。
 会議にはASEAN10カ国と中国、日本、韓国からシンクタンク代表や学識経験者が多数参加し、今後地域内のシンクタンクをネットワーク化し、東アジア地域協力強化のための知恵を動員してゆくことが確認された。日本からは「国内調整窓口」(Country Coordinator)となる日本国際フォーラムを代表して神保謙研究主幹が出席したほか、学識経験者として田中明彦、廣野良吉、吉富勝、平塚大祐、伊藤憲一の5名が参加した。
 会議には中国側から唐家セン国務委員も出席し、「東アジア協力の強化のためには、政府間の協力だけでなく、シンクタンク間の協力が重要だ。NEATはASEANプラス3の政府間プロセスによって創設され、政府への提言が期待されている。それに応えてほしい」との発言がなされた。
 また、初日の歓迎夕食会ではゲストを代表して伊藤憲一当フォーラム理事長が挨拶したが、その機会に東アジア統合に関する域内シンクタンクの政策提言の例として、日本国際フォーラムの2つの提言、すなわち第22政策提言「東アジアにおける安全保障協力体制の構築」第23政策提言「東アジア経済共同体構想と日本の役割」の内容が紹介された。
 会議は、NEATの中央事務局を中国社会科学院内に置くこと、各国Country Coordinator は自国のメンバー(シンクタンク、個人有識者)を選定し、中央事務局に報告すること、次回会合は明年にタイで開催すること等を決めて、30日散会した。


政策委員会において報告する袴田
茂樹タスクフォース主査(中央)

第25提言スタート
「日本の文化と教育」

 当フォーラム政策委員会は、その第25番目の政策提言として「日本の文化と教育:その課題と対策」を取り上げることとなり、その第1回会合が11月20日に開催された。
 まず、タスクフォース主査の袴田茂樹政策委員(青山学院大学教授)より「明治以降そして戦後も、日本における文化や教育は、近代化あるいは戦後復興といった実利的な目的のために、その手段になるという傾向が強く、近世以来の日本にあった遊び心の非実用的な文化は貧血化した。先進国に追いつくという目標を達成し、ポスト工業化社会、ポスト近代化社会の入り口にさしかかった日本は、国際的にも、国内的にも、その文化や教育のあり方が問いなおされている」との基調報告がなされた。
 出席政策委員からは「日本国際フォーラムらしい提言を目指すべきだ」「グローバル・コミュニティーにおける日本の文化の役割は何か」「文明間対立の中で『第三文明』としての日本の役割を考えては」等の意見が出された。


第24提言「新しい世界秩序と日米同盟の将来」中間案発表さる

提言中間案を報告する伊藤主査
(中央)

 第24政策提言「新しい世界秩序と日米同盟の将来」の第3回政策委員会がさる10月6日(月)東京全日空ホテルで開催された。
 当日は、伊藤憲一タスクフォース主査から、これまでの2回にわたる政策委員会での議論を踏まえた政策提言中間案が報告された。すなわち「問題意識を『米国か、国連か』という二者択一論からスタートさせるのではなく、『日本の志は何か』というより高い次元の哲学論、戦略論からスタートさせた。新しい世界秩序として、国連、米国それぞれの主導する秩序につきそれぞれの可能性と限界を検討し、結論として『不戦共同体秩序』の構築を提案した。この場合、日米同盟の運営に当たっては、日本外交のより大きな主体性が求められる」との報告がなされた。
 委員会には、吉田春樹委員長代行のほか、秋山昌廣、有馬龍夫、伊藤英成、遠藤浩一、金子熊夫、木村崇之、坂本正弘、澤英武、高島肇久、田久保忠衛、堂之脇光朗、永野茂門、屋山太郎等32名の政策委員が出席し、「日本の常任理事国入りが認められないのなら、国連分担金の支払いを凍結せよ」「『不戦共同体』の理念を掲げて日本の外交・防衛の自主性を主張するのなら、憲法を改正すべきではないか」「日本は米国から離れようとしていると誤解されない配慮が必要だ。日米は同じ海洋国家として『運命共同体』だということも指摘すべき」等の意見が次つぎと出された。


第4回親善訪中視察団
「東アジア経済共同体」を議論

 中国国際友好連絡会の招待を受けて、当フォーラムはさる9月15日から20日まで吉田春樹副政策委員長(団長)、神保謙研究主幹(副団長)、石河正夫、成田弘成、伊藤将憲各個人会員(団員)の5名から成る第4回親善訪中視察団を、北京、南京、無錫、上海の各地に派遣した。
 今回は「東アジア経済共同体の可能性」を視察テーマに設定し、北京、上海での中国側有識者との意見交換会、南京でのFIAT自動車工場の見学、江蘇省華阻県華西村モデル農村の視察等、盛り沢山の日程をこなした。

中国国際友好連絡会と議論する吉田訪中団長 (左から3人目)

 


チェチェン映画鑑賞会開催さる

 11月16日当フォーラム「チェチェン問題研究会」(伊藤憲一幹事)は、都内で「教育・科学・文化の記録映像を見る会」(岡田一男代表)との共催で、オランダの社会派映画監督プッターの撮影したドキュメンタリー映画「新帝国の創生」鑑賞会を開催した。
 1997年に来日した「チェチェン使節団」団長のヌハーエフ同国副首相を主人公とし、その後のかれのチェチェン国家建設に向けた動きを追っている。当日は、当フォーラムから伊藤憲一、木村明生ほか5人が参加した。

映画終了後、感想を述べる伊藤理事長


第25提言「日本の文化と教育:その課題と対策」に取り組むにあたって

タスクフォース主査  袴田 茂樹

 日本国際フォーラムの第25政策提言は、従来の政治、経済から離れて、初めて文化、教育問題を扱うことにした。「21世紀の世界文明と日本」という観点からわが国の文化、教育状況をとらえ直して、提言を発するという試みだ。
 ただ、文化や教育問題については、これまで政府関係の諮問機関をはじめとして民間でも様々な組織が専門的な立場からすでに数多くの理念や提言を発表している。また現在も論争がさかんになされている。
 当フォーラムとしては、それらにもうひとつ加えて屋上屋を重ねるつもりはない。われわれは必ずしも文化問題や教育問題の専門家でもないので、込み入った議論に介入するつもりもない。  
 ただ、素人は素人として枝葉末節にとらわれないで、かえって本質的な問題に目を向けることができるだろうとも考えている。
 また、当フォーラムには広い視野で深く物事を見ることのできる有識者が多数おられるので、皆さまのお力添えを得て、歴史的、文明論的な大きな視点で問題を把握したいと考えている。
 そして、国内的には本質的な問題を提起し、対外的にはかつて岡倉天心が日本の文化について世界に語ったように、わが国の文化的なアイデンティティを世界に向かって明確にできたらと願っている。


占領・復興と異文化理解

政策委員 青木 保

 米英軍中心のイラク占領は、激しいゲリラ的攻撃にさらされ、復興計画ともども混迷の中にある。
 ブッシュ大統領は、繰り返し「軍事独裁国家から民主国家へと導いた」日本占領の成功を引いてイラクでの米主導による占領・復興の成功を主張しているが、これまでの経過を見ていると、日本の場合とのあまりの違いに気づかざるを得ない。その最たる事は「異文化」としてのイラクに対する理解の欠如である。
 「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙にも、「文化の違いが米兵のイラクにおける孤立をまねく」と題する記事が第一面に現れた。
 これは米兵に「異文化」としてのイラクを理解する必要を説くもので、イラク人は米兵に対してそれなりの礼節をもった対応をするのに米兵にはイラク人の気持ちを配慮するような態度が見られない。イラクは「恥の文化」の国であり、人間・社会関係では何よりも面子を重んずる。米兵の態度はこれを踏みにじるようなところがある。こうした面での配慮をもっと心がければイラクの人心を掴むこともできるのだが、といった内容の記事であったが、これは当然のこと。何を今ごろになって、といいたくなる。
 全般的に、占領直後に起きたバグダッドの博物館での文化財略奪事件なども含め、アメリカのイラク占領に取り組む姿勢には粗雑なところがみられる。
 占領・復興計画には当然相手の「生活様式から価値観」まで含む「文化」の理解は欠かせない。一端、武力で勝利した後は、この理解がどれだけ徹底するかどうかでその成否は決まるといっても言いすぎたことにはなるまい。
 「アメリカがこれまで国をあげて戦った敵の中で、もっとも気心の知れない敵」日本の「研究」を戦時中のワシントンは「日本占領」のために実に周到に行った。その中からベネディクトの『菊と刀』も生まれた。今回のイラク戦争にはそうした形跡は少しも見られない。
 日本の自衛隊派遣も「異文化」イラクの理解を疎かにしては何事も成就しまい。派遣するなら、この面で国際社会の範とされるような行動を示してもらいたいと思う。

 


「アジアの中の日本」
アジア各地で対話を実施

 当フォーラムの研究プロジェクト「アジアとの対話:アジアの中の日本とその役割」の第2年度「経済システムとしてのアジア」については、累次既報のとおりだが、9月3日(水)から10日(水)まで山澤逸平リーダー、木下俊彦、関志雄両メンバーは「日本からの発信」を携えて、バンコク、天津、ソウルのアジア各地を訪れた。
 バンコクでチュラロンコン大学が、ソウルで延世大学が、それぞれ「日本からの発信」を議論するための特別セミナーを開催してくれた他、天津で南開大学日本研究院がその主催する「東アジア地域経済協力に関する国際セミナー」の中の1セッションとして「日本からの発信」を取り上げてくれた。
 各地での議論においては「グローバル化に対応して、東アジアの経済システムは如何にあるべきか」が主として議論され、「英米基準とは異なるはず」「いや、英米基準に近いものとなるはず。それをためらうべきではない」といった議論が交わされた。
 この歴訪の成果を踏まえて、「日本からの発信」は改訂され、最終的に政策提言「アジアとの対話:経済システムとしてのアジア」としてとりまとめられる。

 


国際政経懇話会・緊急提言委員会同時開催さる

講話を行う北岡伸一東大教授

 日本国際フォーラム等3団体共催の国際政経懇話会が11月27日(木)開催された。今回は9月に外務省から「外交政策評価パネル」(座長北岡伸一東大教授)の報告書が発表されたことを受けて、北岡座長から本音や背景を聞こうということで開催された。
 また、テーマが日本国際フォーラム緊急提言委員会(田久保忠衛委員長)の関心事そのものでもあることから、当日の会合は緊急提言委員会との合同会議として開催された。
 北岡教授自身が当フォーラム緊急提言委員の一人であることもあって、この日の講話は歯切れがよく「これまでの中国政策は受け身すぎた」「『国連中心外交』のような美辞麗句ではダメ」「非核3原則は非核2.5原則に改めよ」等の指摘がポンポンとなされた。
 伊藤憲一理事長から「まさに私たちの言いたいことを言ってくれた報告書で、今後のバイブルにしたい」、田久保忠衛緊急提言委員長から「私も同感」などのコメントがつぎつぎと出され、白熱した意見交換がつづいた。当日の出席者は、他に、大河原良雄、金森久雄、歌田勝弘、グレン・フクシマ、神谷健一、明石康など20名であった。

 


■ 新規入会会員の紹介

(9月〜11月分、入会順)

〔個人正会員〕 鍛冶 康博
吉冨  勝
中山 文麿
〔個人準会員〕 4名(氏名省略) 


第23提言「東アジア経済共同体」
ソウルで韓国、中国の関心喚起

 10月30日と11月8日に、ソウルで「北東アジア共同体」に関する韓国、中国、日本関係者の集まる国際シンポジウムが相次いで開催され、当フォーラムから前者には吉田春樹副政策委員長が、後者には伊藤憲一理事長兼政策委員長がそれぞれ参加した。
 前者は韓国の世宗(セジョン)研究所が、後者は韓国の国際平和大学院(IGUP)が主催したが、日本と中国だけから参加者を招き、「北東アジア共同体」建設の可能性を探るというユニークな目的をもった国際シンポジウムであった。
 「北東アジア共同体」といっても、その理念や展望の大雑把なコンセプトはともかく、その具体的な内容やタイムテーブルを示した提言となると、当フォーラム政策委員会が本年6月に発表した第23政策提言「東アジア経済共同体構想と日本の役割」以外には、現時点で体系的提言はなく、このため吉田と伊藤は事前にそれぞれの会議主催者から提言内容を紹介する基調報告を行なうように求められて出席した。
 世宗研究所主催の会議では吉田が「モンスーン地帯という共通項で東アジアを捉えているが、その中でも北東アジアは儒教・漢字文化という共通項を持つ」と指摘し、国際平和大学院主催の会議では伊藤が「東南アジアも含めた東アジア全体で、2025年までに地域の共通単一通貨を持つことを目指す必要がある」と主張した。
 当フォーラムの「東アジア経済共同体」構想はさる8月のクアラルンプールにおける「東アジア議会」、9月の北京における「シンクタンク・ネットワーク」会議につづいて、着実に地域の中で認知されつつあるようだ。

 
世宗研究所主催の会議に参加する
吉田副政策委員長(壇上右から2人目)
 
国際平和大学院主催の会議に
参加する伊藤理事長(左から3人目)

 


フォーラム活動日誌(9−11月)

9月3‐10日 「アジアの中の日本」バンコク、天津、ソウル歴訪(山澤逸平リーダー他2名)
9月10日 中国国際友好連絡会歓迎昼食会(蔡文中中国国際友好連絡会平和と発展研究センター主任、伊藤憲一理事長他7名)
9月15‐20日 親善訪中視察団訪中(吉田春樹団長他4名)
9月25日 第156回国際政経懇話会(茂田宏前国際テロ対策担当大使他)
9月29‐30日 北京にてNEAT設立会合(伊藤理事長他5名)
9月29日 「ロシア・CISの不安定要因」第5回研究会(瀧澤一郎主査他)
9月29日 「日米安全保障共同体」第4回研究会(添谷芳秀リーダー他)
10月3日 第25政策提言第1回タスクフォース会合(袴田茂樹主査他)
10月6日 第24政策提言第3回政策委員会(伊藤憲一主査他31名)
10月6日 第24政策提言第4回タスクフォース会合(伊藤主査他3名)
10月6日 「アジアの中の日本」第4回コア研究会(山澤リーダー他3名)
10月20日 「ロシア・CISの不安定要因」第6回研究会(瀧澤主査他7名)
10月30日 ソウル世宗研究所主催国際シンポジウム(吉田春樹副政策委員長)
11月5日 第157回国際政経懇話会(守屋武昌防衛庁防衛事務次官他)
11月7-8日 ソウル国際平和大学院主催国際シンポジウム(伊藤理事長)
11月16日 チェチェン映画鑑賞会「新帝国の創生」(伊藤理事長他29名)
11月17日 「ロシア・CISの不安定要因」第7回研究会(瀧澤主査他)
11月20日 第25政策提言第1回政策委員会(袴田主査他26名)
11月20日 第25政策提言第2回タスクフォース会合(袴田主査他2名)
11月27日  第158回国際政経懇話会/緊急提言委員会(北岡伸一東京大学教授他22名)
   
[注] 第24提言「新しい世界秩序と日米同盟の将来」(伊藤憲一主査)
  第25提言「日本の文化と教育:その課題と対策」(袴田茂樹主査)




  事務局便り

 このたび当フォーラムは、教育的側面にも配慮して、新しくインターンシップ制度を導入しました。
 最先端の国際政治経済問題の研究や提言の現場に身を置き、その一端に触れることは、研究機関や国際機関だけでなく、一般企業への就職を希望する学生の皆さんにとっても魅力的なようで、希望者が殺到しています。



謝 辞

 当フォーラムの諸活動の主要な財政的基盤は、その会員、とくにその法人正会員の納入する会費にあります。現時点での当フォーラム法人正会員は、下記名簿記載の42社54口です。ここに特記して謝意を表します。

[5口] 読売新聞社
[4口] 全日本空輸
[2口] 清水建設 新日本製鐵 東京電力
トヨタ自動車 東京三菱銀行  
[1口] 時事通信社 セイコーエプソン 伊藤組土建
野村證券 日立製作所 ジャパンタイムズ
大日本印刷 伊藤忠商事 電通
日本生命保険 三菱マテリアル 三菱地所
アサヒビール キッコーマン 東京ガス
三井物産 日本アイ・ビー・エム 関西電力
日本たばこ産業 中部電力 ニフコ
電源開発 三菱商事 日本電信電話
東北電力 味の素 竹中工務店
中国電力 山九 日商岩井
アトックス 塚本總業 三基商事
日本ケイデンス・デザイン・システムズ社 ユニ・チャーム
(入会日順)

 


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